2018年03月21日

(特に新人声優さんやノベルゲーム台本になれてない声優さん向けの)シナリオライター目線での『台本のこういう点を意識してもらえると台詞の解釈違い減るかもガイド』

(特に新人声優さんやノベルゲーム台本になれてない声優さん向けの)
 シナリオライター目線での
『台本のこういう点を意識してもらえると台詞の解釈違い減るかもガイド』」

v100 2018/03/21 進行豹


■はじめに■

はじめまして、進行豹と申す者です。
『まいてつ』『ものべの』が代表作の、ゲームシナリオライターです。

幸いなことに、素晴らしい演者さん、スタジオさん(レコーディングディレクター)のご収録に、数多く立ち会わさせていただいております。

そうした機会の中で、いろいろな学び、気づきを得させていただいたことから、

『この辺の知識を整頓すれば、これから声優の仕事を目指す、あるはノベルゲーム台本になれていない声優さんや声優さんのたまごさんの、なにかの助けになるのではないか』
と思い至るようになりました。


■このテキストの使い方■

まずは、『台本の読み方説明要台本』をご確認ください。

http://hexaquarker.com/setumei_daihon.pdf

あなたには、

・タリア(13w)をお願いします

・物語の冒頭部とのことです。キャラ設定などは来てないです

――というお話とともに上記台本がわたされたものとします。

その前提のうえで、普段されているのとおなじように、
台本チェック、収録準備をすすめてみてください。

そうして

t_001
【タリア】
「はぁっ――はぁっ――フィニ、ア――いい、からっ」

を、できれば録音して、読んでみてください。




■注記■

以下、
「演劇論などは勉強したことがない一シナリオライターが、
『自分の台本は、こう読んでいただけたら誤読や解釈違いが少なくなるかもしれない』
という観点のみから書きます、上記台本の読み方ガイドとなります。

もちろんそれが正解ではありませんし、
現場やクライアントさんによって求めるものも違うものかと想像します。

ので、現場によっては、以下に書くことは百害あって一利なし――となってしまうかもしれません。




■読み始め〜最初にチェクしてほしいこと■

台本を、まずは最初から最後までざらっと読み通していただけますと嬉しいです。

そうしたら、各項目のチェックを進めていただくこととなるかと思います。

その際、一番最初に「自分の台詞」をチェックされるケースがおおいのではないかと思います。

けれどシナリオライター(というかわたくし)としては、その前に、

『場所、時間、シチュエーション、キャラクター同士の距離感』

『シーン内での、その移り変わり』を、チェックしてほしいかと思います。



説明用台本を、見直してみてください。

冒頭にはこうあります。

///
;森の中。霧雨。夕暮れ前。
;少女視点
;SE 森の中を走る足音
///

つまり、ここでは少女が登場します。
少女は、なんらかの理由ではしっています。

そのあとの一連の台詞のやりとりで、

少女=タリア
妹=フィニア
兵隊さん

の3キャラがでてくることがわかります。


この3キャラの位置関係はまだわかりません。

位置関係だけを読み解くことを意識して読み進めると――



///
;SE 銃声。直近。ピストル

(パンっ!パンっ!パンッ!)

【兵隊さん】
「悪ぃな、チビちゃん。おれの抱っこはここまでだ」

【フィニア】
「おにいちゃ」

【兵隊さん】
「早くいけっ!!お前、姉さんなんだろうっ!!」

t_005
【タリア】
「――っ!はいっ!!!」

しゃがみこむ。
いつもみたいに背中を向ければ、すぐにしがみついてくる

///

ここで位置関係がようやっと明らかになります。

☆シーン冒頭では

『兵隊さんがフィニアをおんぶしていた』
=フィニアと兵隊さんの距離は近い

『タリアは、そのふたりほどには近くなかった』


☆兵隊さんがフィニアをおんぶからおろしてからは

『フィニアを、タリアがおんぶすることになった』
=フィニアとタリアの距離が近づいた


ことがわかります。

その直後

///

【兵隊さん】
「ここは任せろ!いけっ!!」
4
t_006
【タリア】
「ありがとうございます!兵隊さん――町で!町で待ってますっ!」
;SE 駆け出す足音

///

となり、

『兵隊さんと、タリア+フィニアの距離はどんどん離れていく』

ことがわかります。

以下も同様に、キャラクター同士の距離感をチェックしてみてください。

この、「キャラクタ−同士の距離感と、その変化のこと」を、ここでは
『環境』と呼称します。



■ 次にチェックしてほしいこと ■


次にチェックしてほしいのは、
「キャラクターの行動と、それをとりまく描写」です。
冒頭からもう一度みなおし、タリアの行動をおってみましょう。


///

;SE 森の中を走る足音
t_000
【少女/タリア】
「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ」

【妹/フィニア】
「おねぇちゃ――ひつじしゃっ――」

【兵隊さん】
「羊のことは諦めろっ!!
今は走れっ!走るんだっ!!」


――苦しい。苦しい。息が苦しい。

けど、ほっとする。
羊、諦めるしかないんだと、兵隊さんが教えてくれた。
わたしに、フィニアに。

///


ここからは

・一同がなにかから逃げていること

・フィニアは羊を気にして、おそらく戻りたがってること

・兵隊はそれを禁じていること(=戻ればおそらく、極めて危険なこと)

が読み取れます。


そこにつづく

///

【兵隊さん】
「おれも元々牧童だった。だからわかる!けどっ―― 死んじまったら、明日の飯の心配さえもできなくなる!」




走れない、けど――フィニアを――安心―― 安心っ!させて、あげなく、ちゃっ――


///

から、

「タニア・フィニアは迷い羊を探していて、兵隊さんにみつかったなり、保護されたなりしたらしいこと」

「生活の糧である羊をあきらめざるを得ないほど、危険は切迫して重要なものであること」

が読み取れます。

そうして、ライフルの銃声が響き、そこが戦場なり紛争地帯なり、武装強盗なりがでてくる、
極めて危険な地域であることがわかります。

後半の一連の描写からは、兵隊さんが姉妹を助けるために踏みとどまって応戦したこと、
兵隊さんの武装はピストルしかなく、ゆえに彼は戦闘態勢にはなかったこと、なども読み取れるかと思います。


こうした描写をおっていけば、「キャラクタ−の台詞」は、環境と行動との結果として生まれてくるもの――
必然的に導きだされるものであることがおわかりいただけるかと思います。


「行動+環境=台詞」 という数式がなりたつとして。

しかし、

『逃亡 + 敵対者からの銃撃 = ここは俺に任せろ』

になるケースも

『逃亡 + 敵対者からの銃撃 = 助けてくれ! 見逃してくれ!!』

になるケースもでてきます。

その両者をへだてるものが、『こころの動き』であり、
この『こころの動き』を、台詞の奥からさらに深く読み取るためには、
もうひとつの手がかりを必要とします。



■ 第三のてがかり =前の台詞と後の台詞 ■

さて、ここで冒頭に読んでもらった
(そして録音してもらったかもしれない)


t_001
【タリア】
「はぁっ――はぁっ――フィニ、ア――いい、からっ」

にもどりましょう。


『羊を探していて、けれどあきらめた』
『兵隊さんがあきらめさせてくれた。タリアはそれに感謝している』
『なにものかから逃げ続け、息を切らしている』

という環境下。


タリアに、この台詞をいわせた『行動』は、
『そこにつながる、フィニアの台詞です。

まずはそれをチェックしてみましょう。

///

【フィニア】
「タリアおねえちゃん」


///

これだけではなにやらさっぱりです。
ので、その前にもどり、

『フィニアが、どんな理由で、どんなトーンの「タリアおねえちゃん」をいったのか』
を考えてみましょう。


///

【兵隊さん】
「おれも元々牧童だった。だからわかる!けどっ―― 死んじまったら、明日の飯の心配さえもできなくなる!」

///


フィニアは羊を探していました。
羊をいまだ、危険な状態にもかかわらず、あきらめきれていません。

にもかかわらず、兵隊さんにおんぶされ逃げているなら
『兵隊さんは、無理矢理にフィニアをおんぶした→しつづけている』という可能性もあります。

その兵隊さんの、

【兵隊さん】
「おれも元々牧童だった。だからわかる!けどっ―― 死んじまったら、明日の飯の心配さえもできなくなる!」

は、どのような声で発せられるのでしょうか。

兵隊さんの言葉を引き出したのは、その前のフィニアの

///
【フィニア】
「けどぉ」
///

という未練たっぷりな言葉です。
グズっているかもしれません。

兵隊は危機的状況をこの場の誰よりもよく理解していて、焦っています。

それでも。やはり。
背負ってクズっている小さな子にむかって、どなりつけるようなことがしないのではないでしょうか?

なぜって彼は、姉妹のために踏みとどまって絶望的な応戦をするような男なのですから。


ならば、

///

【兵隊さん】
「おれも元々牧童だった。だからわかる!けどっ―― 死んじまったら、明日の飯の心配さえもできなくなる!」

///


の「!」は、大声ではなく、きっと、痛切な――けれども声は背負っている小さな子に届けばいいという大きさの、
『わかってくれ』という願いのこもった言葉です。

それをうけてのフィニアは、きっと理解をしきれません。
なにか大事なことをいわれているのはなんとなくわかって、
だけれど意味はわからなくって、
大事な(友達であるかもしれない)羊とはぐんぐん離れて――

そうしてでてくる、
『おねえちゃん、たすけて』
の、きっと

///
【フィニア】
「タリアおねえちゃん」
///

なのだと思われます。

それはぽつっと、こころぼそげにつぶやかれるかもしれませんし、
はっきりと、すがる調子の泣きつきなのかもしれません。

けど、そのどちらであるにせよ、姉たるタリアは

///

【タリア】
「はぁっ――はぁっ――フィニ、ア――いい、からっ」

///



「いいから」

を。

『(もう心配しなくて)いいから(大丈夫だから) 』

のトーンで話すのではないかと想像できます。

そしてそのトーンであれば、

タリアの次の台詞


///

t_002
【タリア】
「羊、の――こと――ならっ――」

///


にも、自然とつながっていくはずです。






■ ここまでのまとめ ■

さて、ここまで読んでいただいた上で、もう一度

///

t_001
【タリア】
「はぁっ――はぁっ――フィニ、ア――いい、からっ」

///

を声に出していただいたとして。

その「いいから」は、
一番最初に読んでもらった「いいから」は、
きっと違っているのではないか思います。


その違いを産んだものは、


1:<キャラクター同士の距離感と、その変化との把握>

2:<キャラクターの行動と、それをとりまく描写の確認>

3:<あなたのキャラクターの台詞の、
  『前の台詞』と『後の台詞』(および、それらにつながる台詞と、つながっていく台詞)の把握>


です。


……仮に、あなたのお芝居に、プレイヤーさんが「ん???」となってしまうことがあれば、
その原因は、『あなたのお芝居が、プレイヤーさんの想定するものからズレてしまったから』となります。


そうして、完成形のゲームをプレイするプレイヤーさんは、
「絵や、BGMや、他の演者さんの台詞や、効果音や、スクリプトによる演出」といった圧倒的なサポートをうけることにより、
『ものすごく高い読解力で、ゲームを楽しみ、あなたの台詞に期待する』のです。


しかし、そうした『絵や、BGMや、他の演者さんの台詞や、効果音や、スクリプトによる演出』は全て、
あなたが今手にしている台本――シナリオをベースにつくりだされたものでもあります。


ですのでシナリオには、原則的には、あなたの演技に必要な全てが書かれているはずです。


それを効率よくよみとるための助けになるのが、


1:<キャラクター同士の距離感と、その変化との把握>

2:<キャラクターの行動と、それをとりまく描写の確認>

3:<あなたのキャラクターの台詞の、
  『前の台詞』と『後の台詞』(および、それらにつながる台詞と、つながっていく台詞)の把握>


ではないかと、わたくしは想像します。

十分に準備する時間がないなら、最低限『3』だけはチェックしてほしいです。

あなたの台詞と、あなたの台詞の前後の台詞。
それがきちんとつながるのであれば、ものがたりが壊れることはないのではないかと思います。


そのうえで少し余裕があるなら「1」にも注目してみてください。

距離感に対して適切な言葉の強さをえらべるのなら、あなたのキャラクターは空気を読める、大人らしさを示し、
相手は状況にかかわらず自分の強さで言葉を発するのなら、あなたのキャタクターは空気をよまない、子供らしさを示します。


そして「2」。行動とそれをとりまく描写の意味を読み取れたなら、あなたはあなたのキャラクターの、
『こころの動き』を把握してくれるであろうと思えます。

そこまで読み取っていただけるなら、本当に、シナリオライター冥利につきます。

ありがとうと言わせていただく他にないです。



■ 読み取れないよ!!! という場合 ■

シナリオライターが立ち会っているなら、その人に聞くのが一番の早道です。
収録の前でも、収録中でも「ここってどういう意味ですか?」と質問したなら、
きっと彼なり彼女なりは大喜びして、
「そこまではきいてないよー」というとこまでを、微に入り細にいり語ってくれます。

シナリオライターが不在の場合は、
レコーディングディレクターさんや、メーカーの立会の人間にきいてください。
レコーディングディウクターさんは無数の台本たちに触れてきた経験と読解力が、
メーカーの立会の人間には、その作品に対するあなたよりも深い理解が、期待できます。
きっと、あなたの解釈を大きく助けてくれるはずです。




■ 現場では、全員がきっとあなたの味方 ■

シナリオライターが立ち会っているとき、彼なり彼女なりは100%あなたの味方の筈です。
彼は、自分のキャラクターに声が、魂がふきこまれることをとても楽しみにしています。

自分のキャラクターが、あなたの声によって命をうけとり、
自分が書いたシナリオ以上のものがたりを紡いでくれる――
これほど幸せなことがなかなかございませんので、
その幸せを甘受するため、できる努力は惜しみません。


レコーディングディレクターさんや、メーカーの立会の方も、必ずあなたの味方です。
「あのスタジオで収録するとこの出来」
「あのメーカーの作品はこんなもの」
とプレイヤーさんに思われてしまっては、たまりません。

ですので、あなたの解釈を助け、あなたのキャラクターをより魅力的にするために、
やはり、シナリオライター同様の――そしておそらくシナリオライターより広い視野からの――
的確なアドバイスをくれる筈です。


ダメ出しも、
「そこでのヒロインは、悲しむじゃなくて、あきれているかと思います」
的なリクエストも、すべてそうした切実な理由から発せられるものかと思います。

「あなたを攻めているわけではなく、あなたを否定しているわけでもなく、
食い違ってる部分を埋めて、あなたと一緒に、よりよいものを作りたがってるから」
だということを、どうか理解していただけましたら嬉しいです。




■ おわりに ■

絵も、音楽も、効果音も、スクリプト演出もなにもなく。

そこには物語だけがあります。

しかもその物語は、何度も何度も書いて直して直して書いて――
完全に記憶してしまい、いまとなっては、面白いんだか面白くないんだかを
自己評価することさえできなくなった、そんな物語です。


けれど、そこに声が加わり。

キャラクターに命が吹き込まれ。

そうして、渇ききっていた物語がみずみずしさを取り戻し――

「ああ、わたくしはこんな素敵なものがたりを、言葉をつむげていたんだ」

と、感動させえいただいたことが、わたくしには幾度もあります。

声でのお芝居には、その力がある。
それほど素敵なものであると、わたくしは知っています。

その恩返しを、残念ながらわたくしにはできません。

わたくしにその素晴らしさを教えてくださった演者さんたちは、
わたくしがここに書いたようなことをとっくに理解し、
通り過ぎ、だからこそそうしらお芝居をくださっているからです。

ので、わたくしは、これからそうした演技をきっとしていくあなたに、
この文章をお届けできればと願います。


この文章が、あなたの台本解釈を少しでもたすけ、
あるいは反面教師となり、よりよいお芝居につながることを、願います。



最後まで読んでくださって、本当にありがとうございました。



2018/03/21 進行豹 拝
















posted by 進行豹 at 23:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 製作日誌

2018年02月24日

ネコのはなし

今日は一日執筆していて他に特段なにもなかったので、ネコの話でも。

うちのネコはひゃっけん先生といいまして、ノミだらけでガリガリでみーみー鳴いてたのを拾ってきたネコです。

(……これはたすからんかもしれんなぁ)

と思いつつも、わたくしの百万倍の動物育成の経験値を持つ友人に預けたところ

「これは助からんかもしれんなぁ。でも、預かってみるよ」

といって貰えたので、そのまま預けました。

するとなんと一晩で、ご飯食べれるとこまで回復させてくれたので、そのまま再び引き取って――という経緯で、いまもうちにいます。



ひゃっけん先生は、ご自分で努力して底に穴をあけた籐製の筒(もとゴミ箱)が大好きです。

その上、

(この中にはいっていると、遊んでもらえる)

という自分ルールをお持ちです。


P9060016.JPG


ので、かなり忙しいときでも、ひゃっけん先生が筒の中で待機してるときには、ちょこっとでも遊んであげるようにしています。


けど最近、ひゃっけん先生が、わたくしが煮詰まってるときに、(少し休め)と、遊んでくれているようにも感じます。


でもってひゃっけん先生には、噛み癖もあります。

これについて、前述の動物育成の達人の友人に聞いたところ「歯が生えかけで痒いから噛むのであって、生え揃えば自然とおさまるよ」とのアドバイスを貰いました。


……ひゃっけん先生、今年で確か四歳なのですが、まだ歯、生えそろってないようです!


posted by 進行豹 at 22:27| Comment(0) | TrackBack(0) | その他・メモ

2018年02月15日

プレイヤーのみなさまへ、大切ではないご報告

「大雪があったし、配達おくれがあるのでは?」と今まで待っていたのですが、どうやらそれもないようですので、2018年2月期のバレンタインについてのご報告を、時系列で取り急ぎまとめます。

■ 2018/1/27(土) ■

まいてつこころ旅withれいな。
確かシーガル長町店様でのサイン会のときに、
女性プレイヤーさんからチョコをいただく。
プラレール立体チョコの「N700系」と「カシオペア」(EF510)

頂戴した瞬間、某杏子さんが、
「よかったじゃないですか、今年のバレンタインのピークきましたね」と笑顔で。

(その直後、わたくしにチョコをくださった方が、某杏子さんにもチョコをお渡しになられて、わたくし『わかっていたけどやっぱり義理か!』と、膝から崩れ落ちる)


■ 2018/1/29 (月)

帰宅。疲労状態。
『今年は婚活してるし、きっと他にもチョコもらえるに違いない。
というか、そうあるようにがんばろう!』
と、カシオペアを運用離脱させ、捕食解体。


■ 2018/02/12 (月)

執筆がんばる。脳疲労状態。
『今年は婚活してるし、きっと他にもチョコもらえるに違いない』と、
N700系を運用離脱させ、捕食解体。

バレンタインにチョコもらえるあてがないような気がして、なんとなく箱は捨てずにとっておく

IMG_20180215_133112.jpg


■ 2018/02/13 (火)

終日執筆。
脳が疲労したので甘いもの食べたくなるが、
「明日チョコもらえたらなんかもったいないし」と、我慢。


■ 2018/02/14 (水)

終日執筆。
宅配便が届く。

あみあみ様からで、ぬいぐるみ用の小物。
その他になんらの邪魔は発生せず、執筆に大変よろしく集中でき、書き上がったものは一発オーケーいただく。


■ 2018/02/15(木)

執筆集中。
書いているときふっと、こころ旅れいなの会場での某杏子さんの
「よかったじゃないですか、今年のバレンタインのピークきましたね」が、
恐るべき精度を誇る予言であったなかと気付き、記録しておく必要を感じ、本記録を残す。


――以上です。
結論としては「イベントのお差し入れではあるものの『バレンタインのチョコです』ということで、チョコ2個をいただくことができた」バレンタインとなりました。

お差し入れくださった方。
あなたがいらっしゃらなければ、完全なるゼロチョコのバレンタインとなるところでした。

救われました。

まことにありがとうございました!!



