さて。
前回
http://hexaquarker.sblo.jp/article/177816343.htmlまでで、
わたくしの、最初の「ぬいハチ物語」である
「ぬいハチ物語」(仮)は、頭からしっぽまで書けました!
ですが
「頭からしっぽまで書く」ことと
「作品を完成させる」こととの間には、
大きな大きな谷間があります。
なぜか?
それは簡単、
ただ単に書いただけものもは、まだ『仕上がってない』からです。
仮に、自分ひとりで楽しむためだけに書くのであっても、
せっかく書いた物語、きちんと仕上げないともったいないです。
仕上げること。
そして、仕上げるために自分の作品を見直すことは、
今とりかかっている物語だけではなく、次の物語をも、必ずやより輝かせてくれます。
ので、簡単にでも
「仕上げる」という意識を持って、
一度、自分の書いた作品を、きっちり読み直してみましょーです!!
では、どのようにして仕上げるか。
これは……
まぁ、これだけでウルトラ濃密なご本が一冊かける
(「ハリウッド・リライティング・バイブル」 リンダ・シガー著 愛育社)
ほどの中身になってしまうので、
詳細にご説明申し上げるのは、とても無理です。
ので、今のとこは
******************************
0: 書き終わってから、
ブラッシュアップを始める(仕上げに取り掛かる)
まで、最低でも一回の熟睡を間に挟む
1: 誤字・脱字に気をつける
2: 自分で読んでて「ん?」となってしまう箇所があったら、直す
(この辺については、
「日本語の作文技術」 本多勝一 朝日新聞出版のご一読をオススメします)
3: メリハリを意識する
「くどい」と感じたところはシェイプアップして、
「あっさり」と感じたとこは、詳細に書き込む
4:無理やり直そうとしない。
「どう直したらいいのかわからない」という部分は全削除して、
前のパートと後のパートをつなげなおす文章/エピソードを新規に考える方がいい。
5:自分でなおしてて
「あ、これダメだ。つまんないや」と
万一思ってしまっても、決して作品を見捨てない。
とにかく、できるかぎり直す。
そしたら、いさぎよく発表する。
駄作10000作書いても、それを糧に傑作1本かけたら大勝利なので。
途中で投げると、駄作すら書けなかったことになるし、あとに残るものがめっちゃ少なくなる。
******************************
というくらいに注意してみるといいかな、と思います!
で、わたくしが書きました
『ぬいハチ物語』(仮)の初稿全文は、以下の通りです。
******************************
「さいたま市はおバカですよー!
やりなおしを要求するですよー!!」
「ひとはっ!」
ひとはの口をふさぎます。
……ひとはの言葉は、わたくちの気持ち、
そっくりそのまま、同じですのに。
「もごもご、むぐむぐ」
「ああ」
苦しげな声に手を緩めれば、
ひとはは、泣きそうな声を出します。
「どうして、おねーちゃん止めるですか?
おねーちゃんが、一番かなしい……
39685の解体を、ひとはよりずっと、
つらいって、かなしいって、イヤだって思ってるのに」
――確かに、ひとはの言うとおりです。
つらく。かなしく。イヤだと、心は叫んでいます。
解体される、39685に今すぐかけよって、
ごめんなさいと、さよならと、泣ければどれほど楽でしょう。
けれど……
「叫んで、泣いて。なにかが変わるものならば、
わたくちも そうしているでしょう」
けれど、わたくちはぬいハチロク。
「過ぎてしまった過去より、未来を」
全ての妹たちの規範となるべき、
8620形8620。トップナンバー・ぬいレイルロオドです。
「同じ悲劇を繰り返さぬため、何ができるか――
そうするためにますたぁをお手伝いして支えることが、
わたくちの、今すべきことと信じます。
ですので、泣いている余裕など、ないのです」
「わ」
声が、カラリと晴れ渡ります。
「さすがはおねーちゃんですよ!」
泣いたカラスがもう笑う――ひとはは、本当に強い子です。
「聞いたですか? マスター。
止まってるヒマなんてないですよ!!」
音がするほど、ますたぁの背中が叩かれます。
静かに頷き、ますたぁは立ち上がります。
地べたへと――
ついてしまっていた過去を、振り落とそうとするかのように、
パンパンと勢いもよく、その両膝を叩きます。
(ちぃぃ――)
わたくちたちの移動手段、新幹線バッグが開かれます。
「おねーちゃん、おうちかえるですよ!」
ひとはは、すぐに飛び乗ります。
バッグの中から、早く早くと手招きされます。
「……39685」
彼女の屍衣となるであろう、ブルーシートへ振り向きます。
省略せずに、その名を呼びます。
「旧国鉄9600形蒸気機関車、39685号機」
ありがとうでも、ごめんなさいでも、さようならでも、
きっと、言葉は嘘になります。
思いの全てを示す言葉を、今のわたくちは持ちませんから。
「――あなたのことを、忘れません」
ですから、本当だけつぶやいて。
「おまたせしました、ひとは、ますたぁ」
わたくちもまた、新幹線バッグへと入ります。
(ちぃぃ――)
「あ――」
ひかり。天井。
――おうちです。
わたくち、少し眠ってしまっていたようです。
「おうちに帰ってきたですよー」
ひとはが勢い良く、新幹線バッグを出ていきます。
「塊炭飴なめるですよ!
おなかぺこぺこですよ!!」
「ひとは? その前にすることは?」
「いけないいけない!
