2012年01月15日

【これから作劇を勉強する人に(役にたつかもな記事)】 「何を主人公が持っていないのか」

 おはようございます。

 先日、ちょろっと書きました、

 「ハッピーエンドとはなにか」 

ということにつき、とある方から、
「とても私の視野を広げ」かつ「思考を助けてくれる」
――素晴らしい内容のメールを頂戴いたしました!(ありがとうございます!!)

 同メールの内容、“コメント欄に書き始めた”とのことでしたので、
「ご紹介させていただいてもセーフ?」 とは一瞬思いましたのですが、
やはり無許可で内容転載するのはアレかと思うので今は控えます。

 が、
「本当にわかりやすく整頓されてる」
内容で、私以外の方にもすごく良いヒントになるのでは〜と強く感じましたので!
もしご許可いただけましたら、後日あらためてご紹介させていただきたく存じます!
(メール返信、本日中にさせていただきますので、もうしばらくお待ちください!)


 で。

 そのメール中、

>「何を主人公が持っていないのか」

という一文がございました。


 これは、物語を組み始めるとき、組み立てているとき、組み終わるとき、見直すとき――
全てにおいて、とても大切な要素だと思いますので……

自分の作劇の「基礎の基礎」を見直すという意味でも、
「これから作劇を勉強する人」に説明をするという立ち位置に立ち、
“何故に、それがさほどに大切な要素であるのか”につき、以下に整理してみたいと思います。



+++++++++++++++++++

<<1:「物語」というものの基本構造>>

 → 一番乱暴にわけるのであれば、物語が開始される理由は二つしかありません。

A 「主人公が、今持っていない何かを求める」
  
 もしくは

B 「主人公が、今持っている何かを失う」

 かです。


 たとえば、「主人公が否応なしにトラブルに巻きこまれうんぬん」――
俗に言う「巻き込まれ方」というスターティングは、
視点を整理すれば、

「主人公は、今持っている“平穏な生活”を失う」
  → 故に、それを取り戻す、あるいはあらたな平穏を得るために物語を開始する

と分類し直すことができます。

 A,B複合型もありますし、BからAに変化するというパターンも多いですが、
これから作劇を勉強するのであれば、ひとまずは

<物語は、求めるか失うかのどちらかによって開始される>

と覚えておけば十二分だと思います。



<<2: 主人公の動機と行動>>

 物語の導入で、主人公は
「自分が何かを求めている」こと
ないしは、
「自分が何かを失ったこと」を自覚します。

 この欠損、つまり――

『何を主人公が持っていないのか』

――ということの明確化は、
物語を構築していくうえでものすごくものすごく重要です。

 出来の悪い(とされる)お話の感想にしばしばみられる、

「主人公が何考えてるのかわからない」
「何をしたいのかわからない」
「まったく共感できない」

等々は、実は、

“主人公の言動や性格と、読み手のそれとがずれている”

ということよりも、

“主人公の動機が読み手にきちんと伝わってないので、
(書き手にとってはとても自然な)主人公の言動が
「何故そんな????」になってしまう”

ということを原因としてるケースが多いのではないかとさえ、思えます。
 
 逆に言えば、
「主人公の欠損がきちんと伝わっている」
物語は、
読み手にとって、
「読みやすく、わかりやすい」
物語となる可能性が高いようにも思います。 


 例えば、恋愛物においての主人公の欠損は

「恋愛の対象がいない」 →「恋をしたい」



「片思いをしている(自分の愛情へのリターンの欠損))」 →「両想いになりたい」

かのどちらかが基本にして究極となるかと存じます。

 
 これほど単純であるのなら、
「恋愛ものを、ハッピーエンドにもっていく」ことは非常に簡単なように思えます。

 が、実際に恋愛物を読んでみると、
主人公の言動に「???」となってしまうことは決して少なくないでしょう。

 それは何故か。

 この原因も、大雑把にいえば二つあります。

 「背景の説明不足」

 か

 「複雑化の失敗」

 かです。

 以下、それぞれに項目をたてて説明します。




<<3:主人公の背景>>


 引き続き、恋愛物で例えます。

 例をよりわかりやすくするため、主人公とヒロインとを立てましょう。


「主人公」 豹くん。

「ヒロイン」すばるちゃん。


です。


 物語の導入において、

「豹くんはすばるちゃんが好き。けど、片想い」

であることがあらわされます。

 これが明確であれば、さて、読み手は「???」とならないで済むでしょうか?