■結論

ネット婚活してればモテるようになって、チョコもらえる――みたいな甘い話はなかったです。

ので、今後はネット婚活と並行し、今度どこかの婚活パーティーいくとか、
あるいはいっそコンテンツ業界の方限定の婚活パーティーを主催するかなんかした方がよいのかも、と思っております。
posted by 進行豹 at 14:05| Comment(2) | TrackBack(0) | 製作日誌

2017年06月09日

『創作における取材』についての、ご質問へのご回答

http://hexaquarker.sblo.jp/article/177688588.html
の記事(「ぬいハチ物語の書き方5 〜エピソードを用意しよう〜」)
のコメント欄に、以下のコメントをいただきました。


//////////


初めまして。敬一郎です。まいてつ楽しくプレイしています。
取材について質問です。
ぬいハチ物語の日常モノの取材構成はわかりました。
成長モノ、Howtoモノの取材ってどのようなものなのでしょうか。素人考えでHowToモノは現実世界に踏み込む必要があるように感じます。例:ぬいハチが模型作りをする物語を書く際は模型の取材をしないと書けない気がします。
踏み込んで
・ゲームにおける取材って何ですか。
・ニュースや新聞の取材と何が違うのでしょうか。
・取材と想像力のバランスの最適解は。
・取材でしてはいけないこと、陥りやすいミスは。
ゲームの同人サークル(名前は伏せます)は進行豹さんの言う取材を軽視し想像力で書いている部分を多く感じます。
また、取材術の参考資料やシナリオライターの取材術の一部を知りたいです。
お忙しいと思いますが、いい物語へのアドバイス、お願いいたします。


//////////


――ご存知の方はご存知のことと思いますが、わたくしの出自はエロマンガ原作です。
(その前にプレイバイメイルのマスターなどもやってましたが、そこからはじめると『PBMis何?』からで長くなってしまうので割愛します)

エロマンガ原作一本で食っていくのは無理な気がしたわたくしは、平行して「児童文学作家」をまず目指しました。

児童文学のジャンルでは、幸いなことに比較的するすると新人賞的なものをいただいくことが出来ました。
ともないまして、受賞パーティーにお招きいただいたのですが……
わたくし、そのパーティーのあまりのリア充度
(学校の元先生とかがとても多くて、パーティーの華として有名歌手の童謡コンサートがある的な)に恐れおののき、
「この世界では生きていけない。ぜったい無理」
と考え、パーティーを途中で抜け出し、児童文学の世界に足を踏み入れる前に撤退いたしました。


そちらを諦めたわたくしは
「ノンフィクションならいけるのでは」と根拠なく考え、あるノンフィクション作家の方に、一年程度の短い期間でしたが、ご指導をいただきました。

結果
「進行豹くんは自然と話を盛っちゃうし、
 その盛り方がおもしろいのでフィクションにいった方がいい」
とのアドバイス――まぁ事実上の破門をいただくにいたりました。

で、「フィククションだったらラノベとかかなぁ?」と考え、
ラノベ新人賞の応募作など書いているうちに、エロマンガ一緒にやってた狩野蒼穹さんが「同人ゲーム作りたい」と突如言い出し。

言い出したら聞かないので、仕方なくシナリオ・スクリプトで同人ゲームつくってたら、今のLose代表のtOさんと、curaさんとのご知己を得。

そこからなんだかんだでエロゲー企画を立てるようになり、ずるずるライティングもするようになり、今にいたった――のでございます。


つまりわたくし
「取材に関しては、ノンフィクションの先生にちゃんと教えていただいたことがあるので、少しは人様にご説明できる!」のでございます。


のでので、以下、喜んでご質問にお答えさせていただいたいと存じます。


【Q:成長モノ、Howtoモノの取材ってどのようなものなのでしょうか】

→成長モノは「どの分野で主人公を成長するか」ということを決めねばなりません。
(野球で、とか、精密機器業界で、とか、いろいろなところを渡り歩いて、とか)

ので『舞台となる分野』での取材は、必須となるかと存じます。


How toもの、とは『特定の分野に入門してこようとする人のために書くもの』です。
ですのでこちらは「取材」というより、
「執筆者が、その分野にある程度以上精通していること」
有意な作品を書くための前提条件」になってくるかと存じます。
(その場合も「より精通している先達」への取材等は必要にになってくるかと思いますが、あまりに特殊なケースですので、ここでは詳細は割愛させていただきます)

まとめますと、ご賢察いただいておりますとおり、
『成長ものにせよ、Howtoものにせよ、舞台とする分野への取材は必須』であるかと、すくなくともわたくしは考えます。
それがどのようなものか、に対するお答えは、
『書こうとしている舞台、題材を知るための素材を集めていくこと』になるかと存じます。
この詳細については、次のご質問への解答内で、詳述します。


【Q:ゲームにおける取材って何ですか。 
  ニュースや新聞の取材と何が違うのでしょうか】
  
このふたつのご質問には、まとめて解答したほうが楽そうに思いますので、まとめます。

まず、ニュースや新聞(報道)における取材は、
『報道すべきことがらに関する事実を集めること』
となります。

厳密な意味での報道は、中立であるべきで、そこに主観による歪曲が加えられてはいけません。

かたや、ゲーム、あるいはその他のジャンルにおける――
まるめますと「創作のための取材」とは、
『想像力をふくらませるためのタネや素材を仕入れる』ことです。


例をあげます。

「東京都檜原都民の森に自生する狸の数が爆発的に増加」
という事象があるとします。

報道における取材は、

「この事実」
「何故狸が増えたのか、ということに関する専門家の見解」
「この自称の発生によって懸念される諸問題や、発生するメリットに関しての専門家の見解」
「周辺住民の声」

などを集めるものかと存じます。
そうして集められた事実群は、原則そのままTVニュースや新聞に流されて「報道された事実」となります。


かたや、創作のための取材においては――
こちらは一般化は難しく思いますので、わたくしを例にとりますと、

「その事実から、書きたい物語or書けそうな物語へとつなげていくためのブリッジ」

「たぬきにまつわるおもしろエピソード」を収集するものかと存じます。

舞台をそのまま使うのであれば、
その人たちの話すことば、暮らし、その土地の地勢――なども調べます。

わたくしはエロゲシナリオライターですので、
この、『狸の増加』を、『エロゲの題材』に、
なんとかできないものかと考えるでしょう。

その場合には、「狸が増えてるという事実に対しての専門家の見解」などはガン無視して、
「狸にまつわる民話や艶笑譚」を収集し、そちらで都合良さそうなものがあれば、
そこをベースに物語をふくらませていく……みたいな感じで創作へつなげていくかと存じます。

狸が人間に化けた女の子をヒロインにする――
のであれば「狸の風習」についても、詳しく調べていくことも、よい取材です。

(今は調べてませんので捏造ですが)
『狸は好物を埋めて隠して忘れてしまう習性がある』
とかを発見できれば、そこからひとつ、
非常にかわいらしいヒロインエピソードを作れますので。

まとめます。

「報道のための取材と創作のための取材で何が違うか」というご質問への一番単純なおこたえは、
「取材で収集した事実の扱い方」となります。

報道ではそれを「そのまま伝え」て、
創作ではそれを「歪曲・拡大して物語をつくるためのタネや素材にする」のです。


【Q:取材と想像力のバランスの最適解は。】

ノンフィクションや報道なら「取材100。想像力0」で確定です。

取材した事実を、「どのような切り口で切り取るか」は工夫すべきでしょうが、そこに「想像」が加わってはいけません。
想像を1でも加えた瞬間、それは報道でもノンフィクションでもなく、「創作」であり「物語」になってしまいます。


逆に、創作分野であれば――
最適解は『人ぞれぞれ』となります、

「100:0」で、「物語」を成立させられるかはわかりませんが
(それがどれほどの物語性を持っていても、事実100なら『ノンフィクション』かとわたくしは思いますので)
「1」でも想像が混じるのでしたら、それは物語です。

事実多めの物語の方が面白くできる方もいれば、
純粋な想像力の羽ばたきだけで面白い物語をつむがれる方もいらっしゃいます。

そこのバランスは、創作者それぞれが、取材と執筆とを通じ、自分で見定めていくしか無いものかと存じます。


【Q:取材でしてはいけないこと、陥りやすいミスは】

極めて大きなものはふたつかなぁ、と思います。

1:取材対象者・対象物を傷つける
 (物心その他、いかなる意味においても)

2:対人取材の場合、
 「自分の考えをかたり、相手の答えを誘導する」

です。

どちらも、やってしまえば、その時点で、
「取材」ではなく、広い意味での「捏造」になってしまうかと思います。

取材とは、相手を邪魔せず観察し、観測し、その声を聞くことだとわたくしは思います。
(世の中には「怒らせて本音を引き出す」的な報道系取材の手法もあると聞きますが、「怒った状態の自分」が「素の自分」ではないように、そうして引き出した「本音」が果たして「本音」であるかを、わたくしは疑問に感じます)

『得たい答えをえるために相手を歪める』。

これは、最大の禁忌であると同時に、
取材者がおかしやすいミスであるかとも存じます。



【取材術の参考資料やシナリオライターの取材術の一部を知りたい】

本としては、
講談社現代新書、野村進 「調べる技術・書く技術」
をご推薦申し上げます。

P60〜P61の「取材依頼の作法」は、
読んでおいて絶対に損はないかと存じますので。

で、シナリオライターの取材術は、ひとそれぞれです。

わたくしの先生(シナリオライターではなく、ノンフィクション作家ですが)の場合は
「10年前からの仲間のように、初対面の集団にも溶け込んでしまう」のが、魔法の様に得意な方でした。

それが、先生の取材術であるのかと想像しますが、わたくしにはその真似は全くできません。


わたくしの場合は、
「お話をお伺いする相手の方を尊敬する」ことが自然とできる点が、
取材術っぽいところなのかなぁ、と自分では思います。

とにかくわたくしは「おおお!」とテンションあがりやすいので、自分の知らないジャンルの話、自分にできない技術の披露などに接すると、都度都度で単純に感動します。
それが多分、相手の方がよりたくさんをお話してくださるのに、良い方向に働いてくれてるようには感じます。

でも、それらは多分、テクニックではなく「性質」にあたるものです。

ので、ご自分に適した「取材術」を身に着けたいのであれば、まずご自分の「適正・特質」を知るところからはじめる。
(「僕のいいとこってどこだろう」と、親しいお友だちに聞くのは、対人取材のよい練習になるかとも存じます)
しかるのちに、その特質を活かす方法を考えてみて、試して、修正する――

を、繰り返してみるのがいいのではないかと存じます。


///

思いつくまま書いたので、まとまりわるく矛盾等もあるかもしれませんが、これがわたくしの、いただいたご質問への、そのくらいに素直な解答です。

少しでも、敬一郎さんの今後のご創作・ご取材のための糧となったり、反面教師にしていただけたりしたら、嬉しいです!

(おしまい)
posted by 進行豹 at 21:07| Comment(2) | TrackBack(0) | 製作日誌

2016年11月27日

「ぬいハチ物語」の書き方 〜その13(最終回):ブラッシュアップで仕上げよう!〜

さて。
前回

http://hexaquarker.sblo.jp/article/177816343.html

までで、
わたくしの、最初の「ぬいハチ物語」である
「ぬいハチ物語」(仮)は、頭からしっぽまで書けました!

ですが
「頭からしっぽまで書く」ことと
「作品を完成させる」こととの間には、
大きな大きな谷間があります。

なぜか?

それは簡単、
ただ単に書いただけものもは、まだ『仕上がってない』からです。

仮に、自分ひとりで楽しむためだけに書くのであっても、
せっかく書いた物語、きちんと仕上げないともったいないです。

仕上げること。
そして、仕上げるために自分の作品を見直すことは、
今とりかかっている物語だけではなく、次の物語をも、必ずやより輝かせてくれます。

ので、簡単にでも
「仕上げる」という意識を持って、
一度、自分の書いた作品を、きっちり読み直してみましょーです!!


では、どのようにして仕上げるか。

これは……

まぁ、これだけでウルトラ濃密なご本が一冊かける
(「ハリウッド・リライティング・バイブル」 リンダ・シガー著 愛育社)
ほどの中身になってしまうので、
詳細にご説明申し上げるのは、とても無理です。


ので、今のとこは


******************************

0: 書き終わってから、
  ブラッシュアップを始める(仕上げに取り掛かる)
  まで、最低でも一回の熟睡を間に挟む

1: 誤字・脱字に気をつける


2: 自分で読んでて「ん?」となってしまう箇所があったら、直す

(この辺については、
 「日本語の作文技術」 本多勝一 朝日新聞出版のご一読をオススメします)


3: メリハリを意識する
  「くどい」と感じたところはシェイプアップして、
  「あっさり」と感じたとこは、詳細に書き込む


4:無理やり直そうとしない。
  「どう直したらいいのかわからない」という部分は全削除して、
  前のパートと後のパートをつなげなおす文章/エピソードを新規に考える方がいい。


5:自分でなおしてて
 「あ、これダメだ。つまんないや」と
 万一思ってしまっても、決して作品を見捨てない。
  とにかく、できるかぎり直す。
  そしたら、いさぎよく発表する。
  駄作10000作書いても、それを糧に傑作1本かけたら大勝利なので。
  途中で投げると、駄作すら書けなかったことになるし、あとに残るものがめっちゃ少なくなる。
 
   
******************************

というくらいに注意してみるといいかな、と思います!