てあらい・うがいをしなくちゃですよー!!」
(あら……)
洗面台に向かう途中で、
もう手洗いを済ませたらしいますたぁと
いれちがいます。
(厳しいお顔……無理からぬことではございますけれど)
「おねーちゃん、どーしたですか?」
「あ、ううん」
ひとはと並んで、てあらい・うがい。
おやつの棚から塊炭飴をとりだして、
ひとはにひとつ、いっとう大きなものを差し出します。
「あれ? おねーちゃん食べないですか?」
「わたくちは、いまは食欲が」
「無いときほど食べなきゃダメですよ!
おなかぺこぺこじゃがんばれなくなっちゃうですよ!」
「……本当ね、ありがとう、ひとは」
ぽりぺろ、ごりごり。
塊炭飴を楽しむひとはをそのままに、
ますたぁのお仕事部屋へと向かいます。
「ますたぁ? おやつを持ってまいりました。
塊炭飴を、どうぞ、お召し上がりくださいまし」
……待っても、お返事がございません。
しかたないのでドアを開け、
ますたぁのお耳のすぐ近くから――
「あ――」
「ふぅーう、おなかぽんぽこですよー!
あれ? おねーちゃん?」
これは……ああ――
ますたぁは、どんな思いで、この文章を――
「おねーちゃん、どーしたですか!!?」
「きゃっ!?」
ひとはの大声。
けれど、ますたぁは手を止めません。
「なになに、マスター、何書いてるですか?」
ひとはも、椅子に登ってきます。
ますたぁのなだらかな肩越しに、
パーソナルコンピウタアのディスプレイを覗き込みます。
「ええと――
『旧国鉄39685号機解体凍結署名へのご協力御礼と、
お――お――』
おねーちゃん、あの字、なんて読むですか?」
「おわび」
「おわび、お詫び!!?
マスター、ごめんなさいってしてるですか!?」
「ええ、そう。……それが、ケジメというものです」
いけません。声が、ふるえてしまいます。
大事な、ことです。
ひとはに、きちんと伝えなく、ては。
「39685の、解体を、凍結、しようと、
ますたぁ、の、呼びかけに、応じ、
署名、を、おこころ、を……お寄せ、くださっ、た――」
引き締めようとするのですけれど、叶いません。
こころが、ことばが、乱れます。
「もう、これだけしか――
できること、など――
たった……これしか――無い、の――です――からっ」
「おねーちゃん!?」
いけません。
わたくちが泣くなど、いけません。
ひとはを――ますたぁを心配させます。
わたくちは、ますたぁを、支えるのです。
「ん――っ」
そうと思って、持ちこたえます。
……涙は、こぼさずすみました。
(よかった――)
わたくちがほとんど泣きそうだったと、
ますたぁには、きっと、気づかれずに済んでいます。
「おねえちゃん……」
「平気よ? ひとは。
わたくち、すこし、言葉がつまっただけですから」
共感を、わたくちたちは有しています。
わたくちの感じた悲しみは、
ひとはにほとんど、伝わってしまっているのです。
「なぁんだ、そーだったですかぁ!
おねーちゃんも、案外おっちょこちょいですよ!」
だからこそ、ひとはは明るく笑ってくれます。
わたくちのため、ますたぁのため。
ひとは自身の悲しみを、きっと、抑えて笑ってくれます。
「そうね、わたくち、おっちょこちょいです。
だって、ひとはの姉なのですから」
「なのですよ! って!? おねーちゃん、ひどいですよお!」
明るく笑って、ぽかぽかぽか。
ひとはが、わたくちをかるぅくぶちます。
(ひょい)
「あ――」
「マスターですよ!!」
だっこです。
ひとはとわたくちを抱きかかえ、
いいこいいこと、ケンカするなと、撫ぜてくれます。
「えへへぇ、気持ちいいですよ!」
いいこ、いいこと、何度も、何度も。
ますたぁご自身のおこころを、
そうすることで、慰めようとするかのように。
「えへへ……えへっ……へ」
ひとははひどく甘えます。
ぐりぐりと、ますたぁのお胸に、顔をおもいきりすりつけて――っ!!?
「ふ……ぇ……うう…………ぅぅぅ〜〜っ」
「ひとは――」
緊張が、きっと解けたのでしょう。
ひとはが――泣いてしまいます。
「こんなの――こんなの――ひどいですよぉ」
声を、かけるなどできません。
わたくちも、そしてますたぁも。
「ひとは、おねがいたくさんしたのに――
おねえちゃんと、マスターと――
たなばたさまにおねがいしたのにっ!!!」
「七夕様……」
たしかに、願いを託しました。
七月七日。
大きな、大きな公園で――
* * *
「すごいですよ! きれいですよ!!!」
ひとは、はじめて見たですよ!
とがったはっぱのワサワサの中、
たくさんたくさん紙があるです!
赤、青、黄色、ピンクに、金色!!
それに字が書いてあるですよ!
「おねーちゃん、これなんですか!?」
「これはね? ひとは、
『七夕飾り』というものです」
「たなばたかざり」
「七夕、という風習があるのです。
織姫と、彦星という方々が昔いらっしゃいまして――」
・・・おねーちゃん、たなばたさまのことを教えてくれます。
「わおわお! ロマンチックですよ! 素敵ですよ!!
