2017年06月09日

『創作における取材』についての、ご質問へのご回答

http://hexaquarker.sblo.jp/article/177688588.html
の記事(「ぬいハチ物語の書き方5 〜エピソードを用意しよう〜」)
のコメント欄に、以下のコメントをいただきました。


//////////


初めまして。敬一郎です。まいてつ楽しくプレイしています。
取材について質問です。
ぬいハチ物語の日常モノの取材構成はわかりました。
成長モノ、Howtoモノの取材ってどのようなものなのでしょうか。素人考えでHowToモノは現実世界に踏み込む必要があるように感じます。例:ぬいハチが模型作りをする物語を書く際は模型の取材をしないと書けない気がします。
踏み込んで
・ゲームにおける取材って何ですか。
・ニュースや新聞の取材と何が違うのでしょうか。
・取材と想像力のバランスの最適解は。
・取材でしてはいけないこと、陥りやすいミスは。
ゲームの同人サークル(名前は伏せます)は進行豹さんの言う取材を軽視し想像力で書いている部分を多く感じます。
また、取材術の参考資料やシナリオライターの取材術の一部を知りたいです。
お忙しいと思いますが、いい物語へのアドバイス、お願いいたします。


//////////


――ご存知の方はご存知のことと思いますが、わたくしの出自はエロマンガ原作です。
(その前にプレイバイメイルのマスターなどもやってましたが、そこからはじめると『PBMis何?』からで長くなってしまうので割愛します)

エロマンガ原作一本で食っていくのは無理な気がしたわたくしは、平行して「児童文学作家」をまず目指しました。

児童文学のジャンルでは、幸いなことに比較的するすると新人賞的なものをいただいくことが出来ました。
ともないまして、受賞パーティーにお招きいただいたのですが……
わたくし、そのパーティーのあまりのリア充度
(学校の元先生とかがとても多くて、パーティーの華として有名歌手の童謡コンサートがある的な)に恐れおののき、
「この世界では生きていけない。ぜったい無理」
と考え、パーティーを途中で抜け出し、児童文学の世界に足を踏み入れる前に撤退いたしました。


そちらを諦めたわたくしは
「ノンフィクションならいけるのでは」と根拠なく考え、あるノンフィクション作家の方に、一年程度の短い期間でしたが、ご指導をいただきました。

結果
「進行豹くんは自然と話を盛っちゃうし、
 その盛り方がおもしろいのでフィクションにいった方がいい」
とのアドバイス――まぁ事実上の破門をいただくにいたりました。

で、「フィククションだったらラノベとかかなぁ?」と考え、
ラノベ新人賞の応募作など書いているうちに、エロマンガ一緒にやってた狩野蒼穹さんが「同人ゲーム作りたい」と突如言い出し。

言い出したら聞かないので、仕方なくシナリオ・スクリプトで同人ゲームつくってたら、今のLose代表のtOさんと、curaさんとのご知己を得。

そこからなんだかんだでエロゲー企画を立てるようになり、ずるずるライティングもするようになり、今にいたった――のでございます。


つまりわたくし
「取材に関しては、ノンフィクションの先生にちゃんと教えていただいたことがあるので、少しは人様にご説明できる!」のでございます。


のでので、以下、喜んでご質問にお答えさせていただいたいと存じます。


【Q:成長モノ、Howtoモノの取材ってどのようなものなのでしょうか】

→成長モノは「どの分野で主人公を成長するか」ということを決めねばなりません。
(野球で、とか、精密機器業界で、とか、いろいろなところを渡り歩いて、とか)

ので『舞台となる分野』での取材は、必須となるかと存じます。


How toもの、とは『特定の分野に入門してこようとする人のために書くもの』です。
ですのでこちらは「取材」というより、
「執筆者が、その分野にある程度以上精通していること」
有意な作品を書くための前提条件」になってくるかと存じます。
(その場合も「より精通している先達」への取材等は必要にになってくるかと思いますが、あまりに特殊なケースですので、ここでは詳細は割愛させていただきます)

まとめますと、ご賢察いただいておりますとおり、
『成長ものにせよ、Howtoものにせよ、舞台とする分野への取材は必須』であるかと、すくなくともわたくしは考えます。
それがどのようなものか、に対するお答えは、
『書こうとしている舞台、題材を知るための素材を集めていくこと』になるかと存じます。
この詳細については、次のご質問への解答内で、詳述します。


【Q:ゲームにおける取材って何ですか。 
  ニュースや新聞の取材と何が違うのでしょうか】
  
このふたつのご質問には、まとめて解答したほうが楽そうに思いますので、まとめます。

まず、ニュースや新聞(報道)における取材は、
『報道すべきことがらに関する事実を集めること』
となります。

厳密な意味での報道は、中立であるべきで、そこに主観による歪曲が加えられてはいけません。

かたや、ゲーム、あるいはその他のジャンルにおける――
まるめますと「創作のための取材」とは、
『想像力をふくらませるためのタネや素材を仕入れる』ことです。


例をあげます。

「東京都檜原都民の森に自生する狸の数が爆発的に増加」
という事象があるとします。

報道における取材は、

「この事実」
「何故狸が増えたのか、ということに関する専門家の見解」
「この自称の発生によって懸念される諸問題や、発生するメリットに関しての専門家の見解」
「周辺住民の声」