で、わたくしが書きました
『ぬいハチ物語』(仮)の初稿全文は、以下の通りです。


******************************



「さいたま市はおバカですよー!
やりなおしを要求するですよー!!」
「ひとはっ!」

ひとはの口をふさぎます。

……ひとはの言葉は、わたくちの気持ち、
そっくりそのまま、同じですのに。

「もごもご、むぐむぐ」
「ああ」

苦しげな声に手を緩めれば、
ひとはは、泣きそうな声を出します。

「どうして、おねーちゃん止めるですか?
おねーちゃんが、一番かなしい……
39685の解体を、ひとはよりずっと、
つらいって、かなしいって、イヤだって思ってるのに」

――確かに、ひとはの言うとおりです。

つらく。かなしく。イヤだと、心は叫んでいます。

解体される、39685に今すぐかけよって、
ごめんなさいと、さよならと、泣ければどれほど楽でしょう。

けれど……

「叫んで、泣いて。なにかが変わるものならば、
わたくちも そうしているでしょう」

けれど、わたくちはぬいハチロク。

「過ぎてしまった過去より、未来を」

全ての妹たちの規範となるべき、
8620形8620。トップナンバー・ぬいレイルロオドです。

「同じ悲劇を繰り返さぬため、何ができるか――
そうするためにますたぁをお手伝いして支えることが、
わたくちの、今すべきことと信じます。
ですので、泣いている余裕など、ないのです」
「わ」

声が、カラリと晴れ渡ります。

「さすがはおねーちゃんですよ!」

泣いたカラスがもう笑う――ひとはは、本当に強い子です。

「聞いたですか? マスター。
止まってるヒマなんてないですよ!!」

音がするほど、ますたぁの背中が叩かれます。
静かに頷き、ますたぁは立ち上がります。

地べたへと――
ついてしまっていた過去を、振り落とそうとするかのように、
パンパンと勢いもよく、その両膝を叩きます。

(ちぃぃ――)

わたくちたちの移動手段、新幹線バッグが開かれます。

「おねーちゃん、おうちかえるですよ!」

ひとはは、すぐに飛び乗ります。
バッグの中から、早く早くと手招きされます。

「……39685」

彼女の屍衣となるであろう、ブルーシートへ振り向きます。
省略せずに、その名を呼びます。

「旧国鉄9600形蒸気機関車、39685号機」

ありがとうでも、ごめんなさいでも、さようならでも、
きっと、言葉は嘘になります。

思いの全てを示す言葉を、今のわたくちは持ちませんから。

「――あなたのことを、忘れません」

ですから、本当だけつぶやいて。

「おまたせしました、ひとは、ますたぁ」

わたくちもまた、新幹線バッグへと入ります。


(ちぃぃ――)

「あ――」

ひかり。天井。
――おうちです。

わたくち、少し眠ってしまっていたようです。

「おうちに帰ってきたですよー」

ひとはが勢い良く、新幹線バッグを出ていきます。

「塊炭飴なめるですよ!
 おなかぺこぺこですよ!!」
「ひとは? その前にすることは?」
「いけないいけない! 
 てあらい・うがいをしなくちゃですよー!!」
 

(あら……)

洗面台に向かう途中で、
もう手洗いを済ませたらしいますたぁと
いれちがいます。

(厳しいお顔……無理からぬことではございますけれど)

「おねーちゃん、どーしたですか?」
「あ、ううん」

ひとはと並んで、てあらい・うがい。
おやつの棚から塊炭飴をとりだして、
ひとはにひとつ、いっとう大きなものを差し出します。

「あれ? おねーちゃん食べないですか?」
「わたくちは、いまは食欲が」
「無いときほど食べなきゃダメですよ!
 おなかぺこぺこじゃがんばれなくなっちゃうですよ!」
「……本当ね、ありがとう、ひとは」

ぽりぺろ、ごりごり。

塊炭飴を楽しむひとはをそのままに、
ますたぁのお仕事部屋へと向かいます。

「ますたぁ? おやつを持ってまいりました。
塊炭飴を、どうぞ、お召し上がりくださいまし」

……待っても、お返事がございません。

しかたないのでドアを開け、
ますたぁのお耳のすぐ近くから――

「あ――」




「ふぅーう、おなかぽんぽこですよー!
 あれ? おねーちゃん?」

これは……ああ――
ますたぁは、どんな思いで、この文章を――

「おねーちゃん、どーしたですか!!?」
「きゃっ!?」

ひとはの大声。
けれど、ますたぁは手を止めません。

「なになに、マスター、何書いてるですか?」

ひとはも、椅子に登ってきます。
ますたぁのなだらかな肩越しに、
パーソナルコンピウタアのディスプレイを覗き込みます。

「ええと――
『旧国鉄39685号機解体凍結署名へのご協力御礼と、
 お――お――』
 おねーちゃん、あの字、なんて読むですか?」
「おわび」
「おわび、お詫び!!?
 マスター、ごめんなさいってしてるですか!?」
「ええ、そう。……それが、ケジメというものです」

いけません。声が、ふるえてしまいます。
大事な、ことです。
ひとはに、きちんと伝えなく、ては。

「39685の、解体を、凍結、しようと、
 ますたぁ、の、呼びかけに、応じ、
 署名、を、おこころ、を……お寄せ、くださっ、た――」

引き締めようとするのですけれど、叶いません。
こころが、ことばが、乱れます。

「もう、これだけしか――
できること、など――
たった……これしか――無い、の――です――からっ」
「おねーちゃん!?」

いけません。
わたくちが泣くなど、いけません。

ひとはを――ますたぁを心配させます。

わたくちは、ますたぁを、支えるのです。

「ん――っ」

そうと思って、持ちこたえます。
……涙は、こぼさずすみました。

(よかった――)

わたくちがほとんど泣きそうだったと、
ますたぁには、きっと、気づかれずに済んでいます。

「おねえちゃん……」
「平気よ? ひとは。
 わたくち、すこし、言葉がつまっただけですから」

共感を、わたくちたちは有しています。
わたくちの感じた悲しみは、
ひとはにほとんど、伝わってしまっているのです。

「なぁんだ、そーだったですかぁ!
 おねーちゃんも、案外おっちょこちょいですよ!」

だからこそ、ひとはは明るく笑ってくれます。

わたくちのため、ますたぁのため。
ひとは自身の悲しみを、きっと、抑えて笑ってくれます。

「そうね、わたくち、おっちょこちょいです。
だって、ひとはの姉なのですから」
「なのですよ! って!? おねーちゃん、ひどいですよお!」

明るく笑って、ぽかぽかぽか。
ひとはが、わたくちをかるぅくぶちます。

(ひょい)

「あ――」
「マスターですよ!!」

だっこです。
ひとはとわたくちを抱きかかえ、
いいこいいこと、ケンカするなと、撫ぜてくれます。

「えへへぇ、気持ちいいですよ!」

いいこ、いいこと、何度も、何度も。
ますたぁご自身のおこころを、
そうすることで、慰めようとするかのように。

「えへへ……えへっ……へ」

ひとははひどく甘えます。
ぐりぐりと、ますたぁのお胸に、顔をおもいきりすりつけて――っ!!?

「ふ……ぇ……うう…………ぅぅぅ〜〜っ」
「ひとは――」

緊張が、きっと解けたのでしょう。
ひとはが――泣いてしまいます。

「こんなの――こんなの――ひどいですよぉ」

声を、かけるなどできません。

わたくちも、そしてますたぁも。

「ひとは、おねがいたくさんしたのに――
おねえちゃんと、マスターと――
たなばたさまにおねがいしたのにっ!!!」

「七夕様……」

たしかに、願いを託しました。

七月七日。
大きな、大きな公園で――

* * *

「すごいですよ! きれいですよ!!!」

ひとは、はじめて見たですよ!

とがったはっぱのワサワサの中、
たくさんたくさん紙があるです!

赤、青、黄色、ピンクに、金色!!
それに字が書いてあるですよ!

「おねーちゃん、これなんですか!?」

「これはね? ひとは、
 『七夕飾り』というものです」

「たなばたかざり」

「七夕、という風習があるのです。
 織姫と、彦星という方々が昔いらっしゃいまして――」

・・・おねーちゃん、たなばたさまのことを教えてくれます。


「わおわお! ロマンチックですよ! 素敵ですよ!!
それに、お願いごとまで叶えてもらえるなんて、スゴすぎですよ!」

「叶うかどうかは、わかりません。
たくさんのたくさんの方々が、いっせいに、一夜に願いを託すのですから」

「わ、そりゃそーですよ。
おりひめさんとひこぼしさん、読んでるだけで夜があけちゃうですよ」

「うふふ、確かに」

「ならなら、見てもらえるよーに、めだつよーにたんざく書くですよ!
マスターもお手伝いしてですよ!!」

「目立つように……どのような短冊にしたいのですか?」

「あのですね、まず、おねーちゃんがおねーちゃんの
たんざく書くですよ!」

「わたくちが……では――
ん…………。――うん、これが、わたくちの願いです」

『39685が たすかりますように』

さすが、おねーちゃんですよ!
やっぱりひとはと、おねがいおんなじだったですよ!

「そしたら、ひとは、39685のお絵描きするですよ。
マスターは炭水車をお絵描きしてですよ」

「まぁ!」

おねーちゃん、わかったみたいです。
うれしいですよ! ひとは、がんばってお絵描きするですよ!

よいしょ――よいしょ!

「描けたですよ!!!」

「まぁ、本当にひとは器用で素晴らしいですね。
見事な39685です。ますたぁも――
うん! おみごとです。
力強くうつくしい炭水車であるかと存じます」

「そしたら、連結するですよ!」

「ええ」

へっへへー、
ひとはのたんざくが機関車。
マスターのたんざくが炭水車。
それで! おねーちゃんのたんざくがおねがいごと客車ですよ!

「マスター、これ、たかいとこ!
このワサワサの、いーちばん高いとこにくっつけてですよ!」

「お願いいたします、ますたぁ」

マスター、きゃたつを借りにいってくれたですよ!

「まぁ、危なっかしい。ね? ひとは」

「はいですよー!」

おねーちゃんとひとはできゃたつを支えて――

「わ――お――」

「もう少し……あ、そこです、ますたぁ!」

「ついたですよーーーーー!」

えへへへへ! たんざく列車、39685!
ワサワサの一番高いところで、
気持ちよさそーに走ってるですよ!!

「夜になったらお星様まで駆け上がって!
だからぜっーたい! 39685は助かるですよ!!!」


* * *

「ぜったい……ぜったい――
39685助かるって――
お願い、叶うって……思ったですよ」

「ひとは――」

思い出が、きっと鮮やかすぎるのでしょう。
悲しみが、幾重にも折り重なるのでしょう。

ひとはに、なんと声をかければいいものか――
わたくちも……わたくちだって――
これほど、こころが痛みますのに。

「――――」
「あ」

ますたぁが、囁かれます。
ひとはには、けれどとどいていないようです。

「ね? ひとは?」

ひとはの反応はありません。
けれど、言葉も、そして共感も届いております。


「ひとつ、ひとつ。
ひとつひとつを、大事に思い出していきましょう」

「おもい、だすって……ひぐっ――なにを、ですかぁ」

「わたくしたちのしてきたことを。
39685を助けるために、学んだことを。
それは、きっと――」

こくり、ひとはが頷きます。

大きく大きくかぶりをふって、
ぐしぐし、涙をふきとります。

「ひとは――がんばって思い出すですよ!!」

……けれど、ひとはは、なかなか言葉を出せません。

ときおり、おもいだしたようにしゃくりあげ、
あふれそうになる涙をぬぐい――

時間が、さらさら、こぼれていきます。

「あ」

ますたぁが、部屋を出ていってしまわれます。

ひとはががくりと、うなだれます。

どう、しましょう。

なぐさめの声をかけようにも、
わたくちも・・・きっと、泣き声になってしまいます。

(ひとは)

小声で、試してみるけれど、
やはり、その声はひどく、ふるえています。


(ふわっ)

「え?」

ひとはが、おどろいて顔をあげます。

甘いにおい。
ココアのにおい。

「これ、溶かすやつじゃない――
ねりねりってするココアですよぉ」

マスターのおとっときの、ココアパウダー。

それを使ってていねいに いれられたココアがみっつ、
それぞれのマグカップの中、仲良くトレーに並んでいます。

「ほぅ……」

あたたかい。あまい。おいしい。

ココアをのどに落とすと同時に、
そんな単純な幸せで、わたくちの中綿がみたされます。

「あったかくって、おいしいですよ。
あのときと、ちょうど反対ですよ!」

うるおって、ぬくもって。
ひとはの言葉が、ようやくほころびはじめます。

「あのとき?」

「熊谷のデゴイチさんの動輪を、みんななでみがいたときですよ!!」

「ああ――」

あれは、夏の始まりでした。

動輪はあまりに大きくて、古い塗装はしつこくて。
剥がすため、何度も何度もスクレイパーを動かして。

「ハンマーでがんがんがんってやって、
ひとは、あつくてあつくてくらくらしたですよ」

「ああ、そうでした。
うふふ、本当に反対でしたね――あの麦茶!」

「きぃんてつめたくてきゅーってして、
かわいてるのがもどる感じで、おいしかったですよ!」

飲み干したマグをトレーに戻し、ひとはの両手が、動き出します。

「それから、三次にいったときもおいしかったですよ!」

「まぁ、飲み物のおはなしばかり」

「三次のときは食べ物ですよ! 唐揚げたくさん!
ハンバーグもあって、ぶどうもめちゃくちゃおいしかったですよ!」

「ああ、ピオオネでしたか――
あれは確かに、宝石のようなぶどうでしたね」

「46850さんとたくさんあそんで、みんなで整備体験して、
マスター、蒸気分配弁まで分解して組み立てして!」

「そのあと、みなさまでの会食でしたね。
いろいろなことをお話し合いになられて」

「みんなにこにこわらってたですよ!
とっても、とーっても楽しかったですよ!」

「ああ――」

そうでした。

わたくしの目にも、浮かびます。
耳には、笑い声が思い出されます。

「きっと……それだけのことなのですね」

ますたぁに。ひとはに。
そうして、わたくち自身に。

とどくよう、わすれないよう、
いまの気持ちを、ことばにします。

「大切に保存されるこのまわりには、笑顔がある。
笑顔の中心になれるこは、みんなが大事に、保存する」

「あ」

ひとはが、ますたぁが息を飲みます。
ゆっくり――静かにうなずかれます。

「そのこを、笑顔の中心に。
みんなが集まり、笑い合える――
そうした環境を、もしもつくることができたなら」

「解体なんて、絶対されなくなりますよ!!
おともだちのこと、こわすだなんてないですよ!!」

「おともだち――」

それは、とても簡単なことで。
だからこそ、とても、むつかしいこと。

「保存車両を、地域のみなさまの、おともだちに」

「わ!?」

ますたぁが急に立ち上がられます。
パアソナルコンピウタアを立ち上げて、キイボオドを叩きはじめます。

「マスター、またおわび文ですか?」

「いいえ、ちがいます。ちがいますよ、ひとは」

ますたぁが何をお書きになるか、わたくちにはまだ、わかりません。

けれどもひとつ。
たったひとつは、確かなこととわかります。

「ますたぁがお書きになっているのは、
きっと、みなさまにつたえるための文章です」

「つたえる――なにをですか?」

「ひとはのねがい、わたくちのねがい。
そうしてきっと、ますたぁご自身のものでもある――ねがい」

保存車両を、地域のみなさまのおともだちに。

そうするために、そうなるために、
していけることを、探すため――

「あ!」

ひとはの声。
つられてみれば、ディスプレイには、短い文字列。

「『物語』って書いてあるですよ!」

それは、タイトル。

ねがいを、どなたかに届けるための。
きっと叶えていくための、一番最初の――物語の。


―― 「ぬいハチ物語」 (仮) ――




;おしまい


******************************


では、直します。

直し終わってから、
「この辺が気になったので直した」ということ解説しますので、
まずは以下の、直し終わったものをお読みください。



******************************


『ぬいハチ物語』(仮) 進行豹




「さいたま市はおバカですよー!
やりなおしを要求するですよー!!」
「ひとはっ!」

ひとはの口をふさぎます。

……ひとはの言葉は、わたくちの気持ち、
そっくりそのまま、同じですのに。

「もごもご、むぐむぐ」
「あっ」

苦しげな息。
あわてておさえる手をゆるめれば、
ひとはは、泣きそうな声で問うてきます。


「どうして、おねーちゃん止めるですか?
おねーちゃんが、一番かなしい……
39685の解体を……
ひとはよりずっと、つらいって、
かなしいって、イヤだって思ってるのに」

――確かに、ひとはの言うとおりです。

つらく。かなしく。イヤだと、心は叫んでいます。

解体される39685に今すぐかけより、
ごめんなさいと、さよならと、泣ければどれほど楽でしょう。

静態保存機である あなたの価値が――
歴史を、文化を、ずっと繋いできてくれたレールが――
壊されてしまう無念さを、嘆けばどれほど救われるでしょう。

けれど……

「叫んで、泣いて。なにかが変わるものならば、
わたくちも そうしているでしょう」

けれど、わたくちはぬいハチロク。

全ての妹たちの規範となるべき、
ぬい鉄蒸気機関車、8620形8620号機の、
トップナンバー・ぬいレイルロオドです。

「同じ悲劇を繰り返さぬために、できる何かを。
きっと探して行うことが、ますたぁをお助けする手段だと……
わたくちの、今すべきことだと、信じます。
ですので――」

言葉で、迷いを断ち切ります。

「わたくちには、泣いている余裕などないのです」

「わ」

声が、カラリと晴れ渡ります。

「さすがはおねーちゃんですよ!」

泣いたカラスがもう笑う――ひとはは、本当に強い子です。

「聞いたですか? マスター。
止まってるヒマなんてないですよ!!」

音がするほど、ますたぁの背中が叩かれます。
静かに頷き、ますたぁは立ち上がります。

地べたへと――
ついてしまっていた過去を、ふり落とそうとするかのように、
パンパンと勢いもよく、その両ひざを叩きます。

(ちぃぃ――)

わたくちたちの移動手段、新幹線バッグが開かれます。

「おねーちゃん、おうちかえるですよ!」

ひとはは、すぐに飛び乗ります。
バッグの中から、早く早くと手まねきされます。

「……39685」

彼女の屍衣となるであろう、ブルーシートへ振り向きます。
省略せずに、その名を呼びます。

「旧国鉄9600形蒸気機関車、39685号機」

ありがとうでも、ごめんなさいでも、さようならでも、
きっと、言葉は嘘になります。

思いの全てを示す言葉を、今のわたくちは持ちませんから。

「――あなたのことを、忘れません」

ですから、本当だけつぶやいて。

「おまたせしました、ひとは、ますたぁ」

わたくちもまた、新幹線バッグへと入ります。



* * *



(ちぃぃ――)

「あ――」

ひかり。天井。
――おうちです。

わたくち、少し眠ってしまっていたようです。

「おうちに帰ってきたですよー」

ひとはが勢い良く、新幹線バッグを出ていきます。

「塊炭飴なめるですよ!
 おなかぺこぺこですよ!!」

「ひとは? その前にすることは?」

「いけないいけない! 
 てあらい・うがいをしなくちゃですよー!!」
 

(あら……)

