さて。
前回
http://hexaquarker.sblo.jp/article/177804954.html
までで、
「書き方」の基本的なとこはご説明終わってます。
が、書けば書くほど、
「あー、ここもご説明しなきゃ」
と思うのがこのテのものの怖いところで。
それを延々やってしまうと、
いつまでたっても終わらないというハメに陥ってしまいます。
ので、
今回「物語を結ぼう」。
次回「ブラッシュアップで仕上げよう!」
の、残り二回で、「ぬいハチ物語の書き方」きっちり結ぼうと思っております。
のですが――「これだけはご説明しとかねば!」ということを積み残してると、
プレイヤーさんの「ぬいハチ物語」拝読してて(ありがとうございます!)気付きましたので、
まずはそこ、ざざざといかせていただきます。
今回の「これだけはご説明しとかねば!」は
『行動(動作)で描写する』ということです。
例えば、めっちゃ悔しいシーンがあるとします。
それを、心理だけで描写してみましょう、
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ますたぁの動きが止まります。
その目が、一点に注がれています。
―― 解体工事日程 ――
看板にかかれている文字は、
すぐには、意味になりません。
「わ……解体……決まっちゃったですかぁ」
ひとはの、どこか呆けたような声が聞こえます。
解体、決定。
39685が解体される――
その形が、歴史が、永遠に失われてしまう。
……ああ、なんと。
なんと、口惜しいことでしょう。
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では、これに行動(動作)を交えて描写します。
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(ガンっ!!!!)
「!!!? ますたぁ!?」
ますたぁが、何かを――
ああ、わたくちのますたぁが。
あの温和な方が――殴っています。立て看板を。
「ますたぁ、おやめください!
何があったか存じませんが、
立て看板に、決して罪はございません!」
ますたぁが、ハッと息を飲みます。
飲まれた息が、ぎりぎりと――歯ぎしりの音に代わります。
「わ……解体……決まっちゃったですかぁ」
―― 解体工事日程 ――
立て看板に書かれた文字を、
その声で、わたくちもようやく、とらえます。
ぽふん。
軽い、音。
瞳を向ければ、ひとはがしゃがみこんでしまっています。
「ひとは……お尻がよごれますよ?」
手を、差し伸べます。
その手が、ぐにゃりと歪みます。
「おねえちゃん……おねえちゃん、ないたら――
ひとはも――がまん、できないですよぉ」
「ふっ――くっ――」
泣いて、泣いてなぞ、おりませぬ。
泣いたら、認めたことになります。
諦めてしまうことになります。
36985が、この世界から失われる。
そのようなこと、泣いて――認めるなどできません。
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いかがでしょうか?
前者と比べ、
「動作」を交えた後者は、
随分と感情が濃密に伝わってくるのではないかと思います。
行動。仕草。息遣い。
あるいは温度。匂い。てざわり。
『思考』が示し得ぬ情報を、行動・動作は示すことができます。
こうした情報――体感――の描写は、
そのシーンに臨場感を与え、
また、読み手の共感を促すこともできるでしょう。
『ぬいハチ物語』は、その性質上、
「想像だけで描かれることが少ない。
マスターとぬいハチちゃんとで行ってきた場所、
経験してきたことがベースになって描かれる」
――そうした物語であるケースが多いかと想像します。
ので、せっかくのその体験を活かしましょう。
「思考」だけで物語をすすめるのではなく、
そのときに感じた手触りを、嗅いだ匂いを、
あるいは失敗の痛みさえをも、そのまま文字に落としましょう。
できるかぎりに細部まで、しつこく追って、描写しましょう。
そうすることで、あなたの「ぬいハチ物語」は、必ずや、体温を持って脈動するものとなります。
(のでので、もしお気がむいたら、 今まで書いてきた部分をみなおし、
「行動に置き換えられる描写」がないかを探してみて、実際に置き換えてみてください!)