それに、お願いごとまで叶えてもらえるなんて、スゴすぎですよ!」
「叶うかどうかは、わかりません。
たくさんのたくさんの方々が、いっせいに、一夜に願いを託すのですから」
「わ、そりゃそーですよ。
おりひめさんとひこぼしさん、読んでるだけで夜があけちゃうですよ」
「うふふ、確かに」
「ならなら、見てもらえるよーに、めだつよーにたんざく書くですよ!
マスターもお手伝いしてですよ!!」
「目立つように……どのような短冊にしたいのですか?」
「あのですね、まず、おねーちゃんがおねーちゃんの
たんざく書くですよ!」
「わたくちが……では――
ん…………。――うん、これが、わたくちの願いです」
『39685が たすかりますように』
さすが、おねーちゃんですよ!
やっぱりひとはと、おねがいおんなじだったですよ!
「そしたら、ひとは、39685のお絵描きするですよ。
マスターは炭水車をお絵描きしてですよ」
「まぁ!」
おねーちゃん、わかったみたいです。
うれしいですよ! ひとは、がんばってお絵描きするですよ!
よいしょ――よいしょ!
「描けたですよ!!!」
「まぁ、本当にひとは器用で素晴らしいですね。
見事な39685です。ますたぁも――
うん! おみごとです。
力強くうつくしい炭水車であるかと存じます」
「そしたら、連結するですよ!」
「ええ」
へっへへー、
ひとはのたんざくが機関車。
マスターのたんざくが炭水車。
それで! おねーちゃんのたんざくがおねがいごと客車ですよ!
「マスター、これ、たかいとこ!
このワサワサの、いーちばん高いとこにくっつけてですよ!」
「お願いいたします、ますたぁ」
マスター、きゃたつを借りにいってくれたですよ!
「まぁ、危なっかしい。ね? ひとは」
「はいですよー!」
おねーちゃんとひとはできゃたつを支えて――
「わ――お――」
「もう少し……あ、そこです、ますたぁ!」
「ついたですよーーーーー!」
えへへへへ! たんざく列車、39685!
ワサワサの一番高いところで、
気持ちよさそーに走ってるですよ!!
「夜になったらお星様まで駆け上がって!
だからぜっーたい! 39685は助かるですよ!!!」
* * *
「ぜったい……ぜったい――
39685助かるって――
お願い、叶うって……思ったですよ」
「ひとは――」
思い出が、きっと鮮やかすぎるのでしょう。
悲しみが、幾重にも折り重なるのでしょう。
ひとはに、なんと声をかければいいものか――
わたくちも……わたくちだって――
これほど、こころが痛みますのに。
「――――」
「あ」
ますたぁが、囁かれます。
ひとはには、けれどとどいていないようです。
「ね? ひとは?」
ひとはの反応はありません。
けれど、言葉も、そして共感も届いております。
「ひとつ、ひとつ。
ひとつひとつを、大事に思い出していきましょう」
「おもい、だすって……ひぐっ――なにを、ですかぁ」
「わたくしたちのしてきたことを。
39685を助けるために、学んだことを。
それは、きっと――」
こくり、ひとはが頷きます。
大きく大きくかぶりをふって、
ぐしぐし、涙をふきとります。
「ひとは――がんばって思い出すですよ!!」
……けれど、ひとはは、なかなか言葉を出せません。
ときおり、おもいだしたようにしゃくりあげ、
あふれそうになる涙をぬぐい――
時間が、さらさら、こぼれていきます。
「あ」
ますたぁが、部屋を出ていってしまわれます。
ひとはががくりと、うなだれます。
どう、しましょう。
なぐさめの声をかけようにも、
わたくちも・・・きっと、泣き声になってしまいます。
(ひとは)
小声で、試してみるけれど、
やはり、その声はひどく、ふるえています。
(ふわっ)
「え?」
ひとはが、おどろいて顔をあげます。
甘いにおい。
ココアのにおい。
「これ、溶かすやつじゃない――
ねりねりってするココアですよぉ」
マスターのおとっときの、ココアパウダー。
それを使ってていねいに いれられたココアがみっつ、
それぞれのマグカップの中、仲良くトレーに並んでいます。
「ほぅ……」
あたたかい。あまい。おいしい。
ココアをのどに落とすと同時に、
そんな単純な幸せで、わたくちの中綿がみたされます。
「あったかくって、おいしいですよ。
あのときと、ちょうど反対ですよ!」
うるおって、ぬくもって。
ひとはの言葉が、ようやくほころびはじめます。
「あのとき?」
「熊谷のデゴイチさんの動輪を、みんななでみがいたときですよ!!」
「ああ――」
あれは、夏の始まりでした。
動輪はあまりに大きくて、古い塗装はしつこくて。
剥がすため、何度も何度もスクレイパーを動かして。
「ハンマーでがんがんがんってやって、
ひとは、あつくてあつくてくらくらしたですよ」
「ああ、そうでした。
うふふ、本当に反対でしたね――あの麦茶!」
「きぃんてつめたくてきゅーってして、
かわいてるのがもどる感じで、おいしかったですよ!」
飲み干したマグをトレーに戻し、ひとはの両手が、動き出します。
「それから、三次にいったときもおいしかったですよ!」
「まぁ、飲み物のおはなしばかり」
「三次のときは食べ物ですよ! 唐揚げたくさん!