洗面台に向かう途中で、
もう手洗いを済ませたらしいますたぁと入れちがいます。

(厳しいお顔……無理からぬことではございますけれど)

「おねーちゃん、どーしたですか?」

「あ、ううん」

ひとはと並んで、てあらい・うがい。

おやつの棚から塊炭飴をとりだして、
ひとはにひとつ、いっとう大きなものを差し出します。

「わぁぁ! これ、めちゃくちゃ石炭にそっくりですよぉ」

その漆黒を、てのうえでしばしころがして――
ひとはが、ふっと顔をあげます。

「あれ? おねーちゃん食べないですか?」

「わたくちは、いまは食欲が」

「無いときほど食べなきゃダメですよ!
 おなかぺこぺこじゃがんばれなくなっちゃうですよ!」

「……本当ね、ありがとう、ひとは」

ぽりぺろ、ごりごり。

塊炭飴を楽しむひとはをそのままに、
ますたぁのお仕事部屋へと向かいます。

「ますたぁ? おやつを持ってまいりました。
塊炭飴を、どうぞ、お召し上がりくださいまし」

……待っても、お返事がございません。

しかたないのでドアを開け、
ますたぁのお耳のすぐ近くから――

「あ――」




「ふぅーう、おなかぽんぽこですよー!
 あれ? おねーちゃん?」

これは……ああ――
ますたぁは、どんな思いで、この文章を――

「おねーちゃん、どーしたですか!!?」
「きゃっ!?」

ひとはの大声。
けれど、ますたぁは手を止めません。

「なになに、マスター、何書いてるですか?」

ひとはも、椅子に登ってきます。
ますたぁのなだらかな肩越しに、
パーソナルコンピウタアのディスプレイを覗き込みます。

「ええと――
『旧国鉄39685号機解体凍結署名へのご協力御礼と、
 お――お――』
 おねーちゃん、あの字、なんて読むですか?」

「おわび」

「おわび、お詫び!!?
 マスター、ごめんなさいってしてるですか!?」

「ええ、そう。……それが、ケジメというものです」

いけません。声が、ふるえてしまいます。

大事な、ことです。
ひとはに、きちんと伝えなく、ては。

「39685の、解体を、凍結、しようと、
 ますたぁ、の、呼びかけに、応じ、
 署名、を、おこころ、を……お寄せ、くださっ、た――」

引き締めようとするのですけれど、叶いません。
こころが、ことばが、乱れます。

「もう、これだけしか――
 できること、など――
 たった……これしか――無い、の――です――からっ」

「おねーちゃん!?」

いけません。
わたくちが泣くなど、いけません。

ひとはを――ますたぁを心配させます。

わたくちは、ますたぁを、支えるのです。

「ん――っ」

思いが、わたくちを支えます。
涙は……大丈夫。こぼれていません。


(よかった――)

わたくちがほとんど泣きそうだったと、
ますたぁには、きっと、気づかれずに済んでいます。

「おねえちゃん……」

「平気よ? ひとは。
 わたくち、すこし、ことばが つまっただけですから」

共感を、わたくちたちは有しています。

わたくちの感じた悲しみは、
ひとはにほとんど、伝わってしまっているのです。

「なぁんだ、そーだったですかぁ!
 おねーちゃんも、案外おっちょこちょいですよ!」

だからこそ、ひとはは明るく笑ってくれます。

わたくちのため、ますたぁのため。
ひとは自身の悲しみを、きっと、抑えて笑ってくれます。

「そうね、わたくち、おっちょこちょいです。
 だって、ひとはの姉なのですから」

「なのですよ! って!? おねーちゃん、ひどいですよお!」

明るく笑って、ぽかぽかぽか。
ひとはが、わたくちを かるぅくぶちます。

(ひょい)

「あ――」

「マスターですよ!!」

だっこです。

ひとはとわたくちを抱きかかえ、
いいこいいこと、ケンカするなと、撫ぜてくれます。

「えへへぇ、気持ちいいですよ!」

いいこ、いいこと、何度も、何度も。

……ますたぁご自身のおこころを、
そうすることで、慰めようとするかのように。

「えへへ……えへっ……へ」

ひとははひどく甘えます。

ぐりぐりと、ますたぁのお胸に、
顔をおもいきりすりつけて――!?

「あ」

「ふ……ぇ……うう…………ぅぅぅ〜〜っ」

「ひとは――」

緊張が、きっと解けたのでしょう。
ひとはが――泣いてしまいます。

「こんなの――
 こんなの――ひどいですよぉ」

声を、かけるなどできません。

わたくちも、そして、ますたぁも。

「ひとは、おねがいたくさんしたのに――
 おねえちゃんと、マスターと――
 たなばたさまにおねがいしたのにっ!!!」

「七夕様……」

たしかに、願いを託しました。

七月七日。

静態保存機、C57の見学をした、
大きな、大きな公園で――




* * *



「すごいですよ! きれいですよ!!!」

ひとは、はじめて見たですよ!

とがったはっぱのワサワサの中、
たくさんたくさん紙があるです!

赤、青、黄色、ピンクに、金色!!
それに字が書いてあるですよ!

「おねーちゃん、これなんですか!?」

「これはね? ひとは、
 『七夕かざり』というものです」

「たなばたかざり」

「七夕、という風習があるのです。
 織姫と、彦星という方々が昔いらっしゃいまして――」

……おねーちゃん、たなばたさまのことを教えてくれます。


「わおわお! ロマンチックですよ! 素敵ですよ!!
それに、お願いごとまで叶えてもらえるなんて、スゴすぎですよ!」

「叶うかどうかは、わかりません。
たくさんのたくさんの方々が、いっせいに、一夜に願いを たくすのですから」

「わぁ! そりゃそーですよ。
おりひめさんとひこぼしさん、読んでるだけで夜があけちゃうですよ」

「うふふ、確かに」

「ならなら、見てもらえるよーに、めだつよーにたんざく書くですよ!
マスターもお手伝いしてですよ!!」

「目立つように……どのような短冊にしたいのですか?」

「あのですね、まず、
おねーちゃんがおねーちゃんの たんざく書くですよ!」

「わたくちが……では――
ん…………。
うん! これが、わたくちの願いです」


――『39685が たすかりますように』――

さすが、おねーちゃんですよ!
やっぱりひとはと、おねがいおんなじだったですよ!

「そしたら、ひとは、39685のお絵描きするですよ。
マスターは炭水車をお絵描きしてですよ」

「まぁ!」

おねーちゃん、わかったみたいです。
うれしいですよ! ひとは、がんばってお絵描きするですよ!

よいしょ――かきかき――
んー……っと、除煙板、ごっついですよ――ん――うん!

「描けたですよ!!!」

「まぁ、本当にひとは器用で素晴らしいですね。
見事な39685です。ますたぁも――
うん! おみごとです。
力強くうつくしい炭水車であるかと存じます」

「そしたら、連結するですよ!」

「ええ」

へっへへー!

ひとはのたんざくが機関車。
マスターのたんざくが炭水車。
それで! おねーちゃんのたんざくがおねがいごと客車ですよ!!

「マスター、これ、たかいとこ!
 このワサワサの、いーちばん高いとこにくっつけてですよ!」

「お願いいたします、ますたぁ」

マスター、きゃたつを借りにいってくれたですよ!

「まぁ、危なっかしい。ね? ひとは」

「はいですよー!」

おねーちゃんとひとはできゃたつを支えて――

「わ――お――」

「もう少し……あ、そこです、ますたぁ!」

「ついたですよーーーーー!」

えへへへへ! たんざく列車、39685!

ワサワサの一番高いところで、
気持ちよさそーに走ってるですよ!!

「夜になったらお星様まで駆け上がって!
 だからぜっーたい! 39685は助かるですよ!!!」


* * *

「ぜったい……ぜったい――
 39685助かるって――
 お願い、叶うって……思ったですよ」

「ひとは――」

思い出が、きっと鮮やかすぎるのでしょう。
悲しみが、幾重にも折り重なるのでしょう。

ひとはに、なんと声をかければいいものか――

わたくちも……わたくちだって――
これほど、こころが痛みますのに。

「――――」
「あ」

ますたぁの囁やき。
ひとはの耳には、聞こえていないようです。

「ね? ひとは?」

わたくちが声をかけても、やっぱりひとはは無反応。
けれど、共感は確実に届いております。

「ひとつ、ひとつ。
 ひとつひとつを、大事に思い出していきましょう」

「おもい、だすって……ひぐっ――なにを、ですかぁ」

「わたくしたちのしてきたことを。
 39685を助けるために、学んだことを。
 それは、きっと――」

こくり、ひとはが頷きます。

大きく大きくかぶりをふって、
ぐしぐし、涙をふきとります。

「ひとは――がんばって思い出すですよ!!」


……けれど ひとはは、なかなか言葉を出せません。

ときおり、おもいだしたようにしゃくりあげ、
あふれそうになる涙をぬぐい――



時間が、さらさら、こぼれていきます。



「あ」

ますたぁが、部屋を出ていってしまわれます。

ひとはががくりと、うなだれます。

どう、しましょう。

なぐさめの声をかけようにも、
わたくちも……きっと、泣き声になってしまいます。

(ひとは)

小声で、試してみるけれど、
やはり、その声はひどく、ふるえています。


(ふわっ)

「え?」

ひとはが、おどろいて顔をあげます。

甘いにおい。
ココアのにおい。

「これ、溶かすやつじゃない――
 ねりねりってするココアですよぉ」

マスターのおとっときの、ココアパウダー。

それを使ってていねいに いれられたココアがみっつ、
それぞれのマグカップの中、仲良くトレーに並んでいます。


「ほぅ……」


あたたかい。あまい。おいしい。

ココアをのどに落とすと同時に、
そんな単純な幸せで、わたくちの中綿がみたされます。

「あったかくって、おいしいですよ。
 あのときと、ちょうど反対ですよ!」

うるおって、ぬくもって。
ひとはの言葉が、ようやくほころびはじめます。

「あのとき?」

「熊谷のデゴイチさんの動輪を、みんななでみがいたときですよ!!」

「ああ――」

あれは、夏の始まりでした。

D51の動輪はあまりに大きくて、古い塗装はしつこくて。
剥がすため、何度も何度もスクレイパーを動かして。

「ハンマーでがんがんがんってやって、
 ひとは、あつくてあつくてくらくらしたですよ」

「ああ、そうでした。
 うふふ、本当に反対でしたね――あの麦茶!」

「きぃんて つめたくて きゅーってして、
 からだぜんぶに広がる感じで、とーっても おいしかったですよ!」

飲み干したマグカップをトレーにもどし、ひとはの両手が、動き出します。

「それから、みよし!
 三次にいったときもおいしかったですよ!」

「まぁ、のみものの おはなしばかり」

「三次のときは食べ物ですよ! 唐揚げたくさん!
 ハンバーグもあって、ぶどうもめちゃくちゃおいしかったですよ!」

「ピオオネでしたか――
 あれは確かに、宝石のようなぶどうでした」

「46850さんとたくさんあそんで、みんなで整備体験して、
 マスター、蒸気分配弁まで分解して組み立てして!」

「そのあと、みなさまでの会食でしたね。
 いろいろなことをお話し合いになられて」

「みんなにこにこわらってたですよ!
 とっても、とーっても楽しかったですよ!」

「ああ――」

わたくしの目にも浮かびます。
耳には、さんざめく笑い声。

鮮やかな、にぎやかな、
単純労働――整備までもが、楽しい時間。


「きっと……それだけのことなのですね」

ますたぁに。ひとはに。
そうして、わたくち自身に。

とどくよう、わすれないよう、
いまの気持ちを、ことばにします。

「大切に保存される車輌のまわりには、笑顔がある。
 笑顔の中心になれるこは、みんなが大事に、保存する」

「あ」

ひとはが、ますたぁが息を飲みます。
ゆっくり――静かにうなずかれます。

「そのこを、笑顔の中心に。
 みんなが集まり、笑い合える――
 そうした環境を、もしもつくることができたなら」

「解体なんて、絶対されなくなりますよ!!
 おともだちのこと、壊すだなんてないですよ!!」

「おともだち――」

それは、とても簡単なことで。

だからこそ、とても、むつかしいこと。


「保存車両を、地域のみなさまの、おともだちに」

「わ!?」

ますたぁが急に立ち上がられます。
パアソナルコンピウタアを立ち上げて、キイボオドを叩きはじめます。

「マスター、またおわび文ですか?」

「いいえ、ちがいます。ちがいますよ、ひとは」

ますたぁが何をお書きになるか、わたくちにはまだ、わかりません。

けれどもひとつ。
たったひとつは、確かなこととわかります。

「ますたぁがお書きになっているのは、
 きっと、みなさまにつたえるための文章です」

「つたえる――なにをですか?」

「ひとはのねがい、わたくちのねがい。
 そうしてきっと、ますたぁご自身のものでもある――ねがい」

保存車両を、地域のみなさまのおともだちに。

そうするために、そうなるために、
していけることを、探すため――

「あ!」

ひとはの声。
つられてみれば、ディスプレイには、短い文字列。

「『物語』って書いてあるですよ!」

それは、タイトル。

ねがいを、どなたかに届けるための。
きっと叶えていくための、一番最初の――物語の。


―― 「ぬいハチ物語」 (仮) ――




;おしまい

******************************



出来ました!!!!


んでもって、修正しながらとったメモは以下となります。




******************************

+タイトル、著者名がなかったので書き足した


+

前)

「ああ」

苦しげな声に手を緩めれば、
ひとはは、泣きそうな声を出します。

後)

「あっ」

苦しげな息。
あわてておさえる手をゆるめれば、
ひとはは、泣きそうな声で問うてきます。

→「ああ」だと、ぬいハチロクが冷淡に見える。
 修正前は「声」「声」なので綺麗じゃない。
 


+「どうして、おねーちゃん止めるですか?
 からはじまるひとはのセリフ、
 改行位置を修正し、読みやすく、意味を取りやすいように



+

前)
解体される、39685に


後)
解体される39685に


→読点が意味を切ってしまっていたので、除去。



+
前)
今すぐかけよって、

後)
今すぐかけより



今すぐかけよって、

よりも

今すぐかけより

の方が、声に出したとき言いやすい(リズムが出る)ので。


本当は表記も

今すぐ駆け寄り

と直した方がいいが、
ぬいハチロクのキャラクター的に
「駆け寄る」を漢字にはしたくなかった


+ そのあと

***

静態保存機であるあなたの価値が――
歴史を、文化を、ずっと繋いできてくれたレールが――
壊されてしまう無念さを、嘆けばどれほど救われるでしょう。

***

を挿入

→「何故、解体をいやがっているのか」を、
きちんと読んでくださる方に説明するため。
「動機」がわからない行動に共感できる方は、少ないので。、
+ 

前)
全ての妹たちの規範となるべき、
8620形8620の、トップナンバー・ぬいレイルロオドです。


後)
全ての妹たちの規範となるべき、
ぬい鉄蒸気機関車、8620形8620号機の、
トップナンバー・ぬいレイルロオドです。

→8620形8620の意味がわからない読者さんもいるかも、
と感じたので、補強修正。

なお
「ぬい鉄がいかなる組織か」
「ぬいレイルロオドとはなにか」などは
「この話の本筋にはまったく関係してこない」
ので、触れない。



+
「過ぎてしまった過去より、未来を」

を、削除

→読んでると浮いてしまって、リズム狂うので


+

前)
「同じ悲劇を繰り返さぬため、何ができるか――
そうするためにますたぁをお手伝いして支えることが、
わたくちの、今すべきことと信じます。
ですので、泣いている余裕など、ないのです」

後)

「同じ悲劇を繰り返さぬために、できる何かを。
 きっと探して行うことが、ますたぁをお助けする手段だと……
 わたくちの、今すべきことだと、信じます。
 ですので――」

言葉で、迷いを断ち切ります。


「わたくちには、泣いている余裕などないのです」

→日本語いまいちだったので、直し。
(だらっとしてしまって意味がとりづらい文は、
 「細かく分ける」「間をとる」と、
 直しやすいかと思います)
 


+ ぬいハチロクの心情(地の文)を、
 キャラクターあわせで、ひらがなに開く


+ 

わたくちもまた、新幹線バッグへと入ります。

のあと、
時間経過と場面転換をわかりやすくするため、
区切り

* * *

を挿入



+ 

おやつの棚から塊炭飴をとりだして、
ひとはにひとつ、いっとう大きなものを差し出します。

のあと

「塊炭飴ってなにさ」

という方がいる気がしたので、
「石炭にそっくりな飴」ということを説明すべく


***


「わぁぁ! これ、めちゃくちゃ石炭にそっくりですよぉ」

その漆黒を、てのうえでしばしころがして――
ひとはが、ふっと顔をあげます。

***

を挿入。



+

前)

そうと思って、持ちこたえます。
……涙は、こぼさずすみました。


後)
思いが、わたくちを支えます。
涙は……大丈夫。こぼれていません。


→「そう」とか「それ」とかは
 他の言葉に簡単になおせるのであれば、
 直した方がいいので。



+

前)
七月七日。
大きな、大きな公園で――


後)
七月七日。

静態保存機、C57の見学をした、
大きな、大きな公園で――


→「何故いったのか」が明記されてないと、
ご都合主義の(都合のいい回想をいれるための)
とってつけエピソードに見えてしまう気がしたので



+
前)
よいしょ――よいしょ。

後)
よいしょ――かきかき――
んー……っと、除煙板、ごっついですよ――ん――うん!


