さて。
前回
http://hexaquarker.sblo.jp/article/177782937.html
までで、
「書き方」のかなりの部分はお伝えできたかと思います。
ですので、
あとはもう、書いていって、ラストを綴じれば、おしまい
――なことに変わりありません。
のですが、
「ここをご説明しとかないと危ないかも」
と思う点がひとつございますので、
本日は、
「回想シーン」
についてご説明申し上げます。
わたくしの「ぬいハチ物語」(仮)は、
現在、シーン2(プラスちょっと)まで書き終わっております。
(プラスちょっと)とは何か。
まずはこの辺、実例でご説明申しあげます。
****************************
<<ストーリーラインでのシーン2からシーン3>>
2:
「新幹線バッグ開かれる。
おうち。
ますたぁは帰宅するやいなやでPCを立ち上げる。
「おねーちゃん。マスター、なにやってるですか?」
「これは……署名サイトですね。
39685の解体阻止をお手伝いするため、
ますたぁが、お立ち上げになった署名の――」
「マスター、お詫び文書いてるですよ!」
」
3:
「その打ちひしがれた様子に
『おねーちゃんとたばなたさまにお願いしたのに!』
とわめくひとは。
ぬいハチロクはたなばたの日のことを思い出す。
<<実際に書いたシーン2の結び>>
「ふ……ぇ……うう…………ぅぅぅ〜〜っ」
「ひとは――」
緊張が、きっと解けたのでしょう。
ひとはが――泣いてしまいます。
「こんなの――こんなの――ひどいですよぉ」
声を、かけるなどできません。
わたくちも、そしてますたぁも。
「ひとは、おねがいたくさんしたのに――
おねえちゃんと、マスターと――
たなばたさまにおねがいしたのにっ!!!」
**************************
――
ストーリーラインだと。
「お詫び文章を書いているとこ」
で終わってるのですが、
実際に書いたものは
「お詫び文章書いてるのを見る」
↓
「ひとは、泣き出す」
↓
「たなばたさまへの不満
(という形で、やりきれない感情が)爆発」
というとこまでいってます。
これはなぜか?
『ヒキ』
を考えたからです。
どんなに長い物語も、
こまかくわければ
1シーンごと、1エピソードごとの集合体です。
1シーンが終わったとき。
1エピソードが終わった時。
読んでくださってる方は、
集中して読んでくださってれば読んでくださってるほど、
「ほ」
と一息をつきます。
コーヒーをいれにいったりするかもしれません。
それはつまり、
『その瞬間は、
【続きを読んでもらえなくなる瞬間】
であるかもしれない』
ことを意味してもいます。
さほど集中してなく(≒おもしろくなく)読んでいて、
まぁ読み終えたときに続きを読むかどうか。
そのタイミングに、
例えばネットをはじめちゃったりテレビをつけたり、
友達が来ておもしろそうなマンガを貸してくれたりすると――
――もう相当に危ういです。
誰にとっても時間は有限ですので、
『続きを読む』より
魅力的ななにかに出会ってしまえば、
『続き』は永遠に読んでもらえなくなる可能性があります。
ならば、どうするか?
そのための工夫が、『ヒキ』です。
『ヒキ』とは一番単純にいってしまえば、
『続きが気になるとこでシーンを終わること』です。
次のシーンまでシーンを引っ張る、
そうすることで興味を引っ張るから『ヒキ』ですね。
例えば、
主人公に向かって拳銃の引き金が引かれる
(パンっ!)