で。
今回、わたくしは
わたくしの「ぬいハチ物語」(仮)を結びます。
ので、今かけてるとこからラストまでのストーリーラインを確認しましょう。
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A「おもいだしてみましょう。
39685のためにわたくちたちががんばったこと。
それはきっと――
39685がわたくちたちに、伝え・遺してくれたことでもあるのですから」
B「
「がんばったこと――
整備の勉強しに、くまがやにいったですよ!」
「そうですね、D51 140号機さんの整備のお手伝いにいきましたね」
「動輪ピカピカにするの、楽しかったですよー!」
D51 140の、48650の整備体験について話すうち、
ひとは、どんどん元気を取り戻し、にこにこ笑顔になっていく。
「おねーちゃんもマスターもまっくろになって、
みんなでわいわい整備して、とーっても楽しかったですよ!」
「ああ」
その言葉にぬいハチロク気づく
「そうですね。本当に――楽しかった」
」
C「ぬいハチロク、マスターの丸まっている背中を叩く。
「笑ってください。ますたぁ」
「静態保存をされ続けるこ。
レールを、つないでもらえるこ。
そうしたこたちは、いつだって、
みんなの笑顔の中にあります」
「ですから、ますたぁ。笑ってください。
いま泣いているこのところに、
きっと、笑顔を届けて、ひろげてあげてください」
「ますたぁにはそれができると。
他のどなたが信じなくとも、
わたくしは、必ず、信じつづけます」
「ひとはもですよー!」
ますたぁ、うなずき、背筋を伸ばす。
PCを立ち上げ、なにかを書き始める。
「おねーちゃん、あれ、なんですか?
ますたぁ、なに書いてるですか?」
「わたくちにもわかりません。
けれども、きっと――
レールをつなぐ、そのための物語です」
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A までが書いてある部分ですね。
で、今日は、
B、Cを書くわけです。
この際、注意するところはただ一点
『C(ラストシーン)を明確にして、
B(ラストシーン前)を、そこにつなげるように書く』
のみです。
物語では、ラストシーン――オチ、結び方――が、
『ファーストシーンの次』に重要となります。
ファーストシーンが最重要なのは、
「そこがしょぼいと続きを読んでもらえないから」。
どんなに素晴らしいラストシーンが待っていようと、
ファーストシーンで「つまんなそう」と投げられてしまえば、
完全な無意味となってしまうからです。
逆にいえば、
「それほど重要なファーストシーンと比較されるほど、ラストシーンは重要」です。
うっかりやってしまいがちなパターンとして、
「最初から順番に書いていって、
書くこと全部かいたから、おしまいにする」
というのがあります。
これも、正しいは正しいです。
正しいは正しいのですが――もったいないです!!!
ラストシーンがぼんやりしてると、
今まで読んできたお話全部が、ぼんやりします。
のでので、
ラストシーンは
『そのお話のテーマ(何を書きたかったのか)を思い出す』
『そのテーマを、誰に伝えたいのかを、いまいちど考える』
『そしたら、
そのターゲット(伝えたい相手) に突き刺すことだけを考えて、
ラストシーン。 ラストの一行。 物語の結び方を考える』
という順番で作ってみることをおすすめします。
やってみましょう。
わたくしの場合は
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<<何を書きたいか>>
「『静態保存機の現状について書きたい』ので、
『静態保存機の現状改善を目指す、ぬいハチロクの成長物語』」にする。』
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というテーマで書き始めました。
ですので、ターゲットは
「静態保存に興味を保つ方」
・・・と思ってしまいそうですが、
この、「ぬいハチ物語」(仮)は、
「ぬいハチ物語を書いてみたい人」のために書いております、
「ぬいハチ物語の書き方」の一部――
つまりは、ターゲットもそうした方々――
となりますので、そこをしっかりと思い出します。
その人達に刺さる。
こころに残る、印象に残していただける可能性が高そうなラスト一行――
・・・・・・うん。
まぁ、これでいけるのではないか、というのが思いつきました。
(どんなのを どんな思考方法でが思いついたかは、一番ラストにご説明申し上げます)
と、いうところまで説明しおえて、
本日のワークです。
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【ワーク】
+ あなたが書いている「ぬいハチ物語」のラストシーンを
「どんなテーマでかいているか」
「そのテーマを伝えたい相手は誰か」
「どうやったらその相手のこころに残るか」
――を考えながら、決めてみましょう。
決まったら、そこに上手につなげることを意識して、ラストシーン前を書いてみましょう。
できることなら、ラストシーン前までをもつなげてしまい、物語を結んでしまいましょう。
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と、いうことで、
わたくしもそのように、ラストシーンまで書ききって、
「ぬいハチ物語」(仮)を結びますね!