→ディテールを書いたほうが
「いっしょうけんめいお絵描きしてる」感が出るので



+
前)

ますたぁが、囁かれます。
ひとはには、けれどとどいていないようです。

「ね? ひとは?」

ひとはの反応はありません。
けれど、言葉も、そして共感も届いております。



後)

ますたぁの囁やき。
ひとはの耳には、聞こえていないようです。

「ね? ひとは?」

わたくちが声をかけても、やっぱりひとはは無反応。
けれど、共感は確実に届いております。



→「けれど」「けれど」が不細工なので修正。



+
前)
動輪はあまりに大きくて、古い塗装はしつこくて。
剥がすため、何度も何度もスクレイパーを動かして。


後)
D51の動輪はあまりに大きくて、古い塗装はしつこくて。
剥がすため、何度も何度もスクレイパーを動かして。

→デゴイチって何??? という方がいるかもなので

(その前までに 「静態保存機 C57」等で説明あるので、
D51までかくだけで、「これも静態保存の蒸気機関車なのだな」
と想像してもらえることと期待)」




+
前)

「きぃんて つめたくて きゅーってして、
かわいてるのが戻る感じで、とーっても おいしかったですよ!」


後)

「きぃんて つめたくて きゅーってして、
 からだぜんぶに広がる感じで、とーっても おいしかったですよ!」

→その直後にも「戻る」があるので、重複する印象を回避


+
前)
「それから、三次にいったときもおいしかったですよ!」


後)
「それから、みよし!
 三次にいったときもおいしかったですよ!」


→「三次の読みがみよし」とは知らないと絶対に無理。
とは思うのだが、ルビもふれないので、
ひとはにくりかえさせることで説明




+
前)

そうでした。

わたくしの目にも、浮かびます。
耳には、笑い声が思い出されます。


後)

わたくしの目にも浮かびます。
耳には、さんざめく笑い声。

鮮やかな、にぎやかな、
単純労働――整備までもが、楽しい時間。



→もったりしてるわりには薄いので、
スッキリさせつつディテールを増強。



+
前)
「大切に保存されるこのまわりには、笑顔がある。
笑顔の中心になれるこは、みんなが大事に、保存する」


後)

「大切に保存される車輌のまわりには、笑顔がある。
 笑顔の中心になれるこは、みんなが大事に、保存する」

こ=静態保存の蒸気機関車、と一目での理解は多分無理なので、
一回目を「機体」とすることで説明強化




******************************


修正は、パズルみたいなものです。

普通のパズルと違うのは

「自分で、ピース(=文章)を、
 自由に変形できること」


変形させて、一番「見やすい・読みやすい・伝えやすい」
形にもっていくことができれば、
それで修正、完了です!!


完全に直しきることはきっと永遠にできないので、
(なぜって、著者自身の好みも時々刻々で変わるから)
ある程度のとこでスパッと見切って完成させて!
作品をどどん! と公開しましょう!!!

お話を組んで。

書いて。

直して。

公開する。


そのための一番簡単(だけ重要)なとこ、
少しでもお伝えできますように、
わたくしも、わたくしなりのベストは尽くしました!


ので、スパッと見切って、
「ぬいハチ物語の書き方」も、ここで完成といたします!


お読みくださり、まことにありがとうございました!!


どうぞ素敵なご執筆を!!
posted by 進行豹 at 12:33| Comment(2) | TrackBack(0) | 製作日誌

2016年11月26日

「ぬいハチ物語」の書き方 〜その12:物語を結ぼう!〜

さて。

前回

http://hexaquarker.sblo.jp/article/177804954.html

までで、
「書き方」の基本的なとこはご説明終わってます。


が、書けば書くほど、
「あー、ここもご説明しなきゃ」
と思うのがこのテのものの怖いところで。

それを延々やってしまうと、
いつまでたっても終わらないというハメに陥ってしまいます。

ので、

今回「物語を結ぼう」。
次回「ブラッシュアップで仕上げよう!」

の、残り二回で、「ぬいハチ物語の書き方」きっちり結ぼうと思っております。


のですが――「これだけはご説明しとかねば!」ということを積み残してると、
プレイヤーさんの「ぬいハチ物語」拝読してて(ありがとうございます!)気付きましたので、
まずはそこ、ざざざといかせていただきます。


今回の「これだけはご説明しとかねば!」は

『行動(動作)で描写する』ということです。


例えば、めっちゃ悔しいシーンがあるとします。

それを、心理だけで描写してみましょう、


*************************

ますたぁの動きが止まります。
その目が、一点に注がれています。

―― 解体工事日程 ――

看板にかかれている文字は、
すぐには、意味になりません。

「わ……解体……決まっちゃったですかぁ」

ひとはの、どこか呆けたような声が聞こえます。

解体、決定。

39685が解体される――
その形が、歴史が、永遠に失われてしまう。

……ああ、なんと。
なんと、口惜しいことでしょう。

*************************


では、これに行動(動作)を交えて描写します。


*************************

(ガンっ!!!!)

「!!!? ますたぁ!?」

ますたぁが、何かを――
ああ、わたくちのますたぁが。
あの温和な方が――殴っています。立て看板を。

「ますたぁ、おやめください!
何があったか存じませんが、
立て看板に、決して罪はございません!」

ますたぁが、ハッと息を飲みます。
飲まれた息が、ぎりぎりと――歯ぎしりの音に代わります。

「わ……解体……決まっちゃったですかぁ」

―― 解体工事日程 ――

立て看板に書かれた文字を、
その声で、わたくちもようやく、とらえます。

ぽふん。

軽い、音。
瞳を向ければ、ひとはがしゃがみこんでしまっています。

「ひとは……お尻がよごれますよ?」

手を、差し伸べます。
その手が、ぐにゃりと歪みます。

「おねえちゃん……おねえちゃん、ないたら――
ひとはも――がまん、できないですよぉ」

「ふっ――くっ――」

泣いて、泣いてなぞ、おりませぬ。
泣いたら、認めたことになります。
諦めてしまうことになります。

36985が、この世界から失われる。
そのようなこと、泣いて――認めるなどできません。

*************************

いかがでしょうか?

前者と比べ、
「動作」を交えた後者は、
随分と感情が濃密に伝わってくるのではないかと思います。

行動。仕草。息遣い。
あるいは温度。匂い。てざわり。

『思考』が示し得ぬ情報を、行動・動作は示すことができます。

こうした情報――体感――の描写は、
そのシーンに臨場感を与え、
また、読み手の共感を促すこともできるでしょう。


『ぬいハチ物語』は、その性質上、

「想像だけで描かれることが少ない。
 マスターとぬいハチちゃんとで行ってきた場所、
 経験してきたことがベースになって描かれる」

――そうした物語であるケースが多いかと想像します。


ので、せっかくのその体験を活かしましょう。

「思考」だけで物語をすすめるのではなく、
そのときに感じた手触りを、嗅いだ匂いを、
あるいは失敗の痛みさえをも、そのまま文字に落としましょう。

できるかぎりに細部まで、しつこく追って、描写しましょう。

そうすることで、あなたの「ぬいハチ物語」は、必ずや、体温を持って脈動するものとなります。

(のでので、もしお気がむいたら、 今まで書いてきた部分をみなおし、
「行動に置き換えられる描写」がないかを探してみて、実際に置き換えてみてください!)



で。

今回、わたくしは
わたくしの「ぬいハチ物語」(仮)を結びます。

ので、今かけてるとこからラストまでのストーリーラインを確認しましょう。


******************************


A「おもいだしてみましょう。
39685のためにわたくちたちががんばったこと。
それはきっと――
39685がわたくちたちに、伝え・遺してくれたことでもあるのですから」



B「
「がんばったこと――
整備の勉強しに、くまがやにいったですよ!」

「そうですね、D51 140号機さんの整備のお手伝いにいきましたね」

「動輪ピカピカにするの、楽しかったですよー!」

D51 140の、48650の整備体験について話すうち、
ひとは、どんどん元気を取り戻し、にこにこ笑顔になっていく。

「おねーちゃんもマスターもまっくろになって、
みんなでわいわい整備して、とーっても楽しかったですよ!」

「ああ」

その言葉にぬいハチロク気づく

「そうですね。本当に――楽しかった」




C「ぬいハチロク、マスターの丸まっている背中を叩く。

「笑ってください。ますたぁ」

「静態保存をされ続けるこ。
レールを、つないでもらえるこ。
そうしたこたちは、いつだって、
みんなの笑顔の中にあります」

「ですから、ますたぁ。笑ってください。
いま泣いているこのところに、
きっと、笑顔を届けて、ひろげてあげてください」

「ますたぁにはそれができると。
他のどなたが信じなくとも、
わたくしは、必ず、信じつづけます」

「ひとはもですよー!」

ますたぁ、うなずき、背筋を伸ばす。

PCを立ち上げ、なにかを書き始める。

「おねーちゃん、あれ、なんですか?
 ますたぁ、なに書いてるですか?」

「わたくちにもわかりません。
 けれども、きっと――
 レールをつなぐ、そのための物語です」


******************************


A までが書いてある部分ですね。

で、今日は、
B、Cを書くわけです。


この際、注意するところはただ一点

『C(ラストシーン)を明確にして、
 B(ラストシーン前)を、そこにつなげるように書く』

のみです。



物語では、ラストシーン――オチ、結び方――が、
『ファーストシーンの次』に重要となります。

ファーストシーンが最重要なのは、
「そこがしょぼいと続きを読んでもらえないから」。

どんなに素晴らしいラストシーンが待っていようと、
ファーストシーンで「つまんなそう」と投げられてしまえば、
完全な無意味となってしまうからです。

逆にいえば、
「それほど重要なファーストシーンと比較されるほど、ラストシーンは重要」です。


うっかりやってしまいがちなパターンとして、

「最初から順番に書いていって、
 書くこと全部かいたから、おしまいにする」

というのがあります。

これも、正しいは正しいです。

正しいは正しいのですが――もったいないです!!!

ラストシーンがぼんやりしてると、
今まで読んできたお話全部が、ぼんやりします。


のでので、
ラストシーンは

『そのお話のテーマ(何を書きたかったのか)を思い出す』

『そのテーマを、誰に伝えたいのかを、いまいちど考える』

『そしたら、
 そのターゲット(伝えたい相手) に突き刺すことだけを考えて、
 ラストシーン。 ラストの一行。 物語の結び方を考える』

という順番で作ってみることをおすすめします。


やってみましょう。

わたくしの場合は

******************************
<<何を書きたいか>>

「『静態保存機の現状について書きたい』ので、
 『静態保存機の現状改善を目指す、ぬいハチロクの成長物語』」にする。』
******************************

というテーマで書き始めました。


ですので、ターゲットは
「静態保存に興味を保つ方」
・・・と思ってしまいそうですが、

この、「ぬいハチ物語」(仮)は、
「ぬいハチ物語を書いてみたい人」のために書いております、
「ぬいハチ物語の書き方」の一部――
つまりは、ターゲットもそうした方々――
となりますので、そこをしっかりと思い出します。


その人達に刺さる。
こころに残る、印象に残していただける可能性が高そうなラスト一行――


・・・・・・うん。
まぁ、これでいけるのではないか、というのが思いつきました。

(どんなのを どんな思考方法でが思いついたかは、一番ラストにご説明申し上げます)


と、いうところまで説明しおえて、
本日のワークです。


*******************
【ワーク】

+ あなたが書いている「ぬいハチ物語」のラストシーンを

「どんなテーマでかいているか」
「そのテーマを伝えたい相手は誰か」
「どうやったらその相手のこころに残るか」

――を考えながら、決めてみましょう。

 決まったら、そこに上手につなげることを意識して、ラストシーン前を書いてみましょう。

 できることなら、ラストシーン前までをもつなげてしまい、物語を結んでしまいましょう。 

********************



と、いうことで、
わたくしもそのように、ラストシーンまで書ききって、
「ぬいハチ物語」(仮)を結びますね!

参ります!!


******************************


「ひとつ、ひとつ。
ひとつひとつを、大事に思い出していきましょう」

「おもい、だすって……ひぐっ――なにを、ですかぁ」

「わたくしたちのしてきたことを。
39685を助けるために、学んだことを。
それは、きっと――」

こくり、ひとはが頷きます。

大きく大きくかぶりをふって、
ぐしぐし、涙をふきとります。

「ひとは――がんばって思い出すですよ!!」

……けれど、ひとはは、なかなか言葉を出せません。

ときおり、おもいだしたようにしゃくりあげ、
あふれそうになる涙をぬぐい――

時間が、さらさら、こぼれていきます。

「あ」

ますたぁが、部屋を出ていってしまわれます。

ひとはががくりと、うなだれます。

どう、しましょう。

なぐさめの声をかけようにも、
わたくちも・・・きっと、泣き声になってしまいます。

(ひとは)

小声で、試してみるけれど、
やはり、その声はひどく、ふるえています。


(ふわっ)

「え?」

ひとはが、おどろいて顔をあげます。

甘いにおい。
ココアのにおい。

「これ、溶かすやつじゃない――
ねりねりってするココアですよぉ」

マスターのおとっときの、ココアパウダー。

それを使ってていねいに いれられたココアがみっつ、
それぞれのマグカップの中、仲良くトレーに並んでいます。

「ほぅ……」

あたたかい。あまい。おいしい。

ココアをのどに落とすと同時に、
そんな単純な幸せで、わたくちの中綿がみたされます。

「あったかくって、おいしいですよ。
あのときと、ちょうど反対ですよ!」

うるおって、ぬくもって。
ひとはの言葉が、ようやくほころびはじめます。

「あのとき?」

「熊谷のデゴイチさんの動輪を、みんななでみがいたときですよ!!」

「ああ――」

あれは、夏の始まりでした。

動輪はあまりに大きくて、古い塗装はしつこくて。
剥がすため、何度も何度もスクレイパーを動かして。

「ハンマーでがんがんがんってやって、
ひとは、あつくてあつくてくらくらしたですよ」

「ああ、そうでした。
うふふ、本当に反対でしたね――あの麦茶!」

「きぃんてつめたくてきゅーってして、
かわいてるのがもどる感じで、おいしかったですよ!」

飲み干したマグをトレーに戻し、ひとはの両手が、動き出します。

「それから、三次にいったときもおいしかったですよ!」

「まぁ、飲み物のおはなしばかり」

「三次のときは食べ物ですよ! 唐揚げたくさん!
ハンバーグもあって、ぶどうもめちゃくちゃおいしかったですよ!」

「ああ、ピオオネでしたか――
あれは確かに、宝石のようなぶどうでしたね」

「46850さんとたくさんあそんで、みんなで整備体験して、
マスター、蒸気分配弁まで分解して組み立てして!」

「そのあと、みなさまでの会食でしたね。
いろいろなことをお話し合いになられて」

「みんなにこにこわらってたですよ!
とっても、とーっても楽しかったですよ!」

「ああ――」

そうでした。

わたくしの目にも、浮かびます。
耳には、笑い声が思い出されます。

「きっと……それだけのことなのですね」

ますたぁに。ひとはに。
そうして、わたくち自身に。

とどくよう、わすれないよう、
いまの気持ちを、ことばにします。

「大切に保存されるこのまわりには、笑顔がある。
笑顔の中心になれるこは、みんなが大事に、保存する」

「あ」

ひとはが、ますたぁが息を飲みます。
ゆっくり――静かにうなずかれます。

「そのこを、笑顔の中心に。
みんなが集まり、笑い合える――
そうした環境を、もしもつくることができたなら」

「解体なんて、絶対されなくなりますよ!!
おともだちのこと、こわすだなんてないですよ!!」

「おともだち――」

それは、とても簡単なことで。
だからこそ、とても、むつかしいこと。

「保存車両を、地域のみなさまの、おともだちに」

「わ!?」

ますたぁが急に立ち上がられます。
パアソナルコンピウタアを立ち上げて、キイボオドを叩きはじめます。

「マスター、またおわび文ですか?」

「いいえ、ちがいます。ちがいますよ、ひとは」

ますたぁが何をお書きになるか、わたくちにはまだ、わかりません。

けれどもひとつ。
たったひとつは、確かなこととわかります。

「ますたぁがお書きになっているのは、
きっと、みなさまにつたえるための文章です」

「つたえる――なにをですか?」

「ひとはのねがい、わたくちのねがい。
そうしてきっと、ますたぁご自身のものでもある――ねがい」

保存車両を、地域のみなさまのおともだちに。

そうするために、そうなるために、
していけることを、探すため――

「あ!」

ひとはの声。
つられてみれば、ディスプレイには、短い文字列。

「『物語』って書いてあるですよ!」

それは、タイトル。

ねがいを、どなたかに届けるための。
きっと叶えていくための、一番最初の――物語の。


―― 「ぬいハチ物語」 (仮) ――




;おしまい





******************************

結びました!


自作解説はほんっとにまったく、心の底から好きではないのですが
(なぜって、読んでくださる方の誤読の自由を極端に縛ってしまうから)
今回ばかりは「書き方」ということでございますので、
ラスト一行、どう決めたのかをご説明申し上げます。


まず、テーマは

「『静態保存機の現状について書きたい』ので、
 『静態保存機の現状改善を目指す、ぬいハチロクの成長物語』」にする。』

でした。


で、対象読者さんが
「ぬいハチ物語を書いてみたいひと」


――これは、この時点でミスマッチです。

(テーマに対し、対象読者が「静態保存機に興味がある人」なら、ベストマッチです)


ミスマッチである以上、すりあわせなければなりません。


ので、

”「ぬいハチ物語を書いてみたい人」の興味がどこにあるか”

を、あらためて考えます。

これはもちろん
「物語の書き方」であり
それは「物語がどう書かれるか」であるとも、言い換えられます。

ここまで気づけば、あとは簡単です。


「『静態保存機の現状について書きたい』ので、
 『静態保存機の現状改善を目指す、ぬいハチロクの成長物語』」』

の着地点は

「静態保存機の現状に対しての改善案を、
ぬいハチロクが、ぬいハチロクの気付きとして思いつく」

ことです。

このラストエピソードを、

「物語がどうかかれるか」

に結びつければいいわけですから――


『ぬいハチロクの気づきをもとに、ますたぁが物語を書き始める』

というラストシーンが、好適であるように思います。

ので、「ぬいハチ物語」(仮)という、
ここまでわたくしが書き続けてきた物語のタイトルを、
そのままラスト一行にもってくる。

・・・という風に、わたくしは考えました次第です。

少しでもご参考になりましたらうれしいです!