「!!?」
などは、よいヒキです。
続きが気になるので、
早く読んでしまいたくなります。
かたや
ポテトチップスを食べ終わった主人公が
ベッドにねころがり、
「やることねーなー 寝よ寝よ」
といって寝てしまってシーン終わり。
などは、わくしの感覚ですと、
イマイチなヒキに思えます。
「寝て起きたあとへの期待」が、
まったくもって持てないからです。
このシーンは、ですので、例えば
「やることねーなー……
けど、明日は!」
といって、目覚まし時計と、スマホと腕時計、
合計みっつのタイマーをセットして、ふとんに潜って
「おおお、楽しみすぎて眠れない!!」
とかじたばたやる → 暗転(寝たことの表現)
――などという感じのシーンおわりにすれば、
「明日何があるの??」
という期待ももってもらえるので、さっきよりはよいヒキとなります。
つまり
『ヒキ』とは
【読み手になんらかの、
“続きを読まないと解消されない疑問”をあたえて、
シーンを結ぶ】
ことです。
ラストシーン以外のすべてのシーン終わりでは、
かならず「ヒキ」を意識しましょう。
それだけで、最後まで読んでもらえる可能性は跳ね上がります。
(なお、ラストシーンではヒいてはダメです。
結びましょう。
ラストシーンにヒキがある=疑問解消されない部分が残る、と、
基本的にはその作品への満足度はダダ下がりすると思ってください)
*****************
さてさて。
わたくしの 「ぬいハチ物語」では、
前記のような形でヒイた感じのところを受けて、
すぐに、回想に入るストーリーラインです。
シーン3、シーン4のストーリーラインを再確認しましょう。
*****************
+シーン3
「その打ちひしがれた様子に
『おねーちゃんとたばなたさまにお願いしたのに!』
とわめくひとは。
ぬいハチロクはたなばたの日のことを思い出す。
+回想シーン(シーン3.5)
(回想)
無邪気なひとはの願い。
レールをつなげていきたいとのますたぁの願い。
それを見ながら、託したぬいハチロク自身の願い。
「39685が たすかりますように」
(回想終わり)
+シーン4
「おねーちゃん、だいじょうぶですか?」
と心配そうなひとはの声。
ぬいハチロク、自分の悲しさを抑え、
ひとはに話しかける」
「おもいだしてみましょう。
39685のためにわたくちたちががんばったこと。
それはきっと――
39685がわたくちたちに、伝え・遺してくれたことでもあるのですから」
」
*****************
回想シーン。
時系列を飛ばしてエピソードを扱えるので、
非常にラクに思えます。
が、逆からいえばそれは
『シーンの(時間的な)連続性を切っている』
ということにご注意ください。
つまり、回想のイリと終わりでも、
読み手の一息は発生し。
そこで「続く読まれなくなってしまう」
危険性が高いのです。
まして、シーンの連続性を切っているので、
ひといきの度合いも強く、
続きを読んでもらえない危険性はひときわに高まります。
さらに、
「時間系が飛ぶ」ということも、読み手の混乱の要因になってしまうので、
そこでも、続きを読んでもらえない危険性は跳ねあがります。
「ほ」と一息ついたとき。
「ん?」と混乱させてしまったとき。
その瞬間、読み手と作品世界とは離れています。
シーンつなぎ、回想の扱い。
そうした全てには、
『その距離をできるだけ小さくする』
ための工夫が必要であると、
できれば意識してみてください。
では、
「どうすれば離れる距離を小さくできるか」
この辺、めっちゃ難しいのですけど、
わたくしの感覚ですと
「回想が回想であると、明白にする」
(≒『ん?』という混乱の発生を最小限にする)
のが、まぁ、ベターかなぁ、と思っております。
最悪なのが、
「回想だと気づかず読み進み、
『ん?』となって読み戻って、
ああ、回想なのか、と気づく」
ようなパターンだとわたくしは思いますので、
それだけは、最低限防ぐようにと工夫します。
その工夫は、例えば
『視点を変える』ことです。
やってみますね。
*****************
<<視点を変えないで入る回想>>
「こんなの――こんなの――ひどいですよぉ」
声を、かけるなどできません。
わたくちも、そしてますたぁも。
「ひとは、おねがいたくさんしたのに――
おねえちゃんと、マスターと――
たなばたさまにおねがいしたのにっ!!!」
「七夕様……」
たしかに、願いを託しました。
七月七日。
大きな、大きな公園で――
***
「わぁ! おねーちゃん、これなんですかぁ!」
ひとはが笹を見上げます。
起動したばかりのひとはには、
世界の全てが、珍しくて仕方ないのでしょう。
――――――
でもって、
<<視点を変えて入る回想>>
「こんなの――こんなの――ひどいですよぉ」
声を、かけるなどできません。
わたくちも、そしてますたぁも。
「ひとは、おねがいたくさんしたのに――
おねえちゃんと、マスターと――
たなばたさまにおねがいしたのにっ!!!」
「七夕様……」
たしかに、願いを託しました。
七月七日。
大きな、大きな公園で――
***
「わぁ! おねーちゃん、これなんですかぁ!」
すごいです! ひとは、はじめて見るですよ!
赤とか黄色とかの紙が、
とがったはっぱのわさわさに、たくさんたくさんくっついてるですよ!
