さて。
前回
http://hexaquarker.sblo.jp/article/177750542.html
いよいよ、あなたの「ぬいハチ物語」は書き出されました。
ここまで来たらもう本当に、
『今書いているところから、次のエピソードまでを
書くべきことを書いてつなげる』
(書くべきこと=そのシーンで書きたい・伝えたいこと)
『それをラストエピソードまで繰り返す』
『ラストシーンを書いて、物語を縫い止める』
を、やればいいだけです。
なのですが、
「書くべきことを上手にかけない」
というお悩みは。当然に発生してくるかと思います。
その悩みを解決する
「こうすればいいですよ」というお答えを提示することは、
大変にむつかしいです。
わたくしの個人的な経験からは、
「書きたいことを書く。
キャラクターが動きたいとおりに書いてあげる」
「無理にふくらませようとしない。
別にボリュームがありゃ偉いわけではない――
というか、同じ面白さをもつのであれば、
短い方が上等なので、書きたいことを書いて、
次にスムーズにつながるのであれば、それで良い」
「書けないときは無理せず休む。
休むうちに書きたくなったら、また書いてみる」
という感じのところを注意しつつ、時間をかければ、
まぁまぁ書ける可能性はあがるかなぁ? とか思います。
のですが、時には、
『書けない/書きづらい』の理由が、
明白に示されている場合もあります。
今回以降は、その理由を例示して、潰していきつつ、
わたくしの「ぬいハチ物語」(仮)の続きを書いていきたく思います。
さて。
わたくしが前回までに書いたぬいハチ物語は
********************
「さいたま市はおバカですよー!
やりなおしを要求するですよー!!」
「ひとはっ!」
ひとはの口をふさぎます。
……ひとはの言葉は、わたくちの気持ち、
そっくりそのまま、同じですのに。
「もごもご、むぐむぐ」
「ああ」
苦しげな声に手を緩めれば、
ひとはは、泣きそうな声を出します。
「どうして、おねーちゃん止めるですか?
おねーちゃんが、一番かなしい……
39685の解体を、ひとはよりずっと、
つらいって、かなしいって、イヤだって思ってるのに」
********************
です。
で、ストーリーラインは
********************
(1)
さいたま市中央区役所前。
39685にはブルーシートがかけられている。
「解体工事……はじまっちゃったですよ」
「そうね、ひとは」
ぬいハチロク、妹を案じるが、案外平気そう。
ますたぁを見れば、青い顔をしている。
「ますたぁ……」
「あ、帰るみたいですよ」
ひとは、ますたぁが開いた新幹線バッグに入る。
ぬいハチロク、その前に一瞬ふりかえり、
「さようなら、39685」と呟き。
新幹線バッグに入る。
(2)
新幹線バッグ開かれる。
おうち。
ますたぁは帰宅するやいなやでPCを立ち上げる。
「おねーちゃん。マスター、なにやってるですか?」
「これは……署名サイトですね。
39685の解体阻止をお手伝いするため、
ますたぁが、お立ち上げになった署名の――」
「マスター、お詫び文書いてるですよ!」
********************
となっているので、
今回は
(1)を書ききって、(2)につなげる。
そうしながら
「書けない/書きづらいの理由のひとつ」
である
『主役が立っていない』を、潰してみましょう。
一人称の物語だと、
「視点キャラクター=主役」であることが自明ですので、あまり
「主役がたたない」ということにはなりません。
ので、「前回書いたとこまで」を、
ひとまず、三人称で、あえて主役が立たないように、仕立て直してみます。
********************
「さいたま市はおバカですよー!
やりなおしを要求するですよー!!」
ナッパ服姿のぬいハチの
巨大なブルーシートに向けての、悲痛な叫び。
「ひとはっ!」
その口を、帝鉄コートの手がふさぐ。
コートの主は、やはりおなじく、ぬいハチだ。
「もごもご、むぐむぐ」
「ああ」
ひとは、と呼ばれたぬいハチの苦しげなうめきに気付き、
コートのぬいハチは手を緩める。
ひとはは、今にも泣き出しそうだ。
「どうして、おねーちゃん止めるですか?
おねーちゃんが、一番かなしい……
39685の解体を、ひとはよりずっと、
つらいって、かなしいって、イヤだって思ってるのに」
********************
――本来、わたくしの「ぬいハチ物語」の主役は
ぬいハチロクですのに、
↑の例だと、完全にひとはが主役になってしまっています。
こういう風に初めてしまうと、
話の軸をぬいハチロクに戻すことが難しくなり、
「続きを書けない」の原因の一つをつくってしまいかねません。
ので、上記を、
「ぬいハチロクという主役を立てる」形に書き直してみます。
********************
「さいたま市はおバカですよー!