ハンバーグもあって、ぶどうもめちゃくちゃおいしかったですよ!」
「ああ、ピオオネでしたか――
あれは確かに、宝石のようなぶどうでしたね」
「46850さんとたくさんあそんで、みんなで整備体験して、
マスター、蒸気分配弁まで分解して組み立てして!」
「そのあと、みなさまでの会食でしたね。
いろいろなことをお話し合いになられて」
「みんなにこにこわらってたですよ!
とっても、とーっても楽しかったですよ!」
「ああ――」
そうでした。
わたくしの目にも、浮かびます。
耳には、笑い声が思い出されます。
「きっと……それだけのことなのですね」
ますたぁに。ひとはに。
そうして、わたくち自身に。
とどくよう、わすれないよう、
いまの気持ちを、ことばにします。
「大切に保存されるこのまわりには、笑顔がある。
笑顔の中心になれるこは、みんなが大事に、保存する」
「あ」
ひとはが、ますたぁが息を飲みます。
ゆっくり――静かにうなずかれます。
「そのこを、笑顔の中心に。
みんなが集まり、笑い合える――
そうした環境を、もしもつくることができたなら」
「解体なんて、絶対されなくなりますよ!!
おともだちのこと、こわすだなんてないですよ!!」
「おともだち――」
それは、とても簡単なことで。
だからこそ、とても、むつかしいこと。
「保存車両を、地域のみなさまの、おともだちに」
「わ!?」
ますたぁが急に立ち上がられます。
パアソナルコンピウタアを立ち上げて、キイボオドを叩きはじめます。
「マスター、またおわび文ですか?」
「いいえ、ちがいます。ちがいますよ、ひとは」
ますたぁが何をお書きになるか、わたくちにはまだ、わかりません。
けれどもひとつ。
たったひとつは、確かなこととわかります。
「ますたぁがお書きになっているのは、
きっと、みなさまにつたえるための文章です」
「つたえる――なにをですか?」
「ひとはのねがい、わたくちのねがい。
そうしてきっと、ますたぁご自身のものでもある――ねがい」
保存車両を、地域のみなさまのおともだちに。
そうするために、そうなるために、
していけることを、探すため――
「あ!」
ひとはの声。
つられてみれば、ディスプレイには、短い文字列。
「『物語』って書いてあるですよ!」
それは、タイトル。
ねがいを、どなたかに届けるための。
きっと叶えていくための、一番最初の――物語の。
―― 「ぬいハチ物語」 (仮) ――
;おしまい
******************************
では、直します。
直し終わってから、
「この辺が気になったので直した」ということ解説しますので、
まずは以下の、直し終わったものをお読みください。
******************************
『ぬいハチ物語』(仮) 進行豹
「さいたま市はおバカですよー!
やりなおしを要求するですよー!!」
「ひとはっ!」
ひとはの口をふさぎます。
……ひとはの言葉は、わたくちの気持ち、
そっくりそのまま、同じですのに。
「もごもご、むぐむぐ」
「あっ」
苦しげな息。
あわてておさえる手をゆるめれば、
ひとはは、泣きそうな声で問うてきます。
「どうして、おねーちゃん止めるですか?
おねーちゃんが、一番かなしい……
39685の解体を……
ひとはよりずっと、つらいって、
かなしいって、イヤだって思ってるのに」
――確かに、ひとはの言うとおりです。
つらく。かなしく。イヤだと、心は叫んでいます。
解体される39685に今すぐかけより、
ごめんなさいと、さよならと、泣ければどれほど楽でしょう。
静態保存機である あなたの価値が――
歴史を、文化を、ずっと繋いできてくれたレールが――
壊されてしまう無念さを、嘆けばどれほど救われるでしょう。
けれど……
「叫んで、泣いて。なにかが変わるものならば、
わたくちも そうしているでしょう」
けれど、わたくちはぬいハチロク。
全ての妹たちの規範となるべき、
ぬい鉄蒸気機関車、8620形8620号機の、
トップナンバー・ぬいレイルロオドです。
「同じ悲劇を繰り返さぬために、できる何かを。
きっと探して行うことが、ますたぁをお助けする手段だと……
わたくちの、今すべきことだと、信じます。
ですので――」
言葉で、迷いを断ち切ります。
「わたくちには、泣いている余裕などないのです」
「わ」
声が、カラリと晴れ渡ります。
「さすがはおねーちゃんですよ!」
泣いたカラスがもう笑う――ひとはは、本当に強い子です。
「聞いたですか? マスター。
止まってるヒマなんてないですよ!!」
音がするほど、ますたぁの背中が叩かれます。
静かに頷き、ますたぁは立ち上がります。
地べたへと――
ついてしまっていた過去を、ふり落とそうとするかのように、
パンパンと勢いもよく、その両ひざを叩きます。
(ちぃぃ――)
わたくちたちの移動手段、新幹線バッグが開かれます。
「おねーちゃん、おうちかえるですよ!」
ひとはは、すぐに飛び乗ります。
バッグの中から、早く早くと手まねきされます。
「……39685」
彼女の屍衣となるであろう、ブルーシートへ振り向きます。
省略せずに、その名を呼びます。
「旧国鉄9600形蒸気機関車、39685号機」
ありがとうでも、ごめんなさいでも、さようならでも、
きっと、言葉は嘘になります。
思いの全てを示す言葉を、今のわたくちは持ちませんから。
「――あなたのことを、忘れません」
ですから、本当だけつぶやいて。
「おまたせしました、ひとは、ますたぁ」
わたくちもまた、新幹線バッグへと入ります。
* * *
(ちぃぃ――)
「あ――」
ひかり。天井。
――おうちです。
わたくち、少し眠ってしまっていたようです。
「おうちに帰ってきたですよー」
ひとはが勢い良く、新幹線バッグを出ていきます。
「塊炭飴なめるですよ!