 じっさい、試してみましょう。

------------

【豹】
「そうだ! すばるちゃんのハートをつかむために生きたヘビをプレゼントしよう!」

-------------

・・・錬電プレイヤーの方は、
読解力が高く、それ以上に心の広い方(いつも本当にすみません)
が多いように思うのですが、
その方々をもってしても、まぁ、

「なんでこいつこんなことしようとするのん???」

と思われるのではないか――と想像します。


 なぜそうなってしまうのか?


 それは<主人公の背景>について、まったく読み手に説明がなされていないためです。


 さっきの登場人物紹介。 これが、


「主人公」 豹くん。10歳。山育ち。両親は既に死亡。
      蛇使いの祖父とふたりきりで、蛇に親しんで育った。
      自らも「しろ」「まだら」という二匹の蛇をペットとしている。
      先日、その「しろ」と「まだら」との間に
      『全身漆黒の子ヘビ』が産まれたので、
      それを祖父にも見せない秘密の宝ものとして大切に育てている。


――というものであればどうでしょう?


同じ、

【豹】
「そうだ! すばるちゃんのハートをつかむために生きたヘビをプレゼントしよう!」

という台詞から、読み手さんは


「ああ、あの黒蛇か! 気持ちはわかるが、豹、やめといた方がいいぞ!?」

と、“共感はできないが、???とはなってない”という反応を示してくださるのではないでしょうか?

 この “共感はできないが、???とはなっていない”状態というのは、実は

「この先がどうなるか気になってしまう」という状態です。

 読み手さんに、この状態を維持していただければ、おそらく
「最後まで読んでもらう」ことは、叶います。

 つまり「物語は最低限に成立する」のです。



 前者。「???」で意味不明な状態。
 後者。「共感はできていないが、???とはなっていない」状態。


 この二つをわけたものは、「主人公の背景」の説明です。

  そして、「主人公の背景を説明する」ということも、実は、

『何を主人公が持っていないのか』の補足説明であるのです。


 背景説明を充実させたことにより、読み手さんが

「豹君が、“一般常識と、女の子に関する知識を持っていない”」

ことを理解してくださったが故、前者と後者の差異は産まれたのです。


  『何を主人公が持っていないのか』を読み手さんに伝えるということは、
このレベルでも非常に重要であることが、おわかりいただけるかと存じます。 

 
 
<<4:複雑化の失敗>>

 ・・・についても書こうと思ったのですが、
 よく考えると、これは
 「何をヒロインが持っていないのか」
 「何を脇役が持っていないのか」
 とかそういう話にもなってきてしまうので、

 文字どおり「話をややこしくするだけ」であると思いました。

 “これから作劇を勉強する”人には、ひとまずは不要の知識でしょう。


 のでここでは
  
 「登場人物を増やすという行為は、話しを複雑化させる行為である」

 「作者は“全ての登場人物の動機”を把握していても、
  それを読み手にきちんと伝えることは難しい。
  まして <それを覚えていてもらう>ことは至難である」

 「ので、話がながびけばながびくほどに、話しの節目節目で

  『誰が、何をもっていないのか』

  にプラスして、

  『誰にとって、もっとも必要とされるものは何なのか』

  『得ることができなくても、あきらめられるものは何なのか』

  『ある登場人物が、他のどの登場人物のどの動機を把握しているのか』

  を明確にする必要が出てくる。
  それを怠ると、話しが壊れる」 ――

(具体例:

  豹くんはいろいろあって、
  すばるちゃんかおじいちゃんかの命しか救えない!
  ということになった。

  このとき、
 「おじいちゃんの持っていないもの/得たいものの最優先」が
 「孫である豹くんの幸せ」
  であり、
 「自身の余生は、そのためにならばあきらめきれるものだ」
  ということが読み手さんにも、豹君にも、すばるちゃんにも伝わっていれば、