参ります!!
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「ひとつ、ひとつ。
ひとつひとつを、大事に思い出していきましょう」
「おもい、だすって……ひぐっ――なにを、ですかぁ」
「わたくしたちのしてきたことを。
39685を助けるために、学んだことを。
それは、きっと――」
こくり、ひとはが頷きます。
大きく大きくかぶりをふって、
ぐしぐし、涙をふきとります。
「ひとは――がんばって思い出すですよ!!」
……けれど、ひとはは、なかなか言葉を出せません。
ときおり、おもいだしたようにしゃくりあげ、
あふれそうになる涙をぬぐい――
時間が、さらさら、こぼれていきます。
「あ」
ますたぁが、部屋を出ていってしまわれます。
ひとはががくりと、うなだれます。
どう、しましょう。
なぐさめの声をかけようにも、
わたくちも・・・きっと、泣き声になってしまいます。
(ひとは)
小声で、試してみるけれど、
やはり、その声はひどく、ふるえています。
(ふわっ)
「え?」
ひとはが、おどろいて顔をあげます。
甘いにおい。
ココアのにおい。
「これ、溶かすやつじゃない――
ねりねりってするココアですよぉ」
マスターのおとっときの、ココアパウダー。
それを使ってていねいに いれられたココアがみっつ、
それぞれのマグカップの中、仲良くトレーに並んでいます。
「ほぅ……」
あたたかい。あまい。おいしい。
ココアをのどに落とすと同時に、
そんな単純な幸せで、わたくちの中綿がみたされます。
「あったかくって、おいしいですよ。
あのときと、ちょうど反対ですよ!」
うるおって、ぬくもって。
ひとはの言葉が、ようやくほころびはじめます。
「あのとき?」
「熊谷のデゴイチさんの動輪を、みんななでみがいたときですよ!!」
「ああ――」
あれは、夏の始まりでした。
動輪はあまりに大きくて、古い塗装はしつこくて。
剥がすため、何度も何度もスクレイパーを動かして。
「ハンマーでがんがんがんってやって、
ひとは、あつくてあつくてくらくらしたですよ」
「ああ、そうでした。
うふふ、本当に反対でしたね――あの麦茶!」
「きぃんてつめたくてきゅーってして、
かわいてるのがもどる感じで、おいしかったですよ!」
飲み干したマグをトレーに戻し、ひとはの両手が、動き出します。
「それから、三次にいったときもおいしかったですよ!」
「まぁ、飲み物のおはなしばかり」
「三次のときは食べ物ですよ! 唐揚げたくさん!
ハンバーグもあって、ぶどうもめちゃくちゃおいしかったですよ!」
「ああ、ピオオネでしたか――
あれは確かに、宝石のようなぶどうでしたね」
「46850さんとたくさんあそんで、みんなで整備体験して、
マスター、蒸気分配弁まで分解して組み立てして!」
「そのあと、みなさまでの会食でしたね。
いろいろなことをお話し合いになられて」
「みんなにこにこわらってたですよ!