おなかぺこぺこですよ!!」
「ひとは? その前にすることは?」
「いけないいけない!
てあらい・うがいをしなくちゃですよー!!」
(あら……)
洗面台に向かう途中で、
もう手洗いを済ませたらしいますたぁと入れちがいます。
(厳しいお顔……無理からぬことではございますけれど)
「おねーちゃん、どーしたですか?」
「あ、ううん」
ひとはと並んで、てあらい・うがい。
おやつの棚から塊炭飴をとりだして、
ひとはにひとつ、いっとう大きなものを差し出します。
「わぁぁ! これ、めちゃくちゃ石炭にそっくりですよぉ」
その漆黒を、てのうえでしばしころがして――
ひとはが、ふっと顔をあげます。
「あれ? おねーちゃん食べないですか?」
「わたくちは、いまは食欲が」
「無いときほど食べなきゃダメですよ!
おなかぺこぺこじゃがんばれなくなっちゃうですよ!」
「……本当ね、ありがとう、ひとは」
ぽりぺろ、ごりごり。
塊炭飴を楽しむひとはをそのままに、
ますたぁのお仕事部屋へと向かいます。
「ますたぁ? おやつを持ってまいりました。
塊炭飴を、どうぞ、お召し上がりくださいまし」
……待っても、お返事がございません。
しかたないのでドアを開け、
ますたぁのお耳のすぐ近くから――
「あ――」
「ふぅーう、おなかぽんぽこですよー!
あれ? おねーちゃん?」
これは……ああ――
ますたぁは、どんな思いで、この文章を――
「おねーちゃん、どーしたですか!!?」
「きゃっ!?」
ひとはの大声。
けれど、ますたぁは手を止めません。
「なになに、マスター、何書いてるですか?」
ひとはも、椅子に登ってきます。
ますたぁのなだらかな肩越しに、
パーソナルコンピウタアのディスプレイを覗き込みます。
「ええと――
『旧国鉄39685号機解体凍結署名へのご協力御礼と、
お――お――』
おねーちゃん、あの字、なんて読むですか?」
「おわび」
「おわび、お詫び!!?
マスター、ごめんなさいってしてるですか!?」
「ええ、そう。……それが、ケジメというものです」
いけません。声が、ふるえてしまいます。
大事な、ことです。
ひとはに、きちんと伝えなく、ては。
「39685の、解体を、凍結、しようと、
ますたぁ、の、呼びかけに、応じ、
署名、を、おこころ、を……お寄せ、くださっ、た――」
引き締めようとするのですけれど、叶いません。
こころが、ことばが、乱れます。
「もう、これだけしか――
できること、など――
たった……これしか――無い、の――です――からっ」
「おねーちゃん!?」
いけません。
わたくちが泣くなど、いけません。
ひとはを――ますたぁを心配させます。
わたくちは、ますたぁを、支えるのです。
「ん――っ」
思いが、わたくちを支えます。
涙は……大丈夫。こぼれていません。
(よかった――)
わたくちがほとんど泣きそうだったと、
ますたぁには、きっと、気づかれずに済んでいます。
「おねえちゃん……」
「平気よ? ひとは。
わたくち、すこし、ことばが つまっただけですから」
共感を、わたくちたちは有しています。
わたくちの感じた悲しみは、
ひとはにほとんど、伝わってしまっているのです。
「なぁんだ、そーだったですかぁ!
おねーちゃんも、案外おっちょこちょいですよ!」
だからこそ、ひとはは明るく笑ってくれます。
わたくちのため、ますたぁのため。
ひとは自身の悲しみを、きっと、抑えて笑ってくれます。
「そうね、わたくち、おっちょこちょいです。
だって、ひとはの姉なのですから」
「なのですよ! って!? おねーちゃん、ひどいですよお!」
明るく笑って、ぽかぽかぽか。
ひとはが、わたくちを かるぅくぶちます。
(ひょい)
「あ――」
「マスターですよ!!」
だっこです。
ひとはとわたくちを抱きかかえ、
いいこいいこと、ケンカするなと、撫ぜてくれます。
「えへへぇ、気持ちいいですよ!」
いいこ、いいこと、何度も、何度も。
……ますたぁご自身のおこころを、
そうすることで、慰めようとするかのように。
「えへへ……えへっ……へ」
ひとははひどく甘えます。
ぐりぐりと、ますたぁのお胸に、
顔をおもいきりすりつけて――!?
「あ」
「ふ……ぇ……うう…………ぅぅぅ〜〜っ」
「ひとは――」
緊張が、きっと解けたのでしょう。
ひとはが――泣いてしまいます。
「こんなの――
こんなの――ひどいですよぉ」
声を、かけるなどできません。
わたくちも、そして、ますたぁも。
「ひとは、おねがいたくさんしたのに――
おねえちゃんと、マスターと――
たなばたさまにおねがいしたのにっ!!!」
「七夕様……」
たしかに、願いを託しました。
七月七日。
静態保存機、C57の見学をした、
大きな、大きな公園で――
* * *
「すごいですよ! きれいですよ!!!」
ひとは、はじめて見たですよ!