と、いうとこまでで、
「ぬいハチ物語」(仮)
はひとまず書き上がりました。

しかし「ひとまず描き上がったもの」は『完成原稿』ではございません。
所詮、「初稿」にすぎないのです。

初稿には、穴もミスも、恐らくたくさんございます。

ですので、次回、
「ブラッシュアップで仕上げよう」で、
初稿を完成稿にともっていき、この「書き方」を結んでしまおうと思います!

ご期待ください!!
posted by 進行豹 at 11:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 製作日誌

2016年11月25日

「ぬいハチ物語」の書き方 〜その11:回想シーンはむつかしい!!〜

さて。
前回

http://hexaquarker.sblo.jp/article/177782937.html

までで、
「書き方」のかなりの部分はお伝えできたかと思います。


ですので、
あとはもう、書いていって、ラストを綴じれば、おしまい
――なことに変わりありません。


のですが、
「ここをご説明しとかないと危ないかも」
と思う点がひとつございますので、
本日は、
「回想シーン」
についてご説明申し上げます。



わたくしの「ぬいハチ物語」(仮)は、
現在、シーン2(プラスちょっと)まで書き終わっております。


(プラスちょっと)とは何か。

まずはこの辺、実例でご説明申しあげます。




****************************
<<ストーリーラインでのシーン2からシーン3>>

2:
「新幹線バッグ開かれる。
おうち。
ますたぁは帰宅するやいなやでPCを立ち上げる。
「おねーちゃん。マスター、なにやってるですか?」
「これは……署名サイトですね。
39685の解体阻止をお手伝いするため、
ますたぁが、お立ち上げになった署名の――」
「マスター、お詫び文書いてるですよ!」


3:

「その打ちひしがれた様子に
『おねーちゃんとたばなたさまにお願いしたのに!』
とわめくひとは。
ぬいハチロクはたなばたの日のことを思い出す。



<<実際に書いたシーン2の結び>>


「ふ……ぇ……うう…………ぅぅぅ〜〜っ」
「ひとは――」

緊張が、きっと解けたのでしょう。
ひとはが――泣いてしまいます。

「こんなの――こんなの――ひどいですよぉ」

声を、かけるなどできません。

わたくちも、そしてますたぁも。

「ひとは、おねがいたくさんしたのに――
おねえちゃんと、マスターと――
たなばたさまにおねがいしたのにっ!!!」


**************************


――

ストーリーラインだと。
「お詫び文章を書いているとこ」
で終わってるのですが、
実際に書いたものは
「お詫び文章書いてるのを見る」

「ひとは、泣き出す」

「たなばたさまへの不満
(という形で、やりきれない感情が)爆発」

というとこまでいってます。


これはなぜか?

『ヒキ』

を考えたからです。


どんなに長い物語も、
こまかくわければ
1シーンごと、1エピソードごとの集合体です。

1シーンが終わったとき。
1エピソードが終わった時。

読んでくださってる方は、
集中して読んでくださってれば読んでくださってるほど、

「ほ」

と一息をつきます。

コーヒーをいれにいったりするかもしれません。

それはつまり、

『その瞬間は、
【続きを読んでもらえなくなる瞬間】
であるかもしれない』

ことを意味してもいます。


さほど集中してなく(≒おもしろくなく)読んでいて、
まぁ読み終えたときに続きを読むかどうか。

そのタイミングに、
例えばネットをはじめちゃったりテレビをつけたり、
友達が来ておもしろそうなマンガを貸してくれたりすると――
――もう相当に危ういです。

誰にとっても時間は有限ですので、
『続きを読む』より
魅力的ななにかに出会ってしまえば、
『続き』は永遠に読んでもらえなくなる可能性があります。


ならば、どうするか?

そのための工夫が、『ヒキ』です。


『ヒキ』とは一番単純にいってしまえば、

『続きが気になるとこでシーンを終わること』です。

次のシーンまでシーンを引っ張る、
そうすることで興味を引っ張るから『ヒキ』ですね。


例えば、

主人公に向かって拳銃の引き金が引かれる

(パンっ!)
「!!?」

などは、よいヒキです。

続きが気になるので、
早く読んでしまいたくなります。


かたや

ポテトチップスを食べ終わった主人公が
ベッドにねころがり、
「やることねーなー 寝よ寝よ」

といって寝てしまってシーン終わり。

などは、わくしの感覚ですと、
イマイチなヒキに思えます。

「寝て起きたあとへの期待」が、
まったくもって持てないからです。


このシーンは、ですので、例えば

「やることねーなー……
けど、明日は!」

といって、目覚まし時計と、スマホと腕時計、
合計みっつのタイマーをセットして、ふとんに潜って

「おおお、楽しみすぎて眠れない!!」

とかじたばたやる → 暗転(寝たことの表現)

――などという感じのシーンおわりにすれば、
「明日何があるの??」
という期待ももってもらえるので、さっきよりはよいヒキとなります。


つまり

『ヒキ』とは

【読み手になんらかの、
“続きを読まないと解消されない疑問”をあたえて、
 シーンを結ぶ】

ことです。

ラストシーン以外のすべてのシーン終わりでは、
かならず「ヒキ」を意識しましょう。

それだけで、最後まで読んでもらえる可能性は跳ね上がります。

(なお、ラストシーンではヒいてはダメです。
結びましょう。

ラストシーンにヒキがある=疑問解消されない部分が残る、と、
基本的にはその作品への満足度はダダ下がりすると思ってください)



*****************

さてさて。

わたくしの 「ぬいハチ物語」では、
前記のような形でヒイた感じのところを受けて、
すぐに、回想に入るストーリーラインです。

シーン3、シーン4のストーリーラインを再確認しましょう。

*****************

+シーン3
「その打ちひしがれた様子に
『おねーちゃんとたばなたさまにお願いしたのに!』
とわめくひとは。
ぬいハチロクはたなばたの日のことを思い出す。


+回想シーン(シーン3.5)
(回想)

無邪気なひとはの願い。
レールをつなげていきたいとのますたぁの願い。
それを見ながら、託したぬいハチロク自身の願い。

「39685が たすかりますように」

(回想終わり)

+シーン4
「おねーちゃん、だいじょうぶですか?」


と心配そうなひとはの声。
ぬいハチロク、自分の悲しさを抑え、
ひとはに話しかける」
「おもいだしてみましょう。
39685のためにわたくちたちががんばったこと。
それはきっと――
39685がわたくちたちに、伝え・遺してくれたことでもあるのですから」




*****************

回想シーン。

時系列を飛ばしてエピソードを扱えるので、
非常にラクに思えます。

が、逆からいえばそれは

『シーンの(時間的な)連続性を切っている』

ということにご注意ください。


つまり、回想のイリと終わりでも、
読み手の一息は発生し。

そこで「続く読まれなくなってしまう」
危険性が高いのです。

まして、シーンの連続性を切っているので、
ひといきの度合いも強く、
続きを読んでもらえない危険性はひときわに高まります。



さらに、
「時間系が飛ぶ」ということも、読み手の混乱の要因になってしまうので、
そこでも、続きを読んでもらえない危険性は跳ねあがります。

「ほ」と一息ついたとき。
「ん?」と混乱させてしまったとき。

その瞬間、読み手と作品世界とは離れています。

シーンつなぎ、回想の扱い。

そうした全てには、
『その距離をできるだけ小さくする』
ための工夫が必要であると、
できれば意識してみてください。


では、
「どうすれば離れる距離を小さくできるか」

この辺、めっちゃ難しいのですけど、
わたくしの感覚ですと

「回想が回想であると、明白にする」
(≒『ん?』という混乱の発生を最小限にする)

のが、まぁ、ベターかなぁ、と思っております。


最悪なのが、
「回想だと気づかず読み進み、
『ん?』となって読み戻って、
ああ、回想なのか、と気づく」
ようなパターンだとわたくしは思いますので、
それだけは、最低限防ぐようにと工夫します。


その工夫は、例えば
『視点を変える』ことです。

やってみますね。


*****************

<<視点を変えないで入る回想>>


「こんなの――こんなの――ひどいですよぉ」

声を、かけるなどできません。

わたくちも、そしてますたぁも。

「ひとは、おねがいたくさんしたのに――
おねえちゃんと、マスターと――
たなばたさまにおねがいしたのにっ!!!」

「七夕様……」

たしかに、願いを託しました。

七月七日。
大きな、大きな公園で――


***

「わぁ! おねーちゃん、これなんですかぁ!」

ひとはが笹を見上げます。

起動したばかりのひとはには、
世界の全てが、珍しくて仕方ないのでしょう。


――――――

でもって、

<<視点を変えて入る回想>>

「こんなの――こんなの――ひどいですよぉ」

声を、かけるなどできません。

わたくちも、そしてますたぁも。

「ひとは、おねがいたくさんしたのに――
おねえちゃんと、マスターと――
たなばたさまにおねがいしたのにっ!!!」

「七夕様……」

たしかに、願いを託しました。

七月七日。
大きな、大きな公園で――


***

「わぁ! おねーちゃん、これなんですかぁ!」

すごいです! ひとは、はじめて見るですよ!

赤とか黄色とかの紙が、
とがったはっぱのわさわさに、たくさんたくさんくっついてるですよ!


*****************

正直、一長一短かとも思うのです。

前者は
「すんなり読めるけど、
時間が移動してることを読み飛ばしてしまいやすい
(あとで「ん?」となる可能性が高い)」


後者は
「一瞬「ん?」となるけど、
そこで、『ああ、回想か』とわかってもらえる」


――特に、この例文は
「書き方」の中=非常に注意深く読んでいただけてる可能性が高いので

「前者でよくない?」と思われてしまいがちな気がします。


実は、この辺の判断は
「誰によんでほしいか」によって左右されるものです。


わたくしは、
(この、「書き方」ひとつをとっても)
『できるだけ広くの人に読んでいただきたい』
と思いますので、
「ぬいハチマスターたちに向ける」
と同時に
「そうでない方のことも多少は想定」しています。

ので、
「全員が一瞬つっかかるが、
 まず読み戻りは発生しないであろう後者」
の方が、好適であるかと判断します。


もちろん、読み手の集中力に期待できるのであれば、前者もありです。


もう少し広く説明しましょう。

ここでわたくしがご説明したいのは、
『回想シーンはこう書けばいい』という方法論ではございません。
(残念ながら、わたくしがそれを知りません)


1:かように回想シーンは難しいので、
  くれぐれも多用はしないように

2:その上で、回想シーンを扱うときには、
 『そこが読み手と物語の距離を話してしまう危険箇所』
 であることを意識し、注意・対策しよう

3:作劇・執筆もまた
 「何かを取ればなにかを手放す」
  であることを意識しよう。

  その上で、
  「取捨選択の基準」を
  「誰(どの層、範囲のひとたち)に読んでほしいか」に定めよう


――というあたりのことでございます。



現に、いま、この「ぬいハチ物語の書き方」は、
当初の想定読者であった、
『とにかくぬいハチ物語をかいてみたい!』
という方から、かなり離れてきている内容になっております。(すみません)

それは、書いてきたことで必要性が生じてきた
「実際にぬいハチ物語を書き進んでくださってる方が、
落とし穴に落ち、続くを書けなくなることを予防する」ための内容が、

当初の執筆目標
「ぬいハチ物語をとにかくかいてみたい! という方のサポートする」
ための内容より見比べたときに、
「複雑になってきてしまっている」ためです。

(なお、シンプルな構造のものがたりは
【その8:とにかく本文をかきはじめよう】までのノウハウで書けるかと思います。

ので、「別に回想とか僕のぬいハチ物語では扱わないんだけど……」という方におかれましては、
【ラストシーンを結ぼう】のとこまで 読み飛ばすなりしていただいても全く問題ございません
こと、あらためてお伝え申し上げます)


結果、
「ここまでむつかしくなるとついていけない!」
となってしまい、
『続きを読むのをやめてしまった』方も、少なからずいらっしゃるかもしれません。


そうであっても、わたくしは
「実際書き進んでいる方が、回想でひっかかって投げてしまうのは防ぎたい」と思いますので、
そこも覚悟の上で、比較的複雑な内容まで、踏み込んできているわけです。

「なにかをとれば、なにかをてばなす」

――それはどうしようもないことなので、
迷ったら、
『誰に一番伝えたいか』
を、モノサシにしてみると、きっと、いいです。



ここで、今日のワークです。


********************
【ワーク】

+ あなたが書いている「ぬいハチ物語」に
 (回想シーン)があるならば、
 それが「回想シーンだとすぐにわかるか」
 を確認し、ダメなら改善してみましょう。

 (回想シーンが無い)のなら、
 いままでのシーンエンドの部分が
 「ヒキ」になってるかを確認しましょう。

 ヒキがあまりに弱い場合は、
 できることならば改善してみましょう。


********************




と、いうわけで、
「回想シーンの扱い」「ヒキ」がどうか
に気をつけながら、
わたくしも、わたくしの
「ぬいハチ物語」(仮)の
ブラッシュアップ&続き執筆、がんばってみます!


****************************


ひとはが――泣いてしまいます。

「こんなの――こんなの――ひどいですよぉ」

声を、かけるなどできません。

わたくちも、そしてますたぁも。

「ひとは、おねがいたくさんしたのに――
おねえちゃんと、マスターと――
たなばたさまにおねがいしたのにっ!!!」

「七夕様……」

たしかに、願いを託しました。

七月七日。
大きな、大きな公園で――

* * *

「すごいですよ! きれいですよ!!!」

ひとは、はじめて見たですよ!

とがったはっぱのワサワサの中、
たくさんたくさん紙があるです!

赤、青、黄色、ピンクに、金色!!
それに字が書いてあるですよ!

「おねーちゃん、これなんですか!?」

「これはね? ひとは、
 『七夕飾り』というものです」

「たなばたかざり」

「七夕、という風習があるのです。
 織姫と、彦星という方々が昔いらっしゃいまして――」

・・・おねーちゃん、たなばたさまのことを教えてくれます。


「わおわお! ロマンチックですよ! 素敵ですよ!!
それに、お願いごとまで叶えてもらえるなんて、スゴすぎですよ!」

「叶うかどうかは、わかりません。
たくさんのたくさんの方々が、いっせいに、一夜に願いを託すのですから」

「わ、そりゃそーですよ。
おりひめさんとひこぼしさん、読んでるだけで夜があけちゃうですよ」

「うふふ、確かに」

「ならなら、見てもらえるよーに、めだつよーにたんざく書くですよ!
マスターもお手伝いしてですよ!!」

「目立つように……どのような短冊にしたいのですか?」

「あのですね、まず、おねーちゃんがおねーちゃんの
たんざく書くですよ!」

「わたくちが……では――
ん…………。――うん、これが、わたくちの願いです」

『39685が たすかりますように』

さすが、おねーちゃんですよ!
やっぱりひとはと、おねがいおんなじだったですよ!

「そしたら、ひとは、39685のお絵描きするですよ。
マスターは炭水車をお絵描きしてですよ」

「まぁ!」

おねーちゃん、わかったみたいです。
うれしいですよ! ひとは、がんばってお絵描きするですよ!

よいしょ――よいしょ!

「描けたですよ!!!」

「まぁ、本当にひとは器用で素晴らしいですね。
見事な39685です。ますたぁも――
うん! おみごとです。
力強くうつくしい炭水車であるかと存じます」

「そしたら、連結するですよ!」

「ええ」

へっへへー、
ひとはのたんざくが機関車。
マスターのたんざくが炭水車。
それで! おねーちゃんのたんざくがおねがいごと客車ですよ!

「マスター、これ、たかいとこ!
このワサワサの、いーちばん高いとこにくっつけてですよ!」

「お願いいたします、ますたぁ」

マスター、きゃたつを借りにいってくれたですよ!

「まぁ、危なっかしい。ね? ひとは」

「はいですよー!」

おねーちゃんとひとはできゃたつを支えて――

「わ――お――」

「もう少し……あ、そこです、ますたぁ!」

「ついたですよーーーーー!」

えへへへへ! たんざく列車、39685!
ワサワサの一番高いところで、
気持ちよさそーに走ってるですよ!!

「夜になったらお星様まで駆け上がって!
だからぜっーたい! 39685は助かるですよ!!!」


* * *

「ぜったい……ぜったい――
39685助かるって――
お願い、叶うって……思ったですよ」

「ひとは――」

思い出が、きっと鮮やかすぎるのでしょう。
悲しみが、幾重にも折り重なるのでしょう。

ひとはに、なんと声をかければいいものか――
わたくちも……わたくちだって――
これほど、こころが痛みますのに。

「――――」
「あ」

ますたぁが、囁かれます。
ひとはには、けれどとどいていないようです。

「ね? ひとは?」

ひとはの反応はありません。
けれど、言葉も、そして共感も届いております。

「ひとつ、ひとつ。
ひとつひとつを、大事に思い出していきましょう」

「おもい、だすって……ひぐっ――なにを、ですかぁ」

「わたくしたちのしてきたことを。
39685を助けるために、学んだことを。
それは、きっと――」

こくり、ひとはが頷きます。

大きく大きくかぶりをふって、
ぐしぐし、涙をふきとります。

「ひとは――がんばって思い出すですよ!!」


****************************

書けました!!!