とっても、とーっても楽しかったですよ!」
「ああ――」
そうでした。
わたくしの目にも、浮かびます。
耳には、笑い声が思い出されます。
「きっと……それだけのことなのですね」
ますたぁに。ひとはに。
そうして、わたくち自身に。
とどくよう、わすれないよう、
いまの気持ちを、ことばにします。
「大切に保存されるこのまわりには、笑顔がある。
笑顔の中心になれるこは、みんなが大事に、保存する」
「あ」
ひとはが、ますたぁが息を飲みます。
ゆっくり――静かにうなずかれます。
「そのこを、笑顔の中心に。
みんなが集まり、笑い合える――
そうした環境を、もしもつくることができたなら」
「解体なんて、絶対されなくなりますよ!!
おともだちのこと、こわすだなんてないですよ!!」
「おともだち――」
それは、とても簡単なことで。
だからこそ、とても、むつかしいこと。
「保存車両を、地域のみなさまの、おともだちに」
「わ!?」
ますたぁが急に立ち上がられます。
パアソナルコンピウタアを立ち上げて、キイボオドを叩きはじめます。
「マスター、またおわび文ですか?」
「いいえ、ちがいます。ちがいますよ、ひとは」
ますたぁが何をお書きになるか、わたくちにはまだ、わかりません。
けれどもひとつ。
たったひとつは、確かなこととわかります。
「ますたぁがお書きになっているのは、
きっと、みなさまにつたえるための文章です」
「つたえる――なにをですか?」
「ひとはのねがい、わたくちのねがい。
そうしてきっと、ますたぁご自身のものでもある――ねがい」
保存車両を、地域のみなさまのおともだちに。
そうするために、そうなるために、
していけることを、探すため――
「あ!」
ひとはの声。
つられてみれば、ディスプレイには、短い文字列。
「『物語』って書いてあるですよ!」
それは、タイトル。
ねがいを、どなたかに届けるための。
きっと叶えていくための、一番最初の――物語の。
―― 「ぬいハチ物語」 (仮) ――
;おしまい
******************************
結びました!
自作解説はほんっとにまったく、心の底から好きではないのですが
(なぜって、読んでくださる方の誤読の自由を極端に縛ってしまうから)
今回ばかりは「書き方」ということでございますので、
ラスト一行、どう決めたのかをご説明申し上げます。
まず、テーマは
「『静態保存機の現状について書きたい』ので、
『静態保存機の現状改善を目指す、ぬいハチロクの成長物語』」にする。』
でした。
で、対象読者さんが
「ぬいハチ物語を書いてみたいひと」
――これは、この時点でミスマッチです。
(テーマに対し、対象読者が「静態保存機に興味がある人」なら、ベストマッチです)
ミスマッチである以上、すりあわせなければなりません。
ので、
”「ぬいハチ物語を書いてみたい人」の興味がどこにあるか”
を、あらためて考えます。
これはもちろん
「物語の書き方」であり
それは「物語がどう書かれるか」であるとも、言い換えられます。
ここまで気づけば、あとは簡単です。
「『静態保存機の現状について書きたい』ので、
『静態保存機の現状改善を目指す、ぬいハチロクの成長物語』」』
の着地点は
「静態保存機の現状に対しての改善案を、
ぬいハチロクが、ぬいハチロクの気付きとして思いつく」
ことです。
このラストエピソードを、
「物語がどうかかれるか」
に結びつければいいわけですから――
『ぬいハチロクの気づきをもとに、ますたぁが物語を書き始める』
というラストシーンが、好適であるように思います。
ので、「ぬいハチ物語」(仮)という、
ここまでわたくしが書き続けてきた物語のタイトルを、
そのままラスト一行にもってくる。
・・・という風に、わたくしは考えました次第です。
少しでもご参考になりましたらうれしいです!
と、いうとこまでで、
「ぬいハチ物語」(仮)
はひとまず書き上がりました。
しかし「ひとまず描き上がったもの」は『完成原稿』ではございません。
所詮、「初稿」にすぎないのです。
初稿には、穴もミスも、恐らくたくさんございます。
ですので、次回、
「ブラッシュアップで仕上げよう」で、
初稿を完成稿にともっていき、この「書き方」を結んでしまおうと思います!
ご期待ください!!