やりなおしを要求するですよー!!」
「ひとはっ!」
悲痛な叫びをあげたぬいハチの口元を、
帝鉄コートを着たぬいハチが、静かに塞ぐ。
襟章。ブーツ。金モール。
見る人が見れば一目でわかる、仕立ての違い。
旧帝鉄8620形・トップナンバーぬいレイルロオド――
“ぬいハチロク”の、白手袋に包まれた手が。
「もごもご、むぐむぐ」
「ああ」
ひとは、と呼んだぬいハチの苦しげなうめきに気付き、
ぬいハチロクはその手を緩める。
ひとはの泣き出しそうな目が、
物問いたげに、ぬいハチロクへと向けられる。
「どうして、おねーちゃん止めるですか?
おねーちゃんが、一番かなしい……
39685の解体を、ひとはよりずっと、
つらいって、かなしいって、イヤだって思ってるのに」
********************
――これなら、ぬいハチロクが主役と明確にわかります。
上の例文と、下の例文。
大きな違いがいくつかあります。
『主役=ぬいハチロクの名前が出てこない/出て来る』
『動作の主体・文章の主語が ひとは/ぬいハチロク』
『ひとはの動作が、ひとはだけで完結する
/ ひとはの動作が、ぬいハチロクに向いている』
といったあたりです。
つまり、
1: 主役の名前を早期に
(できればドラマチックに)明示する
2: 動作の主体、文章の主語をできるだけ主役にする
3: 脇役が話しかける相手、見る相手等、
「脇役の行為の対象」を、できるだけ主役にする
――などの工夫で、主役は、主役として立ちます。
というわけで、今日のワークです。
********************
【ワーク】
+ あなたが書き始めた「ぬいハチ物語」の
主役が立っているかを確認しましょう。、
もしも主役が誰かがわかりづらいなら、
エピソード2につなげるまでに
「主役をたてる」ように工夫しながら、
エピソード1を書ききってみましょう!」
********************
上記ワークに従いまして、
わたくしも、
「主役をたてつつ、エピソード1を書きき」ってみます。
********************
「さいたま市はおバカですよー!
やりなおしを要求するですよー!!」
「ひとはっ!」
ひとはの口をふさぎます。
……ひとはの言葉は、わたくちの気持ち、
そっくりそのまま、同じですのに。
「もごもご、むぐむぐ」
「ああ」
苦しげな声に手を緩めれば、
ひとはは、泣きそうな声を出します。
「どうして、おねーちゃん止めるですか?
おねーちゃんが、一番かなしい……
39685の解体を、ひとはよりずっと、
つらいって、かなしいって、イヤだって思ってるのに」
――確かに、ひとはの言うとおりです。
つらく。かなしく。イヤだと、心は叫んでいます。
解体される、39685に今すぐかけよって、
ごめんなさいと、さよならと、泣ければどれほど楽でしょう。
けれど……
「叫んで、泣いて。なにかが変わるものならば、
わたくちも そうしているでしょう」
けれど、わたくちはぬいハチロク。
「過ぎてしまった過去より、未来を」
全ての妹たちの規範となるべき、
8620形8620。トップナンバー・ぬいレイルロオドです。
「同じ悲劇を繰り返さぬため、何ができるか――
そうするためにますたぁをお手伝いして支えることが、
わたくちの、今すべきことと信じます。
ですので、泣いている余裕など、ないのです」
「わ」
声が、カラリと晴れ渡ります。
「さすがはおねーちゃんですよ!」
泣いたカラスがもう笑う――ひとはは、本当に強い子です。
「聞いたですか? マスター。
止まってるヒマなんてないですよ!!」
音がするほど、ますたぁの背中が叩かれます。
静かに頷き、ますたぁは立ち上がります。
地べたへと――
ついてしまっていた過去を、振り落とそうとするかのように、
パンパンと勢いもよく、その両膝を叩きます。
(ちぃぃ――)
わたくちたちの移動手段、新幹線バッグが開かれます。
「おねーちゃん、おうちかえるですよ!」
ひとはは、すぐに飛び乗ります。
バッグの中から、早く早くと手招きされます。
「……39685」
彼女の屍衣となるであろう、ブルーシートへ振り向きます。
省略せずに、その名を呼びます。
「旧国鉄9600形蒸気機関車、39685号機」
ありがとうでも、ごめんなさいでも、さようならでも、
きっと、言葉は嘘になります。
思いの全てを示す言葉を、今のわたくちは持ちませんから。
「――あなたのことを、忘れません」
ですから、本当だけつぶやいて。
「おまたせしました、ひとは、ますたぁ」
わたくちもまた、新幹線バッグへと入ります。
********************
――こんな感じでございましょうか?
主役を立てる、を自分では、多分できてるかと存じます!
&いくつか工夫もしてますので、それがどんなか、
次回にざざざと、ご説明したくも思います!!
2016年11月21日
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