*****************
正直、一長一短かとも思うのです。
前者は
「すんなり読めるけど、
時間が移動してることを読み飛ばしてしまいやすい
(あとで「ん?」となる可能性が高い)」
後者は
「一瞬「ん?」となるけど、
そこで、『ああ、回想か』とわかってもらえる」
――特に、この例文は
「書き方」の中=非常に注意深く読んでいただけてる可能性が高いので
「前者でよくない?」と思われてしまいがちな気がします。
実は、この辺の判断は
「誰によんでほしいか」によって左右されるものです。
わたくしは、
(この、「書き方」ひとつをとっても)
『できるだけ広くの人に読んでいただきたい』
と思いますので、
「ぬいハチマスターたちに向ける」
と同時に
「そうでない方のことも多少は想定」しています。
ので、
「全員が一瞬つっかかるが、
まず読み戻りは発生しないであろう後者」
の方が、好適であるかと判断します。
もちろん、読み手の集中力に期待できるのであれば、前者もありです。
もう少し広く説明しましょう。
ここでわたくしがご説明したいのは、
『回想シーンはこう書けばいい』という方法論ではございません。
(残念ながら、わたくしがそれを知りません)
1:かように回想シーンは難しいので、
くれぐれも多用はしないように
2:その上で、回想シーンを扱うときには、
『そこが読み手と物語の距離を話してしまう危険箇所』
であることを意識し、注意・対策しよう
3:作劇・執筆もまた
「何かを取ればなにかを手放す」
であることを意識しよう。
その上で、
「取捨選択の基準」を
「誰(どの層、範囲のひとたち)に読んでほしいか」に定めよう
――というあたりのことでございます。
現に、いま、この「ぬいハチ物語の書き方」は、
当初の想定読者であった、
『とにかくぬいハチ物語をかいてみたい!』
という方から、かなり離れてきている内容になっております。(すみません)
それは、書いてきたことで必要性が生じてきた
「実際にぬいハチ物語を書き進んでくださってる方が、
落とし穴に落ち、続くを書けなくなることを予防する」ための内容が、
当初の執筆目標
「ぬいハチ物語をとにかくかいてみたい! という方のサポートする」
ための内容より見比べたときに、
「複雑になってきてしまっている」ためです。
(なお、シンプルな構造のものがたりは
【その8:とにかく本文をかきはじめよう】までのノウハウで書けるかと思います。
ので、「別に回想とか僕のぬいハチ物語では扱わないんだけど……」という方におかれましては、
【ラストシーンを結ぼう】のとこまで 読み飛ばすなりしていただいても全く問題ございません
こと、あらためてお伝え申し上げます)
結果、
「ここまでむつかしくなるとついていけない!」
となってしまい、
『続きを読むのをやめてしまった』方も、少なからずいらっしゃるかもしれません。
そうであっても、わたくしは
「実際書き進んでいる方が、回想でひっかかって投げてしまうのは防ぎたい」と思いますので、
そこも覚悟の上で、比較的複雑な内容まで、踏み込んできているわけです。
「なにかをとれば、なにかをてばなす」
――それはどうしようもないことなので、
迷ったら、
『誰に一番伝えたいか』
を、モノサシにしてみると、きっと、いいです。
ここで、今日のワークです。
********************
【ワーク】
+ あなたが書いている「ぬいハチ物語」に
(回想シーン)があるならば、
それが「回想シーンだとすぐにわかるか」
を確認し、ダメなら改善してみましょう。
(回想シーンが無い)のなら、
いままでのシーンエンドの部分が
「ヒキ」になってるかを確認しましょう。
ヒキがあまりに弱い場合は、
できることならば改善してみましょう。
********************
と、いうわけで、
「回想シーンの扱い」「ヒキ」がどうか
に気をつけながら、
わたくしも、わたくしの
「ぬいハチ物語」(仮)の
ブラッシュアップ&続き執筆、がんばってみます!
****************************
ひとはが――泣いてしまいます。
「こんなの――こんなの――ひどいですよぉ」
声を、かけるなどできません。
わたくちも、そしてますたぁも。
「ひとは、おねがいたくさんしたのに――
おねえちゃんと、マスターと――
たなばたさまにおねがいしたのにっ!!!」
「七夕様……」
たしかに、願いを託しました。
七月七日。
大きな、大きな公園で――
* * *
「すごいですよ! きれいですよ!!!」
ひとは、はじめて見たですよ!