とがったはっぱのワサワサの中、
たくさんたくさん紙があるです!
赤、青、黄色、ピンクに、金色!!
それに字が書いてあるですよ!
「おねーちゃん、これなんですか!?」
「これはね? ひとは、
『七夕かざり』というものです」
「たなばたかざり」
「七夕、という風習があるのです。
織姫と、彦星という方々が昔いらっしゃいまして――」
……おねーちゃん、たなばたさまのことを教えてくれます。
「わおわお! ロマンチックですよ! 素敵ですよ!!
それに、お願いごとまで叶えてもらえるなんて、スゴすぎですよ!」
「叶うかどうかは、わかりません。
たくさんのたくさんの方々が、いっせいに、一夜に願いを たくすのですから」
「わぁ! そりゃそーですよ。
おりひめさんとひこぼしさん、読んでるだけで夜があけちゃうですよ」
「うふふ、確かに」
「ならなら、見てもらえるよーに、めだつよーにたんざく書くですよ!
マスターもお手伝いしてですよ!!」
「目立つように……どのような短冊にしたいのですか?」
「あのですね、まず、
おねーちゃんがおねーちゃんの たんざく書くですよ!」
「わたくちが……では――
ん…………。
うん! これが、わたくちの願いです」
――『39685が たすかりますように』――
さすが、おねーちゃんですよ!
やっぱりひとはと、おねがいおんなじだったですよ!
「そしたら、ひとは、39685のお絵描きするですよ。
マスターは炭水車をお絵描きしてですよ」
「まぁ!」
おねーちゃん、わかったみたいです。
うれしいですよ! ひとは、がんばってお絵描きするですよ!
よいしょ――かきかき――
んー……っと、除煙板、ごっついですよ――ん――うん!
「描けたですよ!!!」
「まぁ、本当にひとは器用で素晴らしいですね。
見事な39685です。ますたぁも――
うん! おみごとです。
力強くうつくしい炭水車であるかと存じます」
「そしたら、連結するですよ!」
「ええ」
へっへへー!
ひとはのたんざくが機関車。
マスターのたんざくが炭水車。
それで! おねーちゃんのたんざくがおねがいごと客車ですよ!!
「マスター、これ、たかいとこ!
このワサワサの、いーちばん高いとこにくっつけてですよ!」
「お願いいたします、ますたぁ」
マスター、きゃたつを借りにいってくれたですよ!
「まぁ、危なっかしい。ね? ひとは」
「はいですよー!」
おねーちゃんとひとはできゃたつを支えて――
「わ――お――」
「もう少し……あ、そこです、ますたぁ!」
「ついたですよーーーーー!」
えへへへへ! たんざく列車、39685!
ワサワサの一番高いところで、
気持ちよさそーに走ってるですよ!!
「夜になったらお星様まで駆け上がって!
だからぜっーたい! 39685は助かるですよ!!!」
* * *
「ぜったい……ぜったい――
39685助かるって――
お願い、叶うって……思ったですよ」
「ひとは――」
思い出が、きっと鮮やかすぎるのでしょう。
悲しみが、幾重にも折り重なるのでしょう。
ひとはに、なんと声をかければいいものか――
わたくちも……わたくちだって――
これほど、こころが痛みますのに。
「――――」
「あ」
ますたぁの囁やき。
ひとはの耳には、聞こえていないようです。
「ね? ひとは?」
わたくちが声をかけても、やっぱりひとはは無反応。
けれど、共感は確実に届いております。
「ひとつ、ひとつ。
ひとつひとつを、大事に思い出していきましょう」
「おもい、だすって……ひぐっ――なにを、ですかぁ」
「わたくしたちのしてきたことを。
39685を助けるために、学んだことを。
それは、きっと――」
こくり、ひとはが頷きます。
大きく大きくかぶりをふって、
ぐしぐし、涙をふきとります。
「ひとは――がんばって思い出すですよ!!」
……けれど ひとはは、なかなか言葉を出せません。
ときおり、おもいだしたようにしゃくりあげ、
あふれそうになる涙をぬぐい――
時間が、さらさら、こぼれていきます。
「あ」
ますたぁが、部屋を出ていってしまわれます。
ひとはががくりと、うなだれます。
どう、しましょう。
なぐさめの声をかけようにも、
わたくちも……きっと、泣き声になってしまいます。
(ひとは)
小声で、試してみるけれど、
やはり、その声はひどく、ふるえています。
(ふわっ)
「え?」
ひとはが、おどろいて顔をあげます。
甘いにおい。
ココアのにおい。
「これ、溶かすやつじゃない――
ねりねりってするココアですよぉ」
マスターのおとっときの、ココアパウダー。
それを使ってていねいに いれられたココアがみっつ、
それぞれのマグカップの中、仲良くトレーに並んでいます。
「ほぅ……」
あたたかい。あまい。おいしい。
ココアをのどに落とすと同時に、
そんな単純な幸せで、わたくちの中綿がみたされます。
「あったかくって、おいしいですよ。
あのときと、ちょうど反対ですよ!」
うるおって、ぬくもって。
ひとはの言葉が、ようやくほころびはじめます。
「あのとき?」
「熊谷のデゴイチさんの動輪を、みんななでみがいたときですよ!!」
「ああ――」
あれは、夏の始まりでした。
D51の動輪はあまりに大きくて、古い塗装はしつこくて。
剥がすため、何度も何度もスクレイパーを動かして。
「ハンマーでがんがんがんってやって、
ひとは、あつくてあつくてくらくらしたですよ」
「ああ、そうでした。
うふふ、本当に反対でしたね――あの麦茶!」
「きぃんて つめたくて きゅーってして、
からだぜんぶに広がる感じで、とーっても おいしかったですよ!」
飲み干したマグカップをトレーにもどし、ひとはの両手が、動き出します。
「それから、みよし!