書いて見て、
「視点かえることで、
別視点からの描写もできる」
(この場合は、ひとはの心情も描ける)ことに気が付きました。

ので
『回想シーンは視点変える』は、
その点でもアドバンテージあるかと思います!


で。
ここまでくれば、
わたくしの「ぬいハチ物語(仮)」は、
あと一回で書けちゃいそうかも! と思います!!

ので、次回の
「「ぬいハチ物語」の書き方」 では、
(できるかぎりは)
『物語を結ぼう』を、ご説明いたしたく思います!!
posted by 進行豹 at 10:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 製作日誌

2016年11月23日

「ぬいハチ物語」の書き方 〜その10:心理描写に気をつかおう〜

さて。
前回

http://hexaquarker.sblo.jp/article/177750542.html

までで、
シーン1、ないしは第一幕……
どう呼ぶにせよ、ともかくも!
あなたの「ぬいハチ物語」の、はじめの一章は描かれました。

あとはもう、
書いていって、ラストを綴じれば、おしまいです。

わたくしも1シーン/1日のペースで
そのようにしていこうと思っております。


が、単に書きつらねていっても
「書き方」にあまりならない(*注) ようにも思いますので、
今回からは一回につき一個ずつ、
「テクニックや注意点」について、
わたくしにわかる範囲でご説明していきたく思います。

まず最初は、
わたくしが結構おほめいただける
=多分、わたくしのストロングポイントのひとつである
「心理描写」についてです。


****************************

(注:

実はそんなこともなく。
毎日書いてればいつか書き終わる」
という事実を示すことは、なによりも大事であるのかもとも
内心では少し思っております。

  『
 「でもひどいんだよ」と彼はときに言う。
 「ぎこちなくて、品がなくて、とにかくひどいんだ」

 「かまわない」と私は答える。
 「ひどい台本を書けばいいじゃないか。
  とにかく書くんだ」
 』
 
(ローレンス・ブロックのベストセラー入門より)

――が結局、書くための最重要ポイントなのです<断言』)


****************************


さて。

わたくしが前回書いた部分のストーリーラインは


****************************


さいたま市中央区役所前。
39685にはブルーシートがかけられている。
「解体工事……はじまっちゃったですよ」
「そうね、ひとは」
ぬいハチロク、妹を案じるが、案外平気そう。
ますたぁを見れば、青い顔をしている。
「ますたぁ……」
「あ、帰るみたいですよ」
ひとは、ますたぁが開いた新幹線バッグに入る。
ぬいハチロク、その前に一瞬ふりかえり、
「さようなら、39685」と呟き。
新幹線バッグに入る。


****************************


でもって、実際に書いた

わたくしの「ぬいハチ物語」(仮)が、

****************************

「さいたま市はおバカですよー!
やりなおしを要求するですよー!!」
「ひとはっ!」

ひとはの口をふさぎます。

……ひとはの言葉は、わたくちの気持ち、
そっくりそのまま、同じですのに。

「もごもご、むぐむぐ」
「ああ」

苦しげな声に手を緩めれば、
ひとはは、泣きそうな声を出します。

「どうして、おねーちゃん止めるですか?
おねーちゃんが、一番かなしい……
39685の解体を、ひとはよりずっと、
つらいって、かなしいって、イヤだって思ってるのに」

――確かに、ひとはの言うとおりです。

つらく。かなしく。イヤだと、心は叫んでいます。

解体される、39685に今すぐかけよって、
ごめんなさいと、さよならと、泣ければどれほど楽でしょう。

けれど……

「叫んで、泣いて。なにかが変わるものならば、
わたくちも そうしているでしょう」

けれど、わたくちはぬいハチロク。

「過ぎてしまった過去より、未来を」

全ての妹たちの規範となるべき、
8620形8620。トップナンバー・ぬいレイルロオドです。

「同じ悲劇を繰り返さぬため、何ができるか――
そうするためにますたぁをお手伝いして支えることが、
わたくちの、今すべきことと信じます。
ですので、泣いている余裕など、ないのです」
「わ」

声が、カラリと晴れ渡ります。

「さすがはおねーちゃんですよ!」

泣いたカラスがもう笑う――ひとはは、本当に強い子です。

「聞いたですか? マスター。
止まってるヒマなんてないですよ!!」

音がするほど、ますたぁの背中が叩かれます。
静かに頷き、ますたぁは立ち上がります。

地べたへと――
ついてしまっていた過去を、振り落とそうとするかのように、
パンパンと勢いもよく、その両膝を叩きます。

(ちぃぃ――)

わたくちたちの移動手段、新幹線バッグが開かれます。

「おねーちゃん、おうちかえるですよ!」

ひとはは、すぐに飛び乗ります。
バッグの中から、早く早くと手招きされます。

「……39685」

彼女の屍衣となるであろう、ブルーシートへ振り向きます。
省略せずに、その名を呼びます。

「旧国鉄9600形蒸気機関車、39685号機」

ありがとうでも、ごめんなさいでも、さようならでも、
きっと、言葉は嘘になります。

思いの全てを示す言葉を、今のわたくちは持ちませんから。

「――あなたのことを、忘れません」

ですから、本当だけつぶやいて。

「おまたせしました、ひとは、ますたぁ」

わたくちもまた、新幹線バッグへと入ります。


****************************

です。


読み比べていただくと、

<ストーリーラインでは>

「さようなら、39685」

とつぶやいているぬいハチロクが、

<実際の物語上では>

***

省略せずに、その名を呼びます。

「旧国鉄9600形蒸気機関車、39685号機」

ありがとうでも、ごめんなさいでも、さようならでも、
きっと、言葉は嘘になります。

思いの全てを示す言葉を、今のわたくちは持ちませんから。

「――あなたのことを、忘れません」


***

と、つぶやいています。


この、「ふくらんだ部分」が、
ぬいハチロクのこころの動きを追った描写――

いわゆる、『心理描写』です。


心理描写を扱うとき、
わたくしは、以下の二点を基本的に守っております。。

1: 

『一人称視点の物語の場合は
「視点登場人物以外の心理は決して描写しない」』

→一人称では、視点登場人物が見て、感じられる
 ことしか描写できないので、

 他の登場人物の心理を、
 視点登場人物は
 「相手がそれを表現した場合に、類推する」
 という程度にしか理解し得ない。
 
 ので、一人称視点で、
 視点登場人物以外のキャラクターの
 心理描写的なことをしたいなら

 例:
 ますたぁは、机の下で、きつく拳を握りしめています

 とか

 例:
 ひとはがぺったりしゃがみこみます。
 壊れてしまったコンビネーションレンチの破断部を、
 何度も何度も、何度も何度もその手で撫ぜます

 ――など、

 「心理を表すような動作を、視点登場人物に見させる」

 的な一工夫が必要となります。





2:『三人称視点の場合は、 
  「どの登場人物の心理描写をしてもいい」』
 
  
→ただし「誰の心理描写なのか」を明示しないと
 読者は混乱しますし、
 複数の登場人物の心理描写を連続させてしまうのも、
 やはり読者を混乱させる一因となります。



で。
心理描写は、メリハリをつけやすい部分です。

どうでもいいことはどうでもいいので、
わたくしたちのこころはほとんど動かされません。

しかし、重要だったり、珍しかったりすることに触れると、
こころは大きく動きます。


登場人物にとっても、同じことです。
そして、
「物語の(特に主役級の)登場人物の
こころが大きく動く事件は、物語的にも重要」
であるケースが多いと思います。



ので。

「登場人物にとって重要なシーンの
心理をしっかり描写することは、
それ自体で物語のメリハリをつけることにも繋がる」

のです。


そうなってくると

「じゃあ、心理描写の上手なやり方を知りたいな」

となると思います。


その点について、わたくしは、個人的には――

『登場人物の気持ちになりきる』

以外には、やり方がないんじゃないかと思います。


で!!!!

この
「気持ちになりきる」を、
「感性でいく」部分と思ってしまうと、多分、相当にあやういです。

作者の感性は「作者の感性」であり、「キャラクターの感性」とは異なります。

「心理描写は感性でいける」

と思ってそれでやってしまうと、

「どの登場人物も同じ考え方をしている」

となり、
せっかくの心理描写が、物語にとってマイナスに働いてしまいかねません。


では、どうするか?
感性以外の、いったい何が「心理描写」の役にたつのか?

その答えは!
なんと、この「書き方」の一番最初――

『「ぬいハチ物語」の書き方 〜その1:キャラクターをたててみよう〜』

http://hexaquarker.sblo.jp/article/177635283.html

でつくった
「キャラクター設定」にございますのです!!


ぬいハチロクの場合は

***

【座右の銘】
・「安全が第一の使命」


【夢・目標】
・ 「ますたぁをしあわせにする」

・ 「全ての静態・動態保存機が、
   地域のひとたちに愛される存在になるように」

【コンプレックス】
・ ナイショ
 (コンプレックスがあると妹達に知られて、
  いらぬ心配をかけたくない)



【考え方のクセ】
・ 妹たちの規範になろうとする。
  ≒正しい、正しくないの、
  ぬいハチロクなりの行動基準にモノサシを
  もっていて、それに従って行動しようとする

***

というあたりが、今回の心理描写(を引き起こす事件)と密接に関連してくる部分です。



ここで、文例に戻ります。
その執筆時を、振り返ってみます。


***

「さようなら、39685」

とストーリーラインままを書こうとして、
わたくしは違和感を感じます。


『全ての静態・動態保存機が、
 地域のひとたちに愛される存在になるように』

という夢を抱いているぬいハチロクが、
自分で動いても助けようとした静態保存機の解体にあたり、
あっさり
「さようなら」
で、お別れすることができるでしょうか?


……とてもできない。と感じます。

「では、どう感じるのか?」

その疑問が、心理描写のみなもととなります。

「まず、名前を省略はしないだろう」

「さよならとはいえないだろう。
 単なる『お別れ』を認めることは、
 ぬいハチロクにはできないはずだ」

「おなじように、『ありがとう』でも、
 『ごめんなさい』でも、言葉が違う」


――これは、わたくしの思考ではありますが、
「ぬいハチロクがどう考えるか」を
必死になって追っているので、
かなり、「ぬいハチロクの思考」と重なる筈です。

ので、自信をもって、それを書いていきます。


///

省略せずに、その名を呼びます。

「旧国鉄9600形蒸気機関車、39685号機」

ありがとうでも、ごめんなさいでも、さようならでも、
きっと、言葉は嘘になります。

思いの全てを示す言葉を、今のわたくちは持ちませんから。

///

ここまで書いて、ぬいハチロクの心を追って。

そうしてやっと、
「ぬいハチロクが何をいうか」が、浮かんできます。


///

「――あなたのことを、忘れません」

///


これが、彼女の――ぬいハチロクの、やっと絞り出せる。
嘘の無い言葉でしょう。


***


――ことほどさように、
「心理描写」は
『想像力』と『理詰め』の共同作業です。

ので
「心理描写を書きたいキャラクター」については、
設定を、ある程度以上深めることをおすすめします。

「考え方のクセ」を設定しておくことは、
そのキャラクターの行動、思考の基準となるので、
とくに、わたくしオススメです。


****************************


ってなところで、本日のワークです。


****************************
【ワーク】

+ あなたの構成した
 「ぬいハチ物語」のシーン2を、
 心理描写に気を付けながら書いてみましょう! 

****************************

もちろん心理描写が不用なシーンなら
スルーして大丈夫です。

1シーン構成で
「もう書き終わっちゃった」
という方がいらっしゃいまたら、
念のため
「ラストシーンを書いて、物語を綴じよう」
の「書き方」までお待ちいただけますと幸いです。




というわけで、わたくしも「心理描写」に気を使い、
昨日の続き、
シーン2からシーン3までを書いていきます。


当該部分のストーリラインは


****************************

(2)

新幹線バッグ開かれる。
おうち。
ますたぁは帰宅するやいなやでPCを立ち上げる。
「おねーちゃん。マスター、なにやってるですか?」
「これは……署名サイトですね。
39685の解体阻止をお手伝いするため、
ますたぁが、お立ち上げになった署名の――」
「マスター、お詫び文書いてるですよ!」


(3)
「その打ちひしがれた様子に
『おねーちゃんとたばなたさまにお願いしたのに!』
とわめくひとは。
ぬいハチロクはたなばたの日のことを思い出す。

(回想)

無邪気なひとはの願い。
レールをつなげていきたいとのますたぁの願い。
それを見ながら、託したぬいハチロク自身の願い。

「39685が たすかりますように」

(回想終わり)

****************************


(ちぃぃ――)

「あ――」

ひかり。天井。
――おうちです。

わたくち、少し眠ってしまっていたようです。

「おうちに帰ってきたですよー」

ひとはが勢い良く、新幹線バッグを出ていきます。

「塊炭飴なめるですよ!
 おなかぺこぺこですよ!!」
「ひとは? その前にすることは?」
「いけないいけない! 
 てあらい・うがいをしなくちゃですよー!!」
 

(あら……)

洗面台に向かう途中で、
もう手洗いを済ませたらしいますたぁと
いれちがいます。

(厳しいお顔……無理からぬことではございますけれど)

「おねーちゃん、どーしたですか?」
「あ、ううん」

ひとはと並んで、てあらい・うがい。
おやつの棚から塊炭飴をとりだして、
ひとはにひとつ、いっとう大きなものを差し出します。

「あれ? おねーちゃん食べないですか?」
「わたくちは、いまは食欲が」
「無いときほど食べなきゃダメですよ!
 おなかぺこぺこじゃがんばれなくなっちゃうですよ!」
「……本当ね、ありがとう、ひとは」

ぽりぺろ、ごりごり。

塊炭飴を楽しむひとはをそのままに、
ますたぁのお仕事部屋へと向かいます。

「ますたぁ? おやつを持ってまいりました。
塊炭飴を、どうぞ、お召し上がりくださいまし」

……待っても、お返事がございません。

しかたないのでドアを開け、
ますたぁのお耳のすぐ近くから――

「あ――」




「ふぅーう、おなかぽんぽこですよー!
 あれ? おねーちゃん?」

これは……ああ――
ますたぁは、どんな思いで、この文章を――

「おねーちゃん、どーしたですか!!?」
「きゃっ!?」

ひとはの大声。
けれど、ますたぁは手を止めません。

「なになに、マスター、何書いてるですか?」

ひとはも、椅子に登ってきます。
ますたぁのなだらかな肩越しに、
パーソナルコンピウタアのディスプレイを覗き込みます。

「ええと――
『旧国鉄39685号機解体凍結署名へのご協力御礼と、
 お――お――』
 おねーちゃん、あの字、なんて読むですか?」
「おわび」
「おわび、お詫び!!?
 マスター、ごめんなさいってしてるですか!?」
「ええ、そう。……それが、ケジメというものです」

いけません。声が、ふるえてしまいます。
大事な、ことです。
ひとはに、きちんと伝えなく、ては。

「39685の、解体を、凍結、しようと、
 ますたぁ、の、呼びかけに、応じ、
 署名、を、おこころ、を……お寄せ、くださっ、た――」

引き締めようとするのですけれど、叶いません。
こころが、ことばが、乱れます。

「もう、これだけしか――
できること、など――
たった……これしか――無い、の――です――からっ」
「おねーちゃん!?」

いけません。
わたくちが泣くなど、いけません。

ひとはを――ますたぁを心配させます。

わたくちは、ますたぁを、支えるのです。

「ん――っ」

そうと思って、持ちこたえます。
……涙は、こぼさずすみました。

(よかった――)

わたくちがほとんど泣きそうだったと、
ますたぁには、きっと、気づかれずに済んでいます。

「おねえちゃん……」
「平気よ? ひとは。
 わたくち、すこし、言葉がつまっただけですから」

共感を、わたくちたちは有しています。
わたくちの感じた悲しみは、
ひとはにほとんど、伝わってしまっているのです。

「なぁんだ、そーだったですかぁ!
 おねーちゃんも、案外おっちょこちょいですよ!」

だからこそ、ひとはは明るく笑ってくれます。

わたくちのため、ますたぁのため。
ひとは自身の悲しみを、きっと、抑えて笑ってくれます。

「そうね、わたくち、おっちょこちょいです。
だって、ひとはの姉なのですから」
「なのですよ! って!? おねーちゃん、ひどいですよお!」

明るく笑って、ぽかぽかぽか。
ひとはが、わたくちをかるぅくぶちます。

(ひょい)

「あ――」
「マスターですよ!!」

だっこです。
ひとはとわたくちを抱きかかえ、
いいこいいこと、ケンカするなと、撫ぜてくれます。

「えへへぇ、気持ちいいですよ!」

いいこ、いいこと、何度も、何度も。
ますたぁご自身のおこころを、
そうすることで、慰めようとするかのように。

「えへへ……えへっ……へ」

ひとははひどく甘えます。
ぐりぐりと、ますたぁのお胸に、顔をおもいきりすりつけて――っ!!?

「ふ……ぇ……うう…………ぅぅぅ〜〜っ」
「ひとは――」

緊張が、きっと解けたのでしょう。
ひとはが――泣いてしまいます。

「こんなの――こんなの――ひどいですよぉ」

声を、かけるなどできません。

わたくちも、そしてますたぁも。

「ひとは、おねがいたくさんしたのに――
おねえちゃんと、マスターと――
たなばたさまにおねがいしたのにっ!!!」


****************************

書けました!!!