とがったはっぱのワサワサの中、
たくさんたくさん紙があるです!
赤、青、黄色、ピンクに、金色!!
それに字が書いてあるですよ!
「おねーちゃん、これなんですか!?」
「これはね? ひとは、
『七夕飾り』というものです」
「たなばたかざり」
「七夕、という風習があるのです。
織姫と、彦星という方々が昔いらっしゃいまして――」
・・・おねーちゃん、たなばたさまのことを教えてくれます。
「わおわお! ロマンチックですよ! 素敵ですよ!!
それに、お願いごとまで叶えてもらえるなんて、スゴすぎですよ!」
「叶うかどうかは、わかりません。
たくさんのたくさんの方々が、いっせいに、一夜に願いを託すのですから」
「わ、そりゃそーですよ。
おりひめさんとひこぼしさん、読んでるだけで夜があけちゃうですよ」
「うふふ、確かに」
「ならなら、見てもらえるよーに、めだつよーにたんざく書くですよ!
マスターもお手伝いしてですよ!!」
「目立つように……どのような短冊にしたいのですか?」
「あのですね、まず、おねーちゃんがおねーちゃんの
たんざく書くですよ!」
「わたくちが……では――
ん…………。――うん、これが、わたくちの願いです」
『39685が たすかりますように』
さすが、おねーちゃんですよ!
やっぱりひとはと、おねがいおんなじだったですよ!
「そしたら、ひとは、39685のお絵描きするですよ。
マスターは炭水車をお絵描きしてですよ」
「まぁ!」
おねーちゃん、わかったみたいです。
うれしいですよ! ひとは、がんばってお絵描きするですよ!
よいしょ――よいしょ!
「描けたですよ!!!」
「まぁ、本当にひとは器用で素晴らしいですね。
見事な39685です。ますたぁも――
うん! おみごとです。
力強くうつくしい炭水車であるかと存じます」
「そしたら、連結するですよ!」
「ええ」
へっへへー、
ひとはのたんざくが機関車。
マスターのたんざくが炭水車。
それで! おねーちゃんのたんざくがおねがいごと客車ですよ!
「マスター、これ、たかいとこ!
このワサワサの、いーちばん高いとこにくっつけてですよ!」
「お願いいたします、ますたぁ」
マスター、きゃたつを借りにいってくれたですよ!
「まぁ、危なっかしい。ね? ひとは」
「はいですよー!」
おねーちゃんとひとはできゃたつを支えて――
「わ――お――」
「もう少し……あ、そこです、ますたぁ!」
「ついたですよーーーーー!」
えへへへへ! たんざく列車、39685!
ワサワサの一番高いところで、
気持ちよさそーに走ってるですよ!!
「夜になったらお星様まで駆け上がって!
だからぜっーたい! 39685は助かるですよ!!!」
* * *
「ぜったい……ぜったい――
39685助かるって――
お願い、叶うって……思ったですよ」
「ひとは――」
思い出が、きっと鮮やかすぎるのでしょう。
悲しみが、幾重にも折り重なるのでしょう。
ひとはに、なんと声をかければいいものか――
わたくちも……わたくちだって――
これほど、こころが痛みますのに。
「――――」
「あ」
ますたぁが、囁かれます。
ひとはには、けれどとどいていないようです。
「ね? ひとは?」
ひとはの反応はありません。
けれど、言葉も、そして共感も届いております。
「ひとつ、ひとつ。
ひとつひとつを、大事に思い出していきましょう」
「おもい、だすって……ひぐっ――なにを、ですかぁ」
「わたくしたちのしてきたことを。
39685を助けるために、学んだことを。
それは、きっと――」
こくり、ひとはが頷きます。
大きく大きくかぶりをふって、
ぐしぐし、涙をふきとります。
「ひとは――がんばって思い出すですよ!!」
****************************
書けました!!!
書いて見て、
「視点かえることで、
別視点からの描写もできる」
(この場合は、ひとはの心情も描ける)ことに気が付きました。
ので
『回想シーンは視点変える』は、
その点でもアドバンテージあるかと思います!
で。
ここまでくれば、
わたくしの「ぬいハチ物語(仮)」は、
あと一回で書けちゃいそうかも! と思います!!
ので、次回の
「「ぬいハチ物語」の書き方」 では、
(できるかぎりは)
『物語を結ぼう』を、ご説明いたしたく思います!!