三次にいったときもおいしかったですよ!」
「まぁ、のみものの おはなしばかり」
「三次のときは食べ物ですよ! 唐揚げたくさん!
ハンバーグもあって、ぶどうもめちゃくちゃおいしかったですよ!」
「ピオオネでしたか――
あれは確かに、宝石のようなぶどうでした」
「46850さんとたくさんあそんで、みんなで整備体験して、
マスター、蒸気分配弁まで分解して組み立てして!」
「そのあと、みなさまでの会食でしたね。
いろいろなことをお話し合いになられて」
「みんなにこにこわらってたですよ!
とっても、とーっても楽しかったですよ!」
「ああ――」
わたくしの目にも浮かびます。
耳には、さんざめく笑い声。
鮮やかな、にぎやかな、
単純労働――整備までもが、楽しい時間。
「きっと……それだけのことなのですね」
ますたぁに。ひとはに。
そうして、わたくち自身に。
とどくよう、わすれないよう、
いまの気持ちを、ことばにします。
「大切に保存される車輌のまわりには、笑顔がある。
笑顔の中心になれるこは、みんなが大事に、保存する」
「あ」
ひとはが、ますたぁが息を飲みます。
ゆっくり――静かにうなずかれます。
「そのこを、笑顔の中心に。
みんなが集まり、笑い合える――
そうした環境を、もしもつくることができたなら」
「解体なんて、絶対されなくなりますよ!!
おともだちのこと、壊すだなんてないですよ!!」
「おともだち――」
それは、とても簡単なことで。
だからこそ、とても、むつかしいこと。
「保存車両を、地域のみなさまの、おともだちに」
「わ!?」
ますたぁが急に立ち上がられます。
パアソナルコンピウタアを立ち上げて、キイボオドを叩きはじめます。
「マスター、またおわび文ですか?」
「いいえ、ちがいます。ちがいますよ、ひとは」
ますたぁが何をお書きになるか、わたくちにはまだ、わかりません。
けれどもひとつ。
たったひとつは、確かなこととわかります。
「ますたぁがお書きになっているのは、
きっと、みなさまにつたえるための文章です」
「つたえる――なにをですか?」
「ひとはのねがい、わたくちのねがい。
そうしてきっと、ますたぁご自身のものでもある――ねがい」
保存車両を、地域のみなさまのおともだちに。
そうするために、そうなるために、
していけることを、探すため――
「あ!」
ひとはの声。
つられてみれば、ディスプレイには、短い文字列。
「『物語』って書いてあるですよ!」
それは、タイトル。
ねがいを、どなたかに届けるための。
きっと叶えていくための、一番最初の――物語の。
―― 「ぬいハチ物語」 (仮) ――
;おしまい
******************************
出来ました!!!!
んでもって、修正しながらとったメモは以下となります。
******************************
+タイトル、著者名がなかったので書き足した
+
前)
「ああ」
苦しげな声に手を緩めれば、
ひとはは、泣きそうな声を出します。
後)
「あっ」
苦しげな息。
あわてておさえる手をゆるめれば、
ひとはは、泣きそうな声で問うてきます。
→「ああ」だと、ぬいハチロクが冷淡に見える。
修正前は「声」「声」なので綺麗じゃない。
+「どうして、おねーちゃん止めるですか?
からはじまるひとはのセリフ、
改行位置を修正し、読みやすく、意味を取りやすいように
+
前)
解体される、39685に
後)
解体される39685に
→読点が意味を切ってしまっていたので、除去。
+
前)
今すぐかけよって、
後)
今すぐかけより
→
今すぐかけよって、
よりも
今すぐかけより
の方が、声に出したとき言いやすい(リズムが出る)ので。
本当は表記も
今すぐ駆け寄り
と直した方がいいが、
ぬいハチロクのキャラクター的に
「駆け寄る」を漢字にはしたくなかった
+ そのあと
***
静態保存機であるあなたの価値が――
歴史を、文化を、ずっと繋いできてくれたレールが――
壊されてしまう無念さを、嘆けばどれほど救われるでしょう。
***
を挿入
→「何故、解体をいやがっているのか」を、
きちんと読んでくださる方に説明するため。
「動機」がわからない行動に共感できる方は、少ないので。、
+
前)
全ての妹たちの規範となるべき、
8620形8620の、トップナンバー・ぬいレイルロオドです。
後)
全ての妹たちの規範となるべき、
ぬい鉄蒸気機関車、8620形8620号機の、
トップナンバー・ぬいレイルロオドです。
→8620形8620の意味がわからない読者さんもいるかも、
と感じたので、補強修正。
なお
「ぬい鉄がいかなる組織か」
「ぬいレイルロオドとはなにか」などは
「この話の本筋にはまったく関係してこない」
ので、触れない。
+
「過ぎてしまった過去より、未来を」
を、削除
→読んでると浮いてしまって、リズム狂うので
+
前)
「同じ悲劇を繰り返さぬため、何ができるか――
そうするためにますたぁをお手伝いして支えることが、
わたくちの、今すべきことと信じます。
ですので、泣いている余裕など、ないのです」
後)
「同じ悲劇を繰り返さぬために、できる何かを。