今回
「状況説明」が主体ですので、
心理描写は少ないですが

「視点登場人物=ぬいハチロクの心理」
「そうではない、ますたぁ、ひとはの心理」

それぞれ、直接的な・間接的な描写によって
書けているかと、自分自身では思います!

あと、
「ヒキ」の関係で、
ストーリーラインと書いたものとで
シーン終わりが変わっています。

この辺、次回の「書き方」で、
くわしくご説明したいです!!**

posted by 進行豹 at 09:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 製作日誌

2016年11月21日

「ぬいハチ物語」の書き方 〜その9:主役を立てよう〜

さて。
前回

http://hexaquarker.sblo.jp/article/177750542.html

いよいよ、あなたの「ぬいハチ物語」は書き出されました。

ここまで来たらもう本当に、

『今書いているところから、次のエピソードまでを
書くべきことを書いてつなげる』
(書くべきこと=そのシーンで書きたい・伝えたいこと)


『それをラストエピソードまで繰り返す』


『ラストシーンを書いて、物語を縫い止める』


を、やればいいだけです。


なのですが、

「書くべきことを上手にかけない」

というお悩みは。当然に発生してくるかと思います。


その悩みを解決する
「こうすればいいですよ」というお答えを提示することは、
大変にむつかしいです。

わたくしの個人的な経験からは、

「書きたいことを書く。
 キャラクターが動きたいとおりに書いてあげる」

「無理にふくらませようとしない。
 別にボリュームがありゃ偉いわけではない――
 というか、同じ面白さをもつのであれば、
 短い方が上等なので、書きたいことを書いて、
 次にスムーズにつながるのであれば、それで良い」

「書けないときは無理せず休む。
 休むうちに書きたくなったら、また書いてみる」

という感じのところを注意しつつ、時間をかければ、
まぁまぁ書ける可能性はあがるかなぁ? とか思います。


のですが、時には、
『書けない/書きづらい』の理由が、
明白に示されている場合もあります。


今回以降は、その理由を例示して、潰していきつつ、
わたくしの「ぬいハチ物語」(仮)の続きを書いていきたく思います。




さて。

わたくしが前回までに書いたぬいハチ物語は

********************

「さいたま市はおバカですよー!
やりなおしを要求するですよー!!」
「ひとはっ!」

ひとはの口をふさぎます。
……ひとはの言葉は、わたくちの気持ち、
そっくりそのまま、同じですのに。

「もごもご、むぐむぐ」
「ああ」

苦しげな声に手を緩めれば、
ひとはは、泣きそうな声を出します。

「どうして、おねーちゃん止めるですか?
おねーちゃんが、一番かなしい……
39685の解体を、ひとはよりずっと、
つらいって、かなしいって、イヤだって思ってるのに」

********************

です。


で、ストーリーラインは

********************

(1)

さいたま市中央区役所前。
39685にはブルーシートがかけられている。
「解体工事……はじまっちゃったですよ」
「そうね、ひとは」
ぬいハチロク、妹を案じるが、案外平気そう。
ますたぁを見れば、青い顔をしている。
「ますたぁ……」
「あ、帰るみたいですよ」
ひとは、ますたぁが開いた新幹線バッグに入る。
ぬいハチロク、その前に一瞬ふりかえり、
「さようなら、39685」と呟き。
新幹線バッグに入る。


(2)
新幹線バッグ開かれる。
おうち。
ますたぁは帰宅するやいなやでPCを立ち上げる。
「おねーちゃん。マスター、なにやってるですか?」
「これは……署名サイトですね。
39685の解体阻止をお手伝いするため、
ますたぁが、お立ち上げになった署名の――」
「マスター、お詫び文書いてるですよ!」


********************

となっているので、
今回は

(1)を書ききって、(2)につなげる。

そうしながら

「書けない/書きづらいの理由のひとつ」

である

『主役が立っていない』を、潰してみましょう。



一人称の物語だと、
「視点キャラクター=主役」であることが自明ですので、あまり
「主役がたたない」ということにはなりません。


ので、「前回書いたとこまで」を、
ひとまず、三人称で、あえて主役が立たないように、仕立て直してみます。


********************

「さいたま市はおバカですよー!
やりなおしを要求するですよー!!」

ナッパ服姿のぬいハチの
巨大なブルーシートに向けての、悲痛な叫び。

「ひとはっ!」

その口を、帝鉄コートの手がふさぐ。
コートの主は、やはりおなじく、ぬいハチだ。

「もごもご、むぐむぐ」
「ああ」

ひとは、と呼ばれたぬいハチの苦しげなうめきに気付き、
コートのぬいハチは手を緩める。

ひとはは、今にも泣き出しそうだ。

「どうして、おねーちゃん止めるですか?
おねーちゃんが、一番かなしい……
39685の解体を、ひとはよりずっと、
つらいって、かなしいって、イヤだって思ってるのに」

********************


――本来、わたくしの「ぬいハチ物語」の主役は
ぬいハチロクですのに、
↑の例だと、完全にひとはが主役になってしまっています。

こういう風に初めてしまうと、
話の軸をぬいハチロクに戻すことが難しくなり、
「続きを書けない」の原因の一つをつくってしまいかねません。

ので、上記を、
「ぬいハチロクという主役を立てる」形に書き直してみます。


********************

「さいたま市はおバカですよー!
やりなおしを要求するですよー!!」
「ひとはっ!」

悲痛な叫びをあげたぬいハチの口元を、
帝鉄コートを着たぬいハチが、静かに塞ぐ。

襟章。ブーツ。金モール。
見る人が見れば一目でわかる、仕立ての違い。

旧帝鉄8620形・トップナンバーぬいレイルロオド――
“ぬいハチロク”の、白手袋に包まれた手が。

「もごもご、むぐむぐ」
「ああ」

ひとは、と呼んだぬいハチの苦しげなうめきに気付き、
ぬいハチロクはその手を緩める。

ひとはの泣き出しそうな目が、
物問いたげに、ぬいハチロクへと向けられる。

「どうして、おねーちゃん止めるですか?
おねーちゃんが、一番かなしい……
39685の解体を、ひとはよりずっと、
つらいって、かなしいって、イヤだって思ってるのに」

********************


――これなら、ぬいハチロクが主役と明確にわかります。


上の例文と、下の例文。
大きな違いがいくつかあります。


『主役=ぬいハチロクの名前が出てこない/出て来る』

『動作の主体・文章の主語が ひとは/ぬいハチロク』

『ひとはの動作が、ひとはだけで完結する
 / ひとはの動作が、ぬいハチロクに向いている』

といったあたりです。

つまり、

1: 主役の名前を早期に
  (できればドラマチックに)明示する

2: 動作の主体、文章の主語をできるだけ主役にする

3: 脇役が話しかける相手、見る相手等、
  「脇役の行為の対象」を、できるだけ主役にする

――などの工夫で、主役は、主役として立ちます。



というわけで、今日のワークです。


********************
【ワーク】

+ あなたが書き始めた「ぬいハチ物語」の
 主役が立っているかを確認しましょう。、
 
 もしも主役が誰かがわかりづらいなら、
 エピソード2につなげるまでに
 「主役をたてる」ように工夫しながら、
 エピソード1を書ききってみましょう!」


********************


上記ワークに従いまして、
わたくしも、
「主役をたてつつ、エピソード1を書きき」ってみます。



********************

「さいたま市はおバカですよー!
やりなおしを要求するですよー!!」
「ひとはっ!」

ひとはの口をふさぎます。

……ひとはの言葉は、わたくちの気持ち、
そっくりそのまま、同じですのに。

「もごもご、むぐむぐ」
「ああ」

苦しげな声に手を緩めれば、
ひとはは、泣きそうな声を出します。

「どうして、おねーちゃん止めるですか?
おねーちゃんが、一番かなしい……
39685の解体を、ひとはよりずっと、
つらいって、かなしいって、イヤだって思ってるのに」

――確かに、ひとはの言うとおりです。

つらく。かなしく。イヤだと、心は叫んでいます。

解体される、39685に今すぐかけよって、
ごめんなさいと、さよならと、泣ければどれほど楽でしょう。

けれど……

「叫んで、泣いて。なにかが変わるものならば、
わたくちも そうしているでしょう」

けれど、わたくちはぬいハチロク。

「過ぎてしまった過去より、未来を」

全ての妹たちの規範となるべき、
8620形8620。トップナンバー・ぬいレイルロオドです。

「同じ悲劇を繰り返さぬため、何ができるか――
そうするためにますたぁをお手伝いして支えることが、
わたくちの、今すべきことと信じます。
ですので、泣いている余裕など、ないのです」
「わ」

声が、カラリと晴れ渡ります。

「さすがはおねーちゃんですよ!」

泣いたカラスがもう笑う――ひとはは、本当に強い子です。

「聞いたですか? マスター。
止まってるヒマなんてないですよ!!」

音がするほど、ますたぁの背中が叩かれます。
静かに頷き、ますたぁは立ち上がります。

地べたへと――
ついてしまっていた過去を、振り落とそうとするかのように、
パンパンと勢いもよく、その両膝を叩きます。

(ちぃぃ――)

わたくちたちの移動手段、新幹線バッグが開かれます。

「おねーちゃん、おうちかえるですよ!」

ひとはは、すぐに飛び乗ります。
バッグの中から、早く早くと手招きされます。

「……39685」

彼女の屍衣となるであろう、ブルーシートへ振り向きます。
省略せずに、その名を呼びます。

「旧国鉄9600形蒸気機関車、39685号機」

ありがとうでも、ごめんなさいでも、さようならでも、
きっと、言葉は嘘になります。

思いの全てを示す言葉を、今のわたくちは持ちませんから。

「――あなたのことを、忘れません」

ですから、本当だけつぶやいて。

「おまたせしました、ひとは、ますたぁ」

わたくちもまた、新幹線バッグへと入ります。

********************


――こんな感じでございましょうか?


主役を立てる、を自分では、多分できてるかと存じます!

&いくつか工夫もしてますので、それがどんなか、
次回にざざざと、ご説明したくも思います!!
posted by 進行豹 at 22:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 製作日誌

2016年11月20日

「ぬいハチ物語」の書き方 〜その8:とにかく本文を書き始めよう〜

さて。
前回

http://hexaquarker.sblo.jp/article/177735082.html


までで、ストーリーラインが整いました。


********************

ここまでできたら、あとはもう本文を書いていくだけなのです。
なのですが、フォロアーさんから

「プロットとストーリーラインの違い is 何」

というご質問をいただきましたので、
まずはそこだけ、ざざざとご説明申し上げます。


プロットとストーリーライン。

この両者は本質的に同じもので、
「要するに、お話のあらすじ」でございます。

それを、人(や、業界)によって、
自分たちにとって使いやすい用語として、
区別してつかっている

――というふうに、わたくしは解釈しております。

例えば、わたくしの場合は

『ストーリーライン』→自分だけがわかればいいもの

『プロット』→お打ち合わせ等のために提出するので、
       人様にもわかる形に
       ストーリーラインを含まらせ、
       整えたもの

であると解釈しております。


とはいえ。
プロットレベルまでストーリーラインをふくらませることで、
物語上の穴や見落としを見つけられる可能性もあがりますので、
本格的に書くのであれば、プロットは起こした方がいいです。

が、今回は

『ともかく、短くて簡単な最初のお話を
 一本かいてみましょー!』

という立ち位置での「書き方」のガイダンスですので、
そこまでは踏み込みません。

というか、その辺踏み込んできたい場合は、
作劇の入門書なり専門書なりを読んだほうがよいかとも思いますです。

さてさて。
本題に立ち返りましょう。

今日は、
『とにかく本文を書き始めよう』
とのことなので、最初の10行を書くことを目的にしてみましょう。

最初の10行で大事なことは
『物語を動かす』ことです。


まず、わたくしのストーリーラインの
1シーン目を再確認してみましょう。


(1)

さいたま市中央区役所前。
39685にはブルーシートがかけられている。
「解体工事……はじまっちゃったですよ」
「そうね、ひとは」
ぬいハチロク、妹を案じるが、案外平気そう。
ますたぁを見れば、青い顔をしている。
「ますたぁ……」
「あ、帰るみたいですよ」
ひとは、ますたぁが開いた新幹線バッグに入る。
ぬいハチロク、その前に一瞬ふりかえり、
「さようなら、39685」と呟き。
新幹線バッグに入る。



起きているイベントを小分けにすると

+ 場面紹介

+ 39685の解体が始まっていることの描写

+ ぬいハチロク登場

+ ひとは登場(ぬいハチロクの妹と明示)

+ (間接話法で)ますたぁ登場

+ 全員の帰宅


となります。


書くときも(ことに、書くことに慣れないうちは)
「エピソードを並べ替えてみよう(構成)」
の手順と同じように、

『そのシーンで書くことをこわけにし、
 カード式でならべかえて、
 よい書き順と、次のシーンへのつなげかたを模索する』

方法を試してもよいかもしれません。


「できるサイズに切り分ける」
「切り分けたものを、今の自分にできる手法でこなしていく」
――ことは、ジャンルを問わず、
入門者レベルのときには非常に重要なことかと認識しておりますので。


そして。
『どのような方針で並べ替えればいいか』
の指針のひとつが、さきほども書きました、

「10行以内でドラマを動かす」

と、なります。


「ドラマを動かす is どういうこと?」

というご疑問あるかと思いますので、
実例をもってご説明申し上げましょう。


********************

<ドラマが動かない、書き出しの10行>

さいたま市中央区役所。
そこには、39685という蒸気機関車が安置されている。
いわゆる、静態保存機である。

静態保存とは、
役割を終えた鉄道車両を、動かないまま――
いわば、一つの記念碑として保存することである。

文化遺産として、あるいは地域のシンボルとして……

保存されたときに託された願いが、
けれども形を変えずに保たれ続けることは、少ない。


********************

で、今度は

********************

<ドラマが動く、書き出しの10行>

「さいたま市はおバカですよー!
やりなおしを要求するですよー!!」
「ひとはっ!」

ひとはの口をふさぎます。
……ひとはの言葉は、わたくちの気持ち。
そっくりそのまま、同じですのに。

「もごもご、むぐむぐ」
「ああ」

苦しげな声に手を緩めれば、
ひとはは、泣きそうな声を出します。

「どうして、おねーちゃん止めるですか?
おねーちゃんが、一番かなしい……
39685の解体を、ひとはよりずっと、
つらいって、かなしいって、イヤだって思ってるのに」

********************


どっちの方が、続きが読みたくなるでしょうか?

もちろんこの辺、個人差あるかとも存じますが、
多分、アンケートを取れば、
65%以上の方が
『後者』と答えてくださるのではないかと思います。

100人の読者候補さんがいたとして、
65人と35人では、30人も違います。

なぜ、それほどに大きな差がついてしまうのか?

それは

『前者では、どんなお話が始まるのか
 さっぱりわからない』 からです。

前者でしているのは、
【静態保存機がどんなものか】という説明だけ。

その説明を終えてから、
じっくりとお話を繰り出そうとする構えです。


あなたがものすごいビッグネームで、
「この先生の書くものだったら絶対に面白い!」
と思ってくださる読者さんをガッツリかかえている
なら、そのやり方もありでしょう。

けれど、そうでは無いのであれば。

「何も起こらない」
と思われてしまったが最後、
あなたの物語の続きは、決して読んでもらえなくなります。



それに対して後者では、
例え、「ぬいハチ」等に対して全く予備知識が無い方がみてくださったとしても

「女の子らしきキャラクターが、
 公共自治体に向けて罵声をあびせている」

「それをとめているのも女の子で、
 最初の子の姉であるらしい」

「39685という謎の数字。
 解体、というショッキングな言葉が出てくる」

という

『興味を引きそうなポイント』(以下、フックと呼称)
が、3つもある」
冒頭部になっております。

フックは、多ければ多いほど基本的にはいいですし、
動きは、激しければ激しいほど基本的にはいいです。

フックの多さ、動きの激しさは、
そのまま「続きを読んでもらえる可能性の向上」につながります。


つまり、『ドラマが動く、書き出しの10行』
というのは、
『フックを読者にきちんと示している、書き出しの10行』
にほかなりません。

この「フック」ももちろん、人によって違います。

例えば、

『偉人伝を好んで読む人』



『探偵小説を好んで読む人』

それぞれに対して有効に機能するフックは、
かなり異なってくるでしょう。


ですが、我々が書く物語は
「ぬいハチ物語」ですので、
想定読者である「ぬいハチマスター」に対する
フックは、かなり見えやすいかと思います。

「あなたが面白い・素敵と感じる要素は、
他のぬいハチマスターにとっても
面白い・素敵なものである可能性は結構高い」
のです。

のでので、ここでは
『自分だったら惹きつけられてしまう要素』
を、フックであると定めまてしまいましょう!
 


と、いうところで本日のワークです


********************

【ワーク】

+ あなたが起こしたストーリーラインをもとに、
 あなたの「ぬいハチ物語」の、冒頭の10行を、

 「ドラマのある(フックが明快な」)10行」

 として書いて見ましょう。

 書けたら
「この冒頭部のフックは○○」と、
 付記してみましょう。

********************


文章的にエレガントであるとか、
そんなんは全然気にしなくていいです。

ともかく
「フックを示す(ドラマを動かす)」

ことだけに専念し、最初の10行を書いてみてください。


ここが上手くいけば、
最悪、途中が中だるみしても、読み続けてもらえる
可能性はあがります!

がんばってみてくださいましです!!
posted by 進行豹 at 22:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 製作日誌