などを集めるものかと存じます。
そうして集められた事実群は、原則そのままTVニュースや新聞に流されて「報道された事実」となります。


かたや、創作のための取材においては――
こちらは一般化は難しく思いますので、わたくしを例にとりますと、

「その事実から、書きたい物語or書けそうな物語へとつなげていくためのブリッジ」

「たぬきにまつわるおもしろエピソード」を収集するものかと存じます。

舞台をそのまま使うのであれば、
その人たちの話すことば、暮らし、その土地の地勢――なども調べます。

わたくしはエロゲシナリオライターですので、
この、『狸の増加』を、『エロゲの題材』に、
なんとかできないものかと考えるでしょう。

その場合には、「狸が増えてるという事実に対しての専門家の見解」などはガン無視して、
「狸にまつわる民話や艶笑譚」を収集し、そちらで都合良さそうなものがあれば、
そこをベースに物語をふくらませていく……みたいな感じで創作へつなげていくかと存じます。

狸が人間に化けた女の子をヒロインにする――
のであれば「狸の風習」についても、詳しく調べていくことも、よい取材です。

(今は調べてませんので捏造ですが)
『狸は好物を埋めて隠して忘れてしまう習性がある』
とかを発見できれば、そこからひとつ、
非常にかわいらしいヒロインエピソードを作れますので。

まとめます。

「報道のための取材と創作のための取材で何が違うか」というご質問への一番単純なおこたえは、
「取材で収集した事実の扱い方」となります。

報道ではそれを「そのまま伝え」て、
創作ではそれを「歪曲・拡大して物語をつくるためのタネや素材にする」のです。


【Q:取材と想像力のバランスの最適解は。】

ノンフィクションや報道なら「取材100。想像力0」で確定です。

取材した事実を、「どのような切り口で切り取るか」は工夫すべきでしょうが、そこに「想像」が加わってはいけません。
想像を1でも加えた瞬間、それは報道でもノンフィクションでもなく、「創作」であり「物語」になってしまいます。


逆に、創作分野であれば――
最適解は『人ぞれぞれ』となります、

「100:0」で、「物語」を成立させられるかはわかりませんが
(それがどれほどの物語性を持っていても、事実100なら『ノンフィクション』かとわたくしは思いますので)
「1」でも想像が混じるのでしたら、それは物語です。

事実多めの物語の方が面白くできる方もいれば、
純粋な想像力の羽ばたきだけで面白い物語をつむがれる方もいらっしゃいます。

そこのバランスは、創作者それぞれが、取材と執筆とを通じ、自分で見定めていくしか無いものかと存じます。


【Q:取材でしてはいけないこと、陥りやすいミスは】

極めて大きなものはふたつかなぁ、と思います。

1:取材対象者・対象物を傷つける
 (物心その他、いかなる意味においても)

2:対人取材の場合、
 「自分の考えをかたり、相手の答えを誘導する」

です。

どちらも、やってしまえば、その時点で、
「取材」ではなく、広い意味での「捏造」になってしまうかと思います。

取材とは、相手を邪魔せず観察し、観測し、その声を聞くことだとわたくしは思います。
(世の中には「怒らせて本音を引き出す」的な報道系取材の手法もあると聞きますが、「怒った状態の自分」が「素の自分」ではないように、そうして引き出した「本音」が果たして「本音」であるかを、わたくしは疑問に感じます)

『得たい答えをえるために相手を歪める』。

これは、最大の禁忌であると同時に、
取材者がおかしやすいミスであるかとも存じます。



【取材術の参考資料やシナリオライターの取材術の一部を知りたい】

本としては、
講談社現代新書、野村進 「調べる技術・書く技術」
をご推薦申し上げます。

P60〜P61の「取材依頼の作法」は、
読んでおいて絶対に損はないかと存じますので。

で、シナリオライターの取材術は、ひとそれぞれです。

わたくしの先生(シナリオライターではなく、ノンフィクション作家ですが)の場合は
「10年前からの仲間のように、初対面の集団にも溶け込んでしまう」のが、魔法の様に得意な方でした。

それが、先生の取材術であるのかと想像しますが、わたくしにはその真似は全くできません。


わたくしの場合は、
「お話をお伺いする相手の方を尊敬する」ことが自然とできる点が、
取材術っぽいところなのかなぁ、と自分では思います。

とにかくわたくしは「おおお!」とテンションあがりやすいので、自分の知らないジャンルの話、自分にできない技術の披露などに接すると、都度都度で単純に感動します。
それが多分、相手の方がよりたくさんをお話してくださるのに、良い方向に働いてくれてるようには感じます。

でも、それらは多分、テクニックではなく「性質」にあたるものです。

ので、ご自分に適した「取材術」を身に着けたいのであれば、まずご自分の「適正・特質」を知るところからはじめる。
(「僕のいいとこってどこだろう」と、親しいお友だちに聞くのは、対人取材のよい練習になるかとも存じます)
しかるのちに、その特質を活かす方法を考えてみて、試して、修正する――

を、繰り返してみるのがいいのではないかと存じます。


///

思いつくまま書いたので、まとまりわるく矛盾等もあるかもしれませんが、これがわたくしの、いただいたご質問への、そのくらいに素直な解答です。

少しでも、敬一郎さんの今後のご創作・ご取材のための糧となったり、反面教師にしていただけたりしたら、嬉しいです!

(おしまい)
posted by 進行豹 at 21:07| Comment(1) | TrackBack(0) | 製作日誌
この記事へのコメント
敬一郎です。丁寧なご回答ありがとうございました。創作の方向性が定まりました!!!。重ねてお礼申し上げます。
Posted by 敬一郎 at 2017年06月15日 01:42
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