  『おじいちゃんを見殺しに、すばるちゃんを助ける』

 という選択にさえ、酷薄さや身勝手な印象は最低限しかつきまといません。

 なぜなら――

「その選択は、おじいちゃんの欠損をも満たすものである。
 もし逆の選択をすれば、おじいちゃんが一番苦しみ後悔し、誰も幸せになれない」

――ことは、明白だからです。

 しかし「おじいちゃんの持っていないもの」が明確でなかったり、
 読み手さんにとって明確であっても
豹君・すばるちゃんに伝わっていなかったりすると、
話の後味は、もうものすごく悪くなります。

***それはそれでドラマなのですが、少なくともハッピーエンドではありません***

 つまり、登場人物を増やす/話を複雑化すると、

 「誰が何をもっていないかを、誰がどう把握しているのか」

 を書き手がコントロールし、あるいは想定することは飛躍的に難しくなるのです。

 そして、そのコントロール/想定の失敗は、物語の失敗に繋がりやすく思われます) 
  

―― ということだけ、

「まぁ、将来のために心にとめておいても良い」
「けど、今は気にしなくても全然良い」

というレベルで、書き添えておきたく思います。



<<5: まとめ>>

 以上の文章を通じてご説明申し上げたかったことは、

『何を主人公が持っていないのか』

をきちんと意識し、伝えることは、

「物語を成立させるために、非常に重要かつ有用なことである」

ということです。


 ですので、冒頭にも書きましたが

1:物語を組み始めるとき

2:組み立てているとき

3:組み終わるとき

4:見直すとき

の四段階において、

α:『何を主人公が持っていないのか』

β:『それが複数あるとすれば、優先順位はどうなのか。
   手にせずともあきめられるものは何か』

Θ:『上記、α、βを読み手さんにきちんと伝えていられるか』

を見直して、うまくいっていないようなら書き直してみましょう。


 それがきっちりと出来ていれば、その物語は

「最低限のものとして成立する」
(興味を持って手にとってくださった方に、最初から最後まで読んでもらえる)

こと、ほぼ間違いないのではないかと思います。


 作劇法とかリライト法とかは物凄くたくさんあって、
勉強すればするほどに混乱してしまったりしがちなものでもありますが、
作劇の基本の基本、根本は、この、

『何を主人公が持っていないのか』

を問いかけ→答える

ということにあるかと、今現在の私は思っております。


+++++++++++++++++++

とまぁ、そんな感じです。

 上記は、多分、本当に
(とりわけ、作劇の初歩を勉強しはじめた方には)
役にたつ目安となるのではないか、と存じますので――

もしそのような方がいらっしゃいましたら、
ちょろっと頭の隅にとどめておいていただいても、
決して損にはならないのではないかと存じます!


 で、上記、“複雑化”を、
「いつの間にか自分にはこなしきれぬレベルでやらかしてしまっていた」
(しかし、なんとかこなそうと頑張っている)
物語であるところの
「錬電術師」
の現在制作部分である
“夢路”につきましては、


++++++++++

 「夢路固有シナリオ1箱めの<759行>から
<851行>までのリライト&それに伴っての基礎スクリプトの打ち直し」

++++++++++

を進めることができましたこと、喜んでご報告申し上げます。


 また、平行して進めているものたちのうちの最優先ものにつきましても

「ラスト2工程のうちの1工程を、間違いなく完成→御提出」

できますことにつきましても、あわせ謹んでご報告申し上げます。

 とにもかくにも、全般としては「順調」であるかと存じますので、
このペースを崩さぬように、

慌てず急いで丁寧に手と心と頭とを動かしまして、
各種 作劇、執筆、作劇を進めていきたく存じます!

 今日もいちにちがんばります!

 そして、みなさまの本日がたくさんの笑顔と安心と安全とあたたかさとに
満ちたものとなられますこと、願います。

 お互い、より良い今日をすごしましょーです!
posted by 進行豹 at 11:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 製作日誌
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