きっと探して行うことが、ますたぁをお助けする手段だと……
わたくちの、今すべきことだと、信じます。
ですので――」
言葉で、迷いを断ち切ります。
「わたくちには、泣いている余裕などないのです」
→日本語いまいちだったので、直し。
(だらっとしてしまって意味がとりづらい文は、
「細かく分ける」「間をとる」と、
直しやすいかと思います)
+ ぬいハチロクの心情(地の文)を、
キャラクターあわせで、ひらがなに開く
+
わたくちもまた、新幹線バッグへと入ります。
のあと、
時間経過と場面転換をわかりやすくするため、
区切り
* * *
を挿入
+
おやつの棚から塊炭飴をとりだして、
ひとはにひとつ、いっとう大きなものを差し出します。
のあと
「塊炭飴ってなにさ」
という方がいる気がしたので、
「石炭にそっくりな飴」ということを説明すべく
***
「わぁぁ! これ、めちゃくちゃ石炭にそっくりですよぉ」
その漆黒を、てのうえでしばしころがして――
ひとはが、ふっと顔をあげます。
***
を挿入。
+
前)
そうと思って、持ちこたえます。
……涙は、こぼさずすみました。
後)
思いが、わたくちを支えます。
涙は……大丈夫。こぼれていません。
→「そう」とか「それ」とかは
他の言葉に簡単になおせるのであれば、
直した方がいいので。
+
前)
七月七日。
大きな、大きな公園で――
後)
七月七日。
静態保存機、C57の見学をした、
大きな、大きな公園で――
→「何故いったのか」が明記されてないと、
ご都合主義の(都合のいい回想をいれるための)
とってつけエピソードに見えてしまう気がしたので
+
前)
よいしょ――よいしょ。
後)
よいしょ――かきかき――
んー……っと、除煙板、ごっついですよ――ん――うん!
→ディテールを書いたほうが
「いっしょうけんめいお絵描きしてる」感が出るので
+
前)
ますたぁが、囁かれます。
ひとはには、けれどとどいていないようです。
「ね? ひとは?」
ひとはの反応はありません。
けれど、言葉も、そして共感も届いております。
後)
ますたぁの囁やき。
ひとはの耳には、聞こえていないようです。
「ね? ひとは?」
わたくちが声をかけても、やっぱりひとはは無反応。
けれど、共感は確実に届いております。
→「けれど」「けれど」が不細工なので修正。
+
前)
動輪はあまりに大きくて、古い塗装はしつこくて。
剥がすため、何度も何度もスクレイパーを動かして。
後)
D51の動輪はあまりに大きくて、古い塗装はしつこくて。
剥がすため、何度も何度もスクレイパーを動かして。
→デゴイチって何??? という方がいるかもなので
(その前までに 「静態保存機 C57」等で説明あるので、
D51までかくだけで、「これも静態保存の蒸気機関車なのだな」
と想像してもらえることと期待)」
+
前)
「きぃんて つめたくて きゅーってして、
かわいてるのが戻る感じで、とーっても おいしかったですよ!」
後)
「きぃんて つめたくて きゅーってして、
からだぜんぶに広がる感じで、とーっても おいしかったですよ!」
→その直後にも「戻る」があるので、重複する印象を回避
+
前)
「それから、三次にいったときもおいしかったですよ!」
後)
「それから、みよし!
三次にいったときもおいしかったですよ!」
→「三次の読みがみよし」とは知らないと絶対に無理。
とは思うのだが、ルビもふれないので、
ひとはにくりかえさせることで説明
+
前)
そうでした。
わたくしの目にも、浮かびます。
耳には、笑い声が思い出されます。
後)
わたくしの目にも浮かびます。
耳には、さんざめく笑い声。
鮮やかな、にぎやかな、
単純労働――整備までもが、楽しい時間。
→もったりしてるわりには薄いので、
スッキリさせつつディテールを増強。
+
前)
「大切に保存されるこのまわりには、笑顔がある。
笑顔の中心になれるこは、みんなが大事に、保存する」
後)
「大切に保存される車輌のまわりには、笑顔がある。
笑顔の中心になれるこは、みんなが大事に、保存する」
こ=静態保存の蒸気機関車、と一目での理解は多分無理なので、
一回目を「機体」とすることで説明強化
******************************
修正は、パズルみたいなものです。
普通のパズルと違うのは
「自分で、ピース(=文章)を、
自由に変形できること」
変形させて、一番「見やすい・読みやすい・伝えやすい」
形にもっていくことができれば、
それで修正、完了です!!
完全に直しきることはきっと永遠にできないので、
(なぜって、著者自身の好みも時々刻々で変わるから)
ある程度のとこでスパッと見切って完成させて!
作品をどどん! と公開しましょう!!!
お話を組んで。
書いて。
直して。
公開する。
そのための一番簡単(だけ重要)なとこ、
少しでもお伝えできますように、
わたくしも、わたくしなりのベストは尽くしました!
ので、スパッと見切って、
「ぬいハチ物語の書き方」も、ここで完成といたします!
お読みくださり、まことにありがとうございました!!
どうぞ素敵なご